二階堂黎人のレビュー一覧
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なかなか楽しい短編ミステリ集。
作者が、トリックを得意としているのがよくわかる。冒頭を飾る「ビールの家の冒険」は、ミステリファンなら言わずもがな、ある名作長編ミステリのパロディだけど、パロディとばかりは言えない独自の魅力を持っている。「誰もいない家に、山ほどのビールだけがある。なぜか?」という問いに対して、オリジナルはロジックで答えを出す醍醐味を味わせてくれるのに対して、作者はトリックでうならせてくれる。その手触りの違いを楽しめると、深みがうんと増す。
有名な「本陣殺人事件」をモチーフにし、別解釈を成立させた短編も通好みの一品。名作ミステリを分析し、作者の意図とは異なる別の犯人を指摘する離れ業は、「アクロイドを殺したのはだれか」や「名探偵に乾杯」など前例はあるが、この短編も目の付け所がシシャープでなかなかよい。ただし、肝心の解決が今ひとつ。理屈には合っているのだけど、原作の絵解きのスケールの大きさのようなものがすっかり抜けて、あえて言うなら「あら探し」っぽく感じられてしまうのは残念。
こういう小気味の良い短編は、どうしたって二階堂蘭子には無理である。軽妙な水乃探偵はなかなか魅力的だけど、正直言ってこの作者は、こういう味で楽しませるのはそれほど得意じゃないように感じてしまう。キャラの作り方が、ちょっと煮え切らないのだ。「軽井沢」はおもしろかった記憶があるのだけど、個人的にはミステリマニアとしての「くすぐり」のみがおもしろく、独自の短編ミステリとしてはあまり魅力を感じなかった。念のため言っておくと、前者だけでも買って読んだ甲斐は十二分にあった。 -
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「世界で一番長い推理小説」の異名を取る4000枚を越える大長編。
第1部のドイツ編は、「ハーメルンの笛吹き男」と「人狼(狼男)」を軸に、辺境の地にある銀の狼城での殺戮を描く。
製薬会社に招待されたパーティー10名がほぼ皆殺しにされ、そのラストにも奇妙な含みをもたせ物語にゴシックな色を差す。
最初読み始めた時に8ページから成る見取り図と20人近い登場人物(当然全員ドイツ名)にいきなり圧倒されたけれど、さすがは二階堂黎人。人物や情景の丹念な書き込みで苦労することなく頭に情景を思い描くことができる。
殺人の内容も、超密室あり、首なし死体あり、毒殺あり、刺殺あり、のありありづくし。
こんなに謎を巻散らかして本当に収束するのだろうか、と心配になるくらい盛りだくさん。
とにかく流れに身を任せて読み進め、奇怪なヨーロッパの恐怖に心酔するのが一番良い楽しみ方だと思う。 -
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第2部の舞台はフランス「青の狼城」。
第1部と時間をシンクロする形で物語りが進行するが、こちらの軸はナチスが戦時中に実験を行っていたといわれる「星気体(アストラル)兵団」。
死体を自由に行き来できるというその〈人狼〉は本当に存在するのか?
するとしたら一体誰の体を乗っ取っているのか?
完璧な密室から脱出できるのは、本当に人狼だけなのか?
社交サロンのメンバーを含む10名以上を惨殺したのは誰?!
本編も登場人物は多い(今度は全員フランス名)のだけど、すらすらと頭に入ってくる手腕は見事。
ドイツ編と対になる城での事件だけに、殺害方法もやはり対。
でも「星気体(アストラル)兵団」を中核におくだけに、殺人者は神出鬼没。密室でのあり得ない惨殺や死体消失が続く。
ドイツ編と併せて、全ての謎がゴスホラーオチにならないことを祈る。
でも二階堂黎人ならきっと大丈夫。彼ならロジカルにこの大量の謎を解いてくれると信じている。 -
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第3部は二階堂蘭子の登場である。
日本から遠く離れたヨーロッパの怪奇な事件に、蘭子がどう関わって行くのかという過程と、2つの城での事件のミッシング・リンクを描く。
基本的に第1部と第2部を読んだだけで謎は解けるようになっている(らしい)ので、特に目新しい追加情報が出てくる訳ではないのだけど、事件の背後に何か強大なものが蠢いている様を予感させる作りになっている。
人狼城からの唯一の生存者は精神病院に送り込まれ、有力な証人達は次々と命を絶たれているーーーそんな状況で蘭子は犯人とどう闘うのか?ヨーロッパの森深くに隠された双子の人狼城に、蘭子はどうやって辿り着くのだろうか?
2つの事件が今、蘭子の手によって一つに結びつく!
膨大な資料を手に、事件を解く糸口を見つけて行く蘭子と黎人の頭脳に感服しながら読み進める。とても楽しい。
さぁこれから二階堂蘭子が登場しますよ!という期待。
さぁこれからあの惨殺事件が解かれて行きますよ!という興奮。
長くかかった道のりも3/4まで来たという充足。
「東洋カトリック教会(ベネディクトローマンカトリック派)」はどう絡んでくるのか。
「モンセギュール叙事詩教団」は一体どんな団体なのか。
「アルザス独立サロン」の事件はどんな解決を見るのか。
「フォン・フェスト製薬」はこの事件にどんな関わりがあるのか。
ナチス・ドイツの亡霊は果たして存在するのか。
まだまだ解かれるべき謎は山積みだ。 -
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「世界一長い推理小説」の完結編。
読んでる最中は寂しくて仕方がなかった。
「ああ〜これで『人狼城』が終わってしまう〜」という寂しさ。
LOTRの「王の帰還」を観ている時の寂しさ。
スターウォーズの「エピソードIII」を観ている時の寂しさ。
それと同じだ。終わって欲しいような欲しくないような複雑な心境。
この物語で列挙されている謎は次の通り。
「ハーメルンの笛吹き男」の真相、古城の伝説の謎、人間消失、死体消失、次々と起こる密室事件、衆人環視の毒殺、被害者の共通項、秘宝捜し、《人狼》の怪奇、そして残虐な殺人者の正体。
これら全ての謎がこの1冊で解き明かされる。そりゃあもう全編謎解き。清々しいまでの解決。
基本的に謎は第1部、第2部で解けるようになっている、とは作者の弁だけど、まぁもってそんなん無理に決まってます。だから映画を観るように物語りを楽むべき。
しかし、あの部屋であの人と対峙して戦わせるあの理論の部分は、ちょっと風呂敷を広げすぎたんじゃないの?という気がしないでもなかった。
どうやら作者的には阿部謹也の「ハーメルンの笛吹き男」の結末に納得が行かず、この展開を思い付いたらしいのだけど、ううーん、どうだろうなぁ、言いたいことは分かるしロマンはあるけどなぁ、広がりすぎかなぁ。
(ちなみに阿部謹也の件の書は読んだけど、内容を完全に忘れた)(もったいない・・・)
それからエピローグ。「アウスラ修道院」とも通じる部分が多大にあるんだけど、これはこれで好きかも。エピソードタイトルも「終わりのない物語の始まり」だしね。なんとも二階堂黎人らしいエンディングではありました。
という訳で、私が2005年に何か一つ偉業を成し遂げたとすれば、それはこの「人狼城の恐怖」を読み終えたという一言に尽きると思った。オレ、すげえ。 -
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ネタバレ≪内容覚書≫
二階堂蘭子シリーズ。
二階堂家美人三姉妹と長女の娘。
使用人二人。
三女の婚約者。
知人の男性。
近くの神社の神主。
警官二人。
長女の元夫と教祖をしている内縁の妻。
教祖を助ける巫女二人。
昔は遊郭だった「久月」。
「久月」を呪う血吸姫の伝説。
24年前に起きた不可能な状況での殺人。
久月についた悪霊を払う儀式が始まる前の殺人予告。
そして、起きてしまった殺人事件。
さて、犯人は誰?
≪感想≫
推理小説を「推理」することではなく、
推理する探偵の姿に爽快感に楽しみを見出しているため、
回りくどい説明が、正直、めんどくさかった。
推理しながら読む人にとっては、大変楽しい作品だと思う。
注釈があからさまで、分かりやす過ぎる、かな…?とは思った。
あまり推理しない私でも、ある程度までは予想がつけられてしまった。
ミスリードの役目もあるのかもしれないが、
その辺は、推理小説を読み慣れた人だとすぐに気がついてしまいそう。
それでも、作者から読者への公正さが感じられ、
個人的には楽しかった。
ただ、蘭子さんが、好きになれないんだよなぁ…。
というか、蘭子さんに魅力を感じられない。
蘭子さんシリーズ2作目に挑戦したが、
今回も蘭子さんには惚れられなかった。
続けて読めば変わるか、な…?
蘭子さんシリーズには、挑戦していきたい予定。 -
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二階堂蘭子、初の推理。犯人が二転三転する楽しみはあった。正直、自分の読みが外れた。しかし、本格ミステリの弱点である人物像の描写がやはりあまりなく、頭の中で人物がイメージしづらかった。「人間が描けていないのではなく、本格ミステリにおいては、あえて描かないのだ」と、以前誰かが言っていたが、それは推理やトリックの面白さで勝負するということだろう。その面白さがなく、かつ人間もまともに描けていないようじゃ、娯楽としての推理(探偵)小説として、申し訳ないが、読む価値はないと思う。と、話はズレたが、この小説、前半は地獄の奇術師との攻防が面白く、冒険小説的な要素があったが、後半はトリックへの推理が冗長で、リーダビリティに欠けた感が否めなかった。
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二階堂黎人という作家は、鳥肌が立つような迫力に満ちた傑作を書くかと思えば、なんとなく才気ばかりが立ったすっきりしない作品も書く。特にメタとかパロディに足をつっこむと、どうも個人的には好きになれない。
幼稚園児のハードボイルド探偵が活躍する短編集も、ある意味でパロディである。各短編のタイトルを含め(「八百屋の死にざま」は笑った)、思わずにやりとするようなネタは多いのだけど、全体としてみるとやっぱりムリがあるような気がする。趣向がうまく作品として収まっていないのである。
その中でも表題作はうまく設定を生かしていると思うのだが、「動物のお医者さん」の愛読者には、案外早く真相がわかってしまったりするのである。
ただ、全体としては愛嬌のある作品群ではあると思う。好きな人は好きなんだろうし、主人公をかわいいと思う人は思うのだと思う。僕は、同じシンちゃんでも、クレヨンの方が好きだなあ。案外、あっちのシンちゃんもハードボイルドだし。