二階堂黎人のレビュー一覧
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二階堂蘭子シリーズの長編ミステリー。
作中でも度々言及されてはいるが、二階堂蘭子シリーズは江戸川乱歩や横溝正史の雰囲気を踏襲していて、少しノスタルジックな日本の古き良き怪奇推理小説の面白さを発揮している。シリーズの今作までの作品は、怪奇的な要素はありつつ本格ミステリーとしての面白さもあったが、最後まで読むとどちらかの側面での言及が強くなってしまい、少しバランスの悪さ、小説としての読みにくい部分があった。まとめて欲しい部分や、過剰気味に思えてしまう挿話ストーリーがくどい印象を与えてしまう事があった(それでも純粋に面白い訳だが)
今作では「アロー館」と呼ばれていた洋館を舞台に、アロー館に住ん -
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ネタバレ人狼城の恐怖 第四部 完結編
第三部にて蘭子達は謎のグループに捕えられて「青の狼城」に連れ去られる。待ち構えていた人物から、狼城で何の事件も起きていない、人狼城を気の済むまで調査する様にと自信ありげに告げられ調査に乗り出す。そして、事実どんな痕跡も発見されない。
冒頭からどうやってこの問題を解決するのか疑問だったが、黎人が述べる実は四つ子の城説よりももっと衝撃的で確実な城の秘密が明かされる。
僕は第一部の際に実は白は一つなのではないかと考えたのだが、全く違ったトリックになる。偽装は幾つかあるが、城自体のトリックも面白いし、更に明かされる衝撃的結末には驚きがある。
作品のクライマックスはど -
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人狼城の恐怖 第三部 探偵編
「人狼城の恐怖」第三部。いよいよ二階堂蘭子が登場。ドイツ編、フランス編にどの様に関わって行くのか楽しみだ。
今作は蘭子シリーズの集大成的な雰囲気があり、特に「地獄の奇術師」のエピローグの回収や、アウスラ修道院事件を解決したことによる教会からの働きかけ、悪霊の館で発見された宝石を巡る思惑など、蘭子が今まで解決してきた事件に関わる人物や組織が一堂に集結する。合わせて「紫煙」に集う面々も登場し、ジュペア老人は蘭子、黎人の保護者替わりにドイツ、フランスに一緒に向かう事になる。
新聞記事の小さな一面、遠くドイツで起きたツアー団体の謎の失踪事件。蘭子はその記事に興味を覚え -
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人狼城の恐怖 フランス編
第一部ドイツ編では思考不能に陥ってしまったが、引き続き第二部であるフランス編に突入。
フランス編では弁護士のローラントを主人公に、ナチズム時代の負の遺産、恐ろしい人体実験やそれによって生まれた星気体についての恐怖が語られる。
戦争終末期のドイツやフランスにおけるナチズムやヒトラーの悪行へのリアクションは当時を生きてきた人達でなければ理解が難しいが、少なからず今作の根幹にナチズム時代の残虐な行いや思想の数々がテーマとして組み込まれていて、読者を「オカルト」的な思考に導こうとしている事がわかる。また、宗教的な要素も「ロンギヌスの槍」の昔話より活用、常識での理解を難しくさ -
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二階堂黎人の長編ミステリー。作者のデビュー作であり、二階堂蘭子シリーズの最初の作品。
登場人物や役割の明記も丁寧にされており、これぞミステリー小説と言える出来栄え。作風は江戸川乱歩や横溝正史の様な恐怖心もあるサスペンス的な部分もふんだんにあり、少し突飛な部分もあるが設定が魅力的で王道だと思った。蘭子自身はまだ未熟な部分もあり、完全なる探偵ではない様に見えるが、彼女の閃きや頭脳明晰さは随所に見る事ができる。黎人も「ワトソン」的な立ち位置にはなりきっていないが、高校生である事の溌剌さなどは随所に発揮される(蘭子含め子供っぽさは一切ないが)
舞台は十字架屋敷と呼ばれる敬虔なカトリック教徒の一族が -
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二階堂蘭子シリーズの初短編集。
ロシア館の謎
クリスティの「火曜クラブ」のオマージュの様な形で進行する物語。
ジュペア老人が語る彼が経験した戦争時代の話。ジュペア老人はロシアの軍人であり、奇異な経験を持っている。また、当時のロシア皇帝とロマノフ朝を巡る浪漫は様々な作品のテーマになる程、魅力的なものだが、今作に置いてもジュペア老人を中心に語られるストーリーはとてもスリリングな逸話でありながらも肝心の「館消失」というミステリー部分も面白く、トリックは壮大であり、楽しめた作品だ。
(数年後に今作を引き継ぐ巨大マンモス幽霊事件が発表されるがこちらも面白かった)
密室のユリ
前作とは違い、本格的な -
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二階堂蘭子探偵集。長編の様におどろおどろしい作品ではないが、蘭子の探偵としての魅力が詰まった作品集。
泥具根博士の悪夢
オカルトに傾倒した変わり者の博士と彼を取り巻く環境下で起きた事件。四重の密室、超能力によって起きたとしか思えない殺人事件。事件の詳細を読んでいる段階では、どの様にしてこう言った殺人が可能なのか。と思っていたが、トリックが分かれば単純明快、呆気ない事件だった。ある意味、警察でもっと痕跡を見つける事が出来るのではと思いつつ。
泥具根博士の生涯は悲しいものであったが、一部の人だけは彼を本当に慕っていたようで救われた思いだ。
蘭の家の殺人
探偵を休業していた蘭子が徐々に探偵業へ -
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二階堂蘭子シリーズ長編。
久しぶりに怪奇的なミステリーシリーズを読んだが、面白くて手が止まらなくなった。
僕のミステリー好きはクリスティがきっかけだが、幼い頃に江戸川乱歩もだいぶ読んでいて、当時はとてもドキドキしていた記憶がある。
本格ミステリに傾倒していきながら、刺激を求めて様々なタイプのミステリに手を出しているが、まさか王道中の王道ミステリでこれ程夢中になるとは自分でも驚きだ。それ程に今作は狂気的で、残忍で魅力的な作品だ。グロテスクな部分もあるがアクセントが上手で飽きる事が一切ない位に夢中になれる。
読み進めると、当然犯人を推測したくなるが、僕自身とある人物に目星をつけて下巻に進 -
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ー 「相手が犯罪者にしろ、自分が神に成り代わって人間を裁く権利を有することに、君は疑問を感じないのか」私がそう尋ねると、彼女はきっぱりとかぶりを振った。
「私は、けっして自分の立場に大仰な理由付けをしたりしないわよ。探偵は探偵以外のものに成り得ないのだから、その本質に疑いをいだくなんて、自己矛盾もいいところじゃない。マルクスの言葉に、『人間とは、自分の運命を支配する自由な者のことである』というのがあるけれども、探偵行為が嫌になった者はさっさと犯罪の舞台から退けばいいのよ。誰もその人を引き留めたりしないのだから」 ー
ここまでで、1942ページ。やっと探偵編に入り、前半が終了。ようやく本格的 -
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ー 「このヨーロッパに、太古から二つの勢力が相まみえていると考えてみたまえ。一つは実存に基づいた勢力。もう一つは神秘に基づいた勢力だ。あるいは単純に、神の勢力と悪魔の勢力と換言することができるものどもだ。
この二つの勢力の超大な力はほとんど拮抗しており、闇の世界の中で、有史以来、ずっと熾烈な抗争を繰り広げてきている。彼女が、そのどちらかの一派に付く下っ端であることは充分に考えられることだな。
若い君らも、あのアドルフ・ヒトラーがオカルトの信奉者だったのは知っておるだろう。そもそも、ヒトラーのドイツ労働者党が、トゥーレというオカルト秘密結社を母胎としておることは有名な話だ。アンダルーシアは、