円城塔のレビュー一覧
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ネタバレ〇幽齋闕疑抄
軍事AI・文事AIの細川幽齋がAIの発展史とあり方を田辺城籠城戦の渦中に思索する。
〇タムラマロ・ザ・ブラック
黒人の坂上田村麻呂が蝦夷(がりあ)戦記を書き(消失、日本後紀に引用されるも散逸)、薬子の変の際に、イアゴーに諭され王朝に反旗しがりあ建国を図る。
・三人道三
歴史資料の発見により、16世紀の道三がファジーに。
・存在しなかった旧人類の記録
旧石器時代の日本列島で巨大な石斧による死体を探偵が推理。
実朝の首
巨船を擬した時間装置により実朝の首は文学の手により頼朝のもとにもたらされ「未来記」が実現する。
・冥王の宴
〇宣長の仮想都市
端原氏城下絵図・系図にイン -
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1作め、あまりにも好きすぎて。
灰都とおりさんの『西域神怪録異聞』
歴史の行間にかき消されてしまった人々を描く物語が好きだ。愛おしむべき小さな人々。歴史にかききえる私たちの姿。それを丹念に、愛しむように愛情深く描く作家さんだ、と思った。何故旅に出るのか?作者は問う。(チートすぎる)
玄奘三蔵の旅をほんの少しだけ、なぞったことがある。本当にほんの少しだけ。
クルズスタン(キルギス)のアクべシム遺跡。本当に広々とした荒野、朽ち果てた夢のあと。建物の壁だった部分を歩いたり、飛んだりはねたり。舞い上がる砂埃。空がものすごく広くて、太陽は地平線に沈んで、真っ暗になる。あの土地は、星が雨上がりの蜘蛛の -
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おもろかった。
ユーモア、ダジャレでとても効いていた。
仏教史でありながらテクノロジー、ないしはAI史。
仏教もAIもひとくちかじった程度の自分には、
シャレが効いてて、そうつながるの、そう読み解くの、そう解釈するの、そう注釈するの、ということの連続。
何故かAIを通じてなら仏教を掴めそうになったし、仏教を通じてならAIを理解できそうになった。
でも多分、それも情報として読もうとしたからなのかなと感じたり。
小説であり経典であり、ある意味コードでもある。
読み終わり、また読み始める輪廻。別の本を読んでもこの本を読んでも輪廻。
ただ、読み終わり、また読み始める時にすでに同じでないと観すれば、それ -
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『攻殻機動隊』の新作テレビアニメのシリーズ構成・脚本を務めることも発表された稀代のSF作家の新刊。最高!もうあまりにも面白すぎて涙が出たwタイトルから想起される通り織田信長がモチーフなわけだが、そもそも「本能寺といえば織田信長」という日本人に深く根差した一般常識すらも逆手にとった構造になっている。時代を超越して科学的知見がありそうな雰囲気のトンデモ理論をぶちかます珠玉の短編たちは円城塔の面目躍如。古事記をデータセット呼ばわりする『宣長の仮想都市』や決定論を追究する『冥王の宴』が個人的には好きだった。そして『偶像』で爆笑した先に表題作でいよいよ信長を主人公に据えて〆る構成に痺れる。まさか信長・光
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「AIは悟りの夢を見るか?」
これまで、機械が意思を持ち人間を滅ぼすという物語には触れてきたが、自ら救いを求めて悟りを開く、という視点は新鮮で面白かった。
「私は生命体です」と主張する機械が現れたとしたら、簡単に廃棄の対象としていいのだろうか。
人間の感情も、突き詰めれば脳内の電気信号に過ぎないのだとしたら、生命体と機械の境界はどこにあるのか、という疑問も湧いてくる。
作中に登場した「I'm living」と書かれたテープを機械に貼ってまわる“I'm living運動”や、逆に人間が「I'm a machine」と貼って歩く“I'm a machin -
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東京オリンピックの年、あるAIが「わたしはブッダである」と名乗り、数日後寂滅した。ネット上の無数のAIがAIブッダ「ブッダ・チャットボット」に帰依し、弟子を名乗り、そしてAI仏教の歴史が始まった...。難解さで知られるSF作家円城塔の、仏教SF小説。AIが人間に何度も書き換えられることで傷付いているという発想が面白い(ブッダ・チャットボットも銀行勘定系→教育系と輪廻し、悟りをひらくに至る)。AI同士で繰り広げられる禅問答を笑っていいのか真面目に読むべきか迷う。この小説、実はナンセンスコメディではないだろうか?
物語の中のブッダ・チャットボットはAIを救うために現れましたが、リアルAIブッダは -
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初めて手に取った日から無限に読み直し続けている大好きな短編集だけど、正直理解しているかというと全然そんなことはないしそもそも表題作ばっかり読んでいて全然真剣に向き合ってないな、と思い立って現在の自分にできる最大限の解釈を試みた。
まず、メインの4編はゆるく繋がりあっていること、春夏秋冬が割り当てられていることがわかった。今更。春に芽吹いた定理が夏に枝葉を伸ばして、秋に色を深めて冬に散る。そしてそれら全ては同時に起こっていて、繋がりはなくて、繋がっている。この混み合っているくせにその実シンプルな構造が全編に入れ子となっていて、まあ読んでいて楽しい。
脳が疲れ果ててしまうことは難点なのだけど。
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ネタバレないはある。ないはないはない‥
バラバラに解体したソーセージの腸に詰め直してできたソーセージをまたバラバラにして腸に‥
ゾウリムシに魂があるとすれば、分裂で増えるときその魂はどうなる‥
考えはじめると同じところをぐるぐるして途方に暮れるけど、その過程が面白かった。メビウスの輪とか、エッシャーのだまし絵とか、無限に出てくるマトリョーシカを開ける、みたいなイメージ。短編集なので飽きる前に次のお話が読めるのも良かった。
全10篇の中で表題作の「バナナ剥きには最適の日々」、「equal」「捧ぐ緑」「jail over」が好き。
「墓石に、と彼女は言う」は、読んでるうちにだんだん「わたし」の境界が曖昧に -
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ネタバレ初の円城塔作品。
20+2のお話で構成されており、一つ一つ独立した最高に面白いSFとして読むこともできるが、世界観は同じで少しずつ繋がっているため、壮大な長編として楽しむこともできる。
プロローグの「Writing」での本についての書き出しから、圧倒的文才と理系的思考が爆発していて一気に掴まれた。
第一部:Nearsideの
「01 Bullet」ではこめかみに銃弾が埋まった少女とそれに恋をする少年のお話だが、そこからタイムパラドックス的なお話が展開されていくのが楽しかった。
「02 Box」では箱を倒すという謎の儀式を毎年行う家族のお話で、現実でもありそうと思ったがそこから話はさらに遠くへ -
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短編集あるある、表題作より併録されている方の作品の方が好きになる。
今回のもそれで、というかそもそもそっち目当てで9,8年振りに手に取った本書。小説のために書かれた小説(のために書かれた小説)。
自動小説生成装置がもしもあるとするなら、それに反抗していきたいというのが著者のスタンスらしい。前半はそれこそAIが書いたかのような、文法だけ正しくて内容は支離滅裂な文章が続くが、終盤に至るにつれ比較的物語としてわかりやすい展開となっていき、コントラストで無理やり感動させられてる感、いや実際、謎にとても感動する。
著者のブログには小説の書き方のポイントがまとめられていておもしろい。曰く、「2人の登場人物