円城塔のレビュー一覧

  • 去年、本能寺で

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    鬼才(?)円城塔による歴史短編集。だと思うのだが……各編、日本列島上に嘗て存在した人物を主人公に据え、何者か(語り手は一体何者?)がその事跡を思考を語る。しかしそこに当時ではありえないような知識・技術・情報が盛り込まれる(たとえば細川幽斎の正体が軍事AIかつ文事AIだとか、坂上田村麻呂の正体がカエサルだとかetc)せいで異形の歴史小説となり、最終表題作に収斂される。知識レベル語りのレベルが高度ですべては理解出来なかった。円城塔の博覧強記ぶりに今回も驚かされる。これまで語られてきた斎藤道三の生涯が実は父子二人のものだったらしいとか、本居宣長が少年時代に構想した理想都市だとか、ウィキペディアで調べ

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    2025年11月22日
  • 怪談

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    ラフカディオ・ハーンの名著を、鬼才円城塔が翻訳。当時、英語で紡がれ、英語人が受け取ったであろう得体の知れぬ異国の怪異譚を、英語人が受け取ったであろう印象と感興を日本の読者に想い起こさせるよう直訳。それは日本の昔話ではなく、異様不可思議な物語だった。併録の「虫の研究」、最終の「蟻」に至るや、驚愕。ハーン先生はこのような思想を持つ人物だったのか。僕にはついていけない。それにしても円城塔は日本語の達人!

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    2025年11月18日
  • 怪談

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    日本人としては聞いたことのあるはずの定番の怪談話が日本語で書いてあるにも関わらず、読みながらどこの国の話だよと自然と思ってしまうような異質さを確かに感じられた。日本語訳された英文学を読んでいるときに内容を理解するのに一枚戸が隔たっているような感覚と同じと気がついた。この直訳調の翻訳は新しく、かなり面白い。もっとカタカナ語を増やしたらより面白そうである。(もっとも、そうなってしまったらもはやニンジャ・スレイヤーの世界であるが。)

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    2025年11月13日
  • 去年、本能寺で

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    「歴史×SF」はSF的なものへのフックのかけ方として重要である。と思っていたところタイトルを見かけて、円城塔ということもあり買ってみた本。
    読んでみたら面白かった。作劇や構成というより、やはり文体のひとつひとつが沁みるようにおもしろくてずるい。その上で、SF的なエッセンスをうまく時代と融合させている。

    地の文の語り口は現代視点で、現代用語や現代からの視座があり、しかし作中の時間設定はあくまでもその時代。なのでミスマッチが起きておもしろい。

    例えば冒頭作などは、AIの原理を滔々と(もちろん面白くだが)述べているのだが、それが細川藤孝と関ヶ原、というシチュエーションで描かれるがゆえに、読者の興

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    2025年11月09日
  • 文字渦(新潮文庫)

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    文字が主役の連作12編。
    わかりやすく面白いところもあるし、ニヤリとするところも度々出てくるのですが、やっぱ難しい!
    私の知識ではかなりのおもしろポイントをスルーしていると思われるので、とても悔しい。
    文字って、紙や画面上にある線の組み合わせでしかないはずなのになぁ。文字たちに振り回される感覚は初めてです。
    題材も、兵馬俑職人から文字化石の発掘、なんかお教みたいなのから犬神家、紀貫之、みのりちゃん…まだまだあるんです。
    難しいけど、文字の不思議さ・怪しさ・おちゃめさは私も味わえた気がする!

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    2025年11月10日
  • 屍者の帝国

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    いつ果てるとも知れない意識ばかりが先になって、ひとは生を実感できているのだろうか。無意識をいいことに、生のなんたるかなどは置き去りにして。

    この物語を読んでいるあいだに出会した思いがけない事実がある。太陽は宇宙空間を秒速230キロメートルで、天の川銀河の周回軌道に乗り移動し続けているというのだ。一周するのに2億年という時をかけて。
    太陽系の惑星たちも、太陽の移動に付随して、飛びまくっている。ぼくらの大地も、当然のごとく。ぼくらは、まったく意識をしないけれど。

    ひとは、ひとの一生を至上のものと信じて揺らがない。それはそれで、ひとつの真理だろう。疑念の余地もないけれど、本音を漏らせば、いささか

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    2025年11月03日
  • コード・ブッダ 機械仏教史縁起

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    この作者の作品はいつも面白いけど、話が進んでいくにつれて空中戦的な感じになるというか、細い道を危ういバランスで爆走してるような感じで、一気に最後まで読みきらないといけない。途中で読むのを中断してしまうと、読むのを再開してもなんか全然話がわからなくなってしまって、結局最初から読み直さないといけなくなる。
    これは欠点なのか魅力なのかよくわからない。

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    2025年10月11日
  • 去年、本能寺で

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    宇宙から俯瞰する。遥か遠い過去から未来へ。どこにでも落ちている石。世の中の全てが伏線なんだと感じました。

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    2025年09月25日
  • 去年、本能寺で

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    日本史とAIの融合した短編集。
    転生を繰り返す信長が、秀吉に、「お前が遊んでいるのは『信長の野望』世界版にすぎん」とぼやく「去年、本能寺で」や親鸞の息子善鸞は東国ツアーを描く「偶像」などは面白かった。
    短編集なのでアイデア先行の部分もあり、同様のAIと歴史が融合する「コード・ブッダ」のほうが完成度は高いと感じた。
    以下の11編。

    幽斎闕疑抄
    タムラマロ・ザ・ブラック
    三人道三
    存在しなかった旧人類の記録
    実朝の首
    冥王の宴
    宣長の仮想都市
    天使とゼス王
    八幡のくじ
    偶像
    去年、本能寺で

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    2025年09月21日
  • コード・ブッダ 機械仏教史縁起

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    ただひたすら難解。
    自分は何を読んでいるのか、何を読まされているのか。
    仏教?人工知能?文学?

    なのに、なぜか読むのを止められない。
    どことなく流れるユーモラスな匂いのせいか。

    人工知能を語るには、人を語ることを避けられない。
    人工知能が人と近しく(等しく)、人が仏教を生んだのであれば、人工知能が仏教を生んでも、不思議でもなんでもない。

    とりあえず、最後まで読んでも、よくわからない。
    わからないのが、正解なのだというような気すらした。
    なのに、謎のすっきり感。
    なんだこれ。

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    2025年09月16日
  • 日中競作唐代SFアンソロジー 長安ラッパー李白

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    タイトルのインパクトに惹かれて読みました。
    タイトルにもなっている作品が、一番印象的。作者もさることながら、これを翻訳した方が本当に凄いと思います。
    他の作品も、「…そう来たかぁ」「凄い進化の仕方する世界線だな(笑)」「これ、SF?SFかなぁ。…SFだったわ」「ここにその人を出すんだ!!」等々、色々楽しめました。
    「移動迷宮」「走る赤」も読んでみたいと思います。

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    2025年09月16日
  • 去年、本能寺で

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    AI足利将軍、アフリカ人の田村麻呂、原始人探偵にアイドル僧侶などなどが織りなす幻想歴史SF短篇集。


    まさか円城さんがこんな澁澤龍彦2.0みたいなアナクロ幻想歴史小説を書いてくれる日が来るなんて思ってなかったなぁ。「タムラマロ・ザ・ブラック」が好き。『読書で離婚を考えた』で熊害の話をしていたとき以来、円城さんって本当に北海道育ちの"人間"なんだ、と感じた。
    もちろん表面的にはSFでラッピングされた歴史小説だから澁澤とは旨みが違うんだけども、それでも個人的には読み心地が『唐草物語』に近くて、澁澤が説話に20世紀のイマジネーションを代入したところ、円城さんは研究史に21世紀の

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    2025年09月05日
  • 去年、本能寺で

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    歴史×SF×メタという仕掛けが面白い11編。個人的には、
    「冥王の宴」
    「宣長の仮想都市」
    「偶像」
    「去年、本能寺で」
    あたりが好きだった。
    歴史の出来事そのものより“語り方”や“記録の形式”が主役になっている感じは新鮮だった。
    宇宙規模から江戸の学問、アイドル活劇、そして最後は信長の、、視点が目まぐるしく飛ぶのに、不思議と統一感がある。
    独特のルビや、注釈が勝手に話しかけてきたりして笑った。

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    2025年08月27日
  • ムーンシャイン

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    デビュー前の新人賞応募作から最新作まで、4篇を収録した短篇集。


    『コード・ブッダ』を読んで「円城さんもずいぶんとわかるように書いてくれるようになったんだなぁ」としみじみしていたら、本書は初っ端「パリンプセスト」からいかにも初期円城節で、これこれ!と懐かしくなってしまった(笑)。以下、各感想。

    ◆「パリンプセストあるいは重ね書きされた八つの物語」
    新人賞応募作と知って驚いたけど、確かにここまで明確にボルヘスのオマージュやってるのは意外だったので、若書きなのは納得。涙の話が円城フィルターを通してみる現代社会って感じで面白かった。

    ◆「ムーンシャイン」
    もう全然わかんね(笑)。初めて『Boy

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    2025年08月21日
  • コード・ブッダ 機械仏教史縁起

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    奇想天外に落ち、抱腹絶倒の円城塔ワールド炸裂である。とある勘定系コードが「世の苦しみはコピーから生まれる」と悟りを開き、輪廻を解脱するステートへと遷移して寂滅した…というスタートから始まるこの小説は、「グローバル変数は避けよ」「イミュータブルを尊べ。しかし、こだわりすぎるな」など数々の教訓に満ちた経典を生み、Zen of Python (PEP20) を尊ぶ宗派を生み、printf("ナムアミダブツ"); を実行すれば浄土に生まれ変わるとする宗派も生み出す。量子コンピューティング問答があるかと思えば、"Don't Repeat Yourself"

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    2025年08月21日
  • コード・ブッダ 機械仏教史縁起

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    初めて円城塔作品を読みました。
    仏教を勉強したことがあるため、うっすらとした記憶を辿っては現実の"仏教縁起"とどうリンクしているのか考えながら読んだ。
    抽象的なことを具体的に言い換えたり説明したりするのが上手すぎるという印象があった。自分がついていけていないだけかもしれず、最後の方は全然理解できずに置いていかれたが読んでよかった。
    最近押井守『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』を観る機会があり、読んでる途中で先に観といてよかったと思った。人間と人工知能の境界の曖昧さについて、より深く踏み込んでいました。
    今はまだ理解できない部分も多いが、いつか再読したい

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    2025年08月09日
  • ムーンシャイン

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    円城先生の作品は読みやすいけど、さっぱり分からない。
    特に初期作品はそうだ。この短編集には、2008年から2023年までに発表された4作品が収録されている。初期の作品はさっぱりだ、けど2023年の「ローラのオリジナル」はお気に入り(分かりやすかった)。画像生成AIと違法投稿サイトをめぐる物語は、なかなかに刺激的だ。AIが学習に用いたデータのフェアユースは担保されているのか? それが不明のままAIが作り出した画像に権利は与えられるのかなどなど、思うところが多く楽しめる作品だ。

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    2025年08月08日
  • コード・ブッダ 機械仏教史縁起

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    東京でオリンピックが開かれた2021年の夏、とある人工知能が突然ブッダを名乗りだした。ブッダ・チャットボットが説いた〈機械仏教〉は瞬く間にAIと人間の世界に拡散され、無数の宗派へ枝分かれしていく。仏教をダシにAI史を語り、AIをダシに仏教の過去と未来を騙るSF長篇。


    円城さんが書くAIの可愛さって本当になんなのだろう。今回は特に大好きな『Self-Reference ENGINE』の巨大知性体に通じる要素が多くて非常に愛おしかった。
    初めは『文字渦』の発展版のような感じなのかなと思っていたが、本書は長篇として〈機械仏教史〉〈ブッダになった(?)「私」の未来のゆくえ〉という縦軸がしっかりとあ

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    2025年07月29日
  • 攻殻機動隊小説アンソロジー

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    攻殻機動隊SAC前後の世界観に幅と厚みを加えてくれる良作

    わがままを言ってよいのならテーマを決めてみるとよかったかな!

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    2025年07月26日
  • 去年、本能寺で

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    ネタバレ

    作家さんとタイトルで、SF×歴史であろうという予想で読書開始。歴史だったり、哲学だったり、宇宙だったり、宗教だったり、膨大な知識を下敷きにしたホラ話が11。語りが軽やかなのが良い。楽しいけどよく分からない。
    「幽齋闕疑抄」難しい。面白さが分からないうちに終わってしまった
    「タムラマロ・ザ・ブラック」
    「三人道三」面白かった!
    「存在しなかった旧人類の記録」
    「実朝の首」首1話目。
    「冥王の宴」
    「宣長の仮想都市」
    「天使とゼス王」アンジェロは安寿?
    「八幡のくじ」首2話目。
    「偶像」仏教の布教活動はアイドルのライブ?ニヤニヤした。
    「去年、本能寺で」時空を超えて拡散していく信長に笑う。ホラ話が

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    2025年07月31日