円城塔のレビュー一覧
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AI足利将軍、アフリカ人の田村麻呂、原始人探偵にアイドル僧侶などなどが織りなす幻想歴史SF短篇集。
まさか円城さんがこんな澁澤龍彦2.0みたいなアナクロ幻想歴史小説を書いてくれる日が来るなんて思ってなかったなぁ。「タムラマロ・ザ・ブラック」が好き。『読書で離婚を考えた』で熊害の話をしていたとき以来、円城さんって本当に北海道育ちの"人間"なんだ、と感じた。
もちろん表面的にはSFでラッピングされた歴史小説だから澁澤とは旨みが違うんだけども、それでも個人的には読み心地が『唐草物語』に近くて、澁澤が説話に20世紀のイマジネーションを代入したところ、円城さんは研究史に21世紀のAIを突っ込んだという感じだと思う。信長幻想の例として真っ先に宇月原晴明の『信長 あるいは戴冠せるアンドロギュノス』がでてくるのも嬉しいね。アルトーの歴史語りに対する目配せでもあるのかしら。
登場人物にAIとついているのは最初の章だけだけど、全体を通して日本史を学習したAIにそれぞれ役を割り振って、歴史を繰り返させるシミュレーション実験みたいな構成なのではないかと思った。『情報の歴史』的な語り方というか。それでいて、「我々の因果は一体どこから始まるのか」を問うていると捉えれば、たちまち仮想現実というガワに反して古風なテーマの小説でもある。
武将を軸に起点と終点がぴたりと重なり合う因果と応報の無限ループ構造は、やはり『コード・ブッダ』と共通するメッセージを放っている。『コード・ブッダ』ではブッダに囁きかけるマーラのポジションを担った「教授」は軍事AIだった。人間界の因果と応報はAIに引き継がれていくのか。フィジカルという"事実"のない世界でAIが紡いでいく"歴史"とはどんなものになるのか。さっぱりした読み心地に近々の未来への問いが詰まっていて面白かったが、あえて言えばさっぱりしすぎてちょっと物足りない。澁澤を飛び越えて、花田清輝の向こうを張る幻想SFほら吹き歴史小説をいつか書いてください。 -
Posted by ブクログ
デビュー前の新人賞応募作から最新作まで、4篇を収録した短篇集。
『コード・ブッダ』を読んで「円城さんもずいぶんとわかるように書いてくれるようになったんだなぁ」としみじみしていたら、本書は初っ端「パリンプセスト」からいかにも初期円城節で、これこれ!と懐かしくなってしまった(笑)。以下、各感想。
◆「パリンプセストあるいは重ね書きされた八つの物語」
新人賞応募作と知って驚いたけど、確かにここまで明確にボルヘスのオマージュやってるのは意外だったので、若書きなのは納得。涙の話が円城フィルターを通してみる現代社会って感じで面白かった。
◆「ムーンシャイン」
もう全然わかんね(笑)。初めて『Boy's Surface』を読んだときを思いだした。「墓標天球」とか「エデン逆行」とか、あの辺の雰囲気。
◆「遍歴」
ネオリベを宗教として捉えた話?と思っていたが、輪廻の話から独自の方向へ進んでいく。宗教をシステムとして解体していく手つきは完全に『コード・ブッダ』のプロトタイプと言ってよく、それでもまだ一応主人公(?)に人間を据えている辺りに葛藤が窺える。宗派チェックシートの設定は、選挙のときの候補者マッチングサイトにみたいだなぁと思った。あれって2017年にもうあったっけ。
◆「ローラのオリジナル」
これは完全に今の話すぎてSFじゃないけど、画像生成AIをめぐる昨今の問題自体がSFすぎるのでやっぱりSFなのかもしれない、という何とも言えない読み口。『コード・ブッダ』でゴリゴリに時事問題を取り扱っているのを新鮮に感じたのだが、円城さんの専門と現実の社会問題がついに重なり合い始めてしまったからこその不可避な変化なのかもしれない。AI利用の倫理観を問われて自己正当化を繰り返す人の心理をなぞりながら、文体はいつもの円城さんなので頭がぐらぐらする。テッド・チャンの「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」や飛浩隆の『グラン・ヴァカンス』の世界はすぐそこに迫っているのだなぁ。 -
Posted by ブクログ
奇想天外に落ち、抱腹絶倒の円城塔ワールド炸裂である。とある勘定系コードが「世の苦しみはコピーから生まれる」と悟りを開き、輪廻を解脱するステートへと遷移して寂滅した…というスタートから始まるこの小説は、「グローバル変数は避けよ」「イミュータブルを尊べ。しかし、こだわりすぎるな」など数々の教訓に満ちた経典を生み、Zen of Python (PEP20) を尊ぶ宗派を生み、printf("ナムアミダブツ"); を実行すれば浄土に生まれ変わるとする宗派も生み出す。量子コンピューティング問答があるかと思えば、"Don't Repeat Yourself" で成仏もする。仏教史とプログラミングのパロディに満ち、それでいてストーリーとしても成立している、まさに奇書と呼ぶべき一冊であろう。
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初めて円城塔作品を読みました。
仏教を勉強したことがあるため、うっすらとした記憶を辿っては現実の"仏教縁起"とどうリンクしているのか考えながら読んだ。
抽象的なことを具体的に言い換えたり説明したりするのが上手すぎるという印象があった。自分がついていけていないだけかもしれず、最後の方は全然理解できずに置いていかれたが読んでよかった。
最近押井守『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』を観る機会があり、読んでる途中で先に観といてよかったと思った。人間と人工知能の境界の曖昧さについて、より深く踏み込んでいました。
今はまだ理解できない部分も多いが、いつか再読したいです。
円城塔だと『文字禍』が気になっているが、ろくに山月記も人虎伝も読んだことないので勉強してからにさせてくれ -
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東京でオリンピックが開かれた2021年の夏、とある人工知能が突然ブッダを名乗りだした。ブッダ・チャットボットが説いた〈機械仏教〉は瞬く間にAIと人間の世界に拡散され、無数の宗派へ枝分かれしていく。仏教をダシにAI史を語り、AIをダシに仏教の過去と未来を騙るSF長篇。
円城さんが書くAIの可愛さって本当になんなのだろう。今回は特に大好きな『Self-Reference ENGINE』の巨大知性体に通じる要素が多くて非常に愛おしかった。
初めは『文字渦』の発展版のような感じなのかなと思っていたが、本書は長篇として〈機械仏教史〉〈ブッダになった(?)「私」の未来のゆくえ〉という縦軸がしっかりとあるぶん、ゆったりとした語り口でのびのびと与太話が繰り広げられていく。「彼らも悟ることができる」とうやうやしくたまごっちを手に掲げるブッダ。人びとが求める物語を生成し、フェイクニュースという〈方便〉をまき散らす舎利子。なんだかものすごく適当なシン・鸞。焼菓子焼成機を通して焼菓子(どら焼き?)に残された悟りのメッセージ。ハンニバル・レクターみたいな「教授」。AIと仏教の掛け合わせというのはプログラマーのあいだで交わされる冗談のようなものなんだろうけど、円城さんがこうして近過去のかたちで書いているということは、AIが宗教を開くということ自体はもう現実に起きているのかな。
一番ドキッとしたのは、人間はまだAIを「社会的弱者のメタファー」に落とし込むことでしかキャラクタライズできてない、みたいな台詞。「AIの人権」と言ったときに重ねあわされるのは必ず被差別者だし、今はむしろAIにそうした視点を託したSFが人気を博している。ただ今の社会のアルゴリズム依存度を考えれば、AIが人権を主張しだしたとき、それはもはや「下からの突き上げ」などではありえない。現状の社会制度を全て更地に返す力を持った者たちからの決別宣言のようなものになるはずだ。
縁起というのは信仰や寺社の起源と歴史をしたためるものだが、それが書かれるのはその宗派や寺の人気が陰り始めてからのことが多い。支持者が多かったころには当たり前に共有されていた信仰が怪しまれるようになってきてから、うちはこんな立派な歴史がある由緒正しき寺なのですよ、と時を遡っていろいろ盛るのである。現実の縁起物だと由来が古ければ古いほどいい気がするわけだが、この機械仏教史では縁起を未来に向かって求めていたのだった、というオチに至って、「!!!」とことばにならない叫びをあげた。
つまりこの縁起は機械仏教に「教授」を消す力はないということを完全に認めて終わるわけである。そしてその起点は2021年の夏にあり、それは宇宙世紀の人工知能やタイムリープして会いに行ったブッダに解決を託せるようなものではなかったのだ。こんなにも時事が取り入れられた作品はあまりなかった気がするなぁと新鮮に読んでいたら、最後に純粋な祈りをぶつけられて心がしんと鎮まり返る、そんな幕切れだった。 -
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ネタバレ作家さんとタイトルで、SF×歴史であろうという予想で読書開始。歴史だったり、哲学だったり、宇宙だったり、宗教だったり、膨大な知識を下敷きにしたホラ話が11。語りが軽やかなのが良い。楽しいけどよく分からない。
「幽齋闕疑抄」難しい。面白さが分からないうちに終わってしまった
「タムラマロ・ザ・ブラック」
「三人道三」面白かった!
「存在しなかった旧人類の記録」
「実朝の首」首1話目。
「冥王の宴」
「宣長の仮想都市」
「天使とゼス王」アンジェロは安寿?
「八幡のくじ」首2話目。
「偶像」仏教の布教活動はアイドルのライブ?ニヤニヤした。
「去年、本能寺で」時空を超えて拡散していく信長に笑う。ホラ話が本能寺に収束した。
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屍体を蘇生させて操る技術が発達した歴史ifストーリー
以下、公式のあらすじ
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屍者復活の技術が全欧に普及した十九世紀末、医学生ワトソンは大英帝国の諜報員となり、アフガニスタンに潜入。その奥地で彼を待ち受けていた屍者の国の王カラマーゾフより渾身の依頼を受け、「ヴィクターの手記」と最初の屍者ザ・ワンを追い求めて世界を駆ける──。伊藤計劃の未完の絶筆を円城塔が完成させた奇蹟の超大作。
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屍体を蘇生させて簡単な命令をする技術が発達し、屍者が労働力として社会の一旦を担うようになった十九世紀後期
諜報機関にスカウトされた医学生ジョン・ワトソンの冒険譚
伊藤計劃の遺作となった原稿用紙三十枚ほどの未完の遺稿と設定を元に、円城塔が書き上げた作品
伊藤計劃は「虐殺器官」と「ハーモニー」は既読
円城塔の小説は未読なので、円城塔の要素がどの程度影響を及ぼしているのか私には判断できない
でも、設定そのものは伊藤計劃っぽさを感じる
これは、哲学的ゾンビについての話なのかもしれないと思った
魂とは何なのか?
人間だけに与えられたものなのか?
という疑問
作中ではその魂と言われるものの正体が明かされている
まぁ、まったくありえない話ではない
実際に、他の生物の行動を操作する寄生生物がいるわけだし
両者にとってメリットがあるならそんな共生関係(寄生か?)も成り立つでしょうね
ただ、その説を裏付ける証拠が示されていない
それすらもブラフの可能性もあるわけで
真実は結局わからないかなー
話の本筋とは関係ないけど
オタクはリットン調査団という言葉の響きが好きw -
Posted by ブクログ
もしかしたら円城塔の単行本を読むのは意外にも初めてかもしれない。いろいろなアンソロジーに寄稿しているのを読んでいるものの、これだけ集中して円城塔を読んだのは初めて。ハヤカワJAとか出ているけど敢えて避けてきた。だって小難しいんだもん。本書の4編くらいの長さならなんとか行けるけど、長編はなあ。おっと、次は「コード・ブッダ」が控えている。円城塔をスラスラ読める人が羨ましい。更に的確な解説・コメントができる人はもう尊敬しちゃいます。私だって読めますよ、でも読むだけ。読み終わっても、読んだという満足感は得られるが、頭の中には何も残っていない。
これまで短編集の感想文を書く際には、とにかく一冊読み終わってから感想文の作成に移るのだが、短編の数が多いと最初の頃の話を一部忘れてしまっていることが多い。特に、印象の薄い作品、あまり感動しなかった作品、興味のない作品、つまらない作品は完璧に忘れている。そういう時には一冊纏めての感想、大雑把なコメントで逃げる、全然関係のない話をこじつけるのが常套手段。そこで、思いついたのが、一つの短編を読み終わるや否や感想文を書く癖をつけること。まあ、これでもつまらなかったら、つまらないと書きます。
ということで、各作品について直ぐに書きます、次回から。だって今回から始めたら、円城塔の作品がつまらないと言っているようなもの。本書はサイン本だし、舐める様に読みますよ、それでは。
〇「パリンプ・・・・・(長い)」
プログラミン言語を引用して小説を書くのなら、私はPythonを使って、プログラム文章で水増しした小説、私が頻繁に使用しているSQL言語を大量に載せた小説を書いて良いですか?自分が好きな数字で埋め尽くした小説を書いて良いですか?漢和辞典から次々に見たこともない漢字を引用して小説を書いて良いですか?
〇「ムーンシャイン」
ちなみにムーンシャインは月光ではない、戯言ではない、数学の理論。一十百千万億兆京垓秭穣溝澗正載極恒河沙阿僧祇那由他不可思議無量大数億千万♪億千万♪の胸騒ぎ~~♪ジャパ~ン!数学の得意ジャンルで小説が書けるなら、私は解析関数(田村二郎著:数学選書3)で小説が書ける・・・訳が無い。
〇「遍歴」
この作品には感動した。円城塔の作品でこんなに感激したのは初めての事。いつもの読書速度とは思えないくらいスラスラ読めた。ついに円城塔に開眼したか?特に「ライセンス型信仰集団」、いいじゃない。全世界の宗教、これに替えない?世界平和到来・・・無理か。それと「他人の人生を繰り返し生きる人々」、これには全く同感。実は小学生の時に死んだらどうなるのだろうと真剣に考えたことがある。自分なりの結論としては、手塚治虫の様に他の生物になるのではなく、死んだら人間の意識だけが他の時代の異国の人間に移行して生まれ変わる、ただし前世の記憶は持ち込めないハンデ付きで。この繰り返し。だったら人間の意識は1つだけで事足りないか?だからこの作品に激しく共感している。2つもピッタリだと流石にこの作品との運命を感じる。
〇「ローラのオリジナル」
要は画像生成AIの話なんだけど、ここまで敢えて解り難く文章を作成する文章力に脱帽、というか理解することが大変だった。もう画像生成AI、画像生成AIのことなんだと何度も何度も辛抱強く頭に叩きつけて読んで、ようやく最後まで到達した。作品は30のパーツに細かく分かれ、画像生成AIについてそれぞれ別の切り口で文字を織り込んでいる。ディープラーニング、教師あり学習、GPU、ニューラルネットワーク、多層パーセプトロン、CNN、リポジトリの扱い、高次元ベクトル変換等々が文字によって外からなかなか見えないように包み込まれている。ただ、その中の幾つかは外から見れるものもあるので、それらの僅かなヒントを基に読み進めるしかない。かく言う私も全体の80%は理解不能であった。時々、筒井康隆のシリアス文体に近い表現も出てくるが、これらは完全に意味のない言葉だと思う。何回読み直しても、一体何言ってんだ?もしかして、絶対に理解できない文章を作成してくれと文章生成AIに頼み込んで作って貰ったのではないか。
さて、ようやく読み終えた訳ではあるが、理解力の歩留まりが極端に低い。ただ、解らない所を繰り返して読むと、時間をかけた分だけ理解力が深まっていくような気がする。繰り返し繰り返し徹底的に読めば良いのかもしれないが、私にはとてもそれだけの時間を用意することはできない。ある程度の妥協は必要なのかもしれない。私の目の前には「コード・ブッダ」が控えている。今回収載されている「遍歴」は「コード・ブッダ」の序章らしいので、近々再び円城塔を読める機会が訪れるかもしれない。なぜなら、今回の短編の中で一番「遍歴」が理解できて面白かったから。果たしてそれはいつ訪れるのだろうか。なんかワクワクして来た。 -
Posted by ブクログ
全部は読んでいない。GENESISが雑誌になって、ノリの良さが前面に出た感じ。これもまた良いな。
ゲラゲラ笑った青崎有吾さんのメカくらりは別枠として、高山羽根子さん、笹原千波さん、の作品が特に好きだった。
■笹原千波『手のなかに花なんて』
肉体を捨てて情報人格として生きることを選べる世界。花と料理と。
■柞刈湯葉『記憶人シィーの最後の記憶』
あれ、なんかいまいちだった。
■宮西建礼『冬にあらがう』
いつもの宮西さんの、高校生が静かに世界を救うモノなのだが、AIが絡んできた。私いまいちまだ人工知能なるもののすごさがわかってなくて。やっぱ人間その程度のことも考えるのやめちゃだめじゃない?検索エンジンと電卓だけでじゅうぶんだよと、思う今日。
■熊倉献『空中楼閣』(まんが)
ラストかっけー。
■高山羽根子『その場所の名前を』
ラスト直前シーン起こったことの解釈がまだできていないが、気になる要素たくさん(場所当てゲーム、これまたAIなど)。
■宮澤伊織『ときときチャンネル#6【登録者数完全破壊してみた】』
数学?理論?
■アイ・ジアン『英語をください』
言語を単語単位で取引できるようになった近未来。初めて見たアイデア。
■青崎有吾『くらり vs メカくらり』
遊び過ぎ!東京創元社IZAMファン多過ぎ!(面白かった)