円城塔のレビュー一覧
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祝文庫化!
久しぶりに美しくて、知的で、楽しい読書の時間を持てたと思った。
こちらに納められているものは中編が2つ。『道化師の蝶』と『松ノ枝の記』どちらも書くという行為の意味を問いかける内容だ。特に『松ノ枝の記』はある小説を翻訳してみるという行為から始まる物語の冒頭が秀逸である。
小説を読む為に語学を学んでいる私にはとても面白い展開であったし、物語が段々と入り組んでいく模様が読んでいてわくわくした。物語は物語をかたり、新たな物語を作り上げる。
まさに彼はこれからの日本文学を背負う人物になるであろうと私は思う。
蛇足ではあるが、どうも彼が芥川賞を受賞した時は同時受賞の田中氏の貰ってやる宣 -
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『すなわち、原理的には万能タイムマシンを構成するにはこれしか要らない。(i)記録媒体の中で、前方と後方、二方向に動かすことのできる紙切れ。(ii)そいつが、叙述と、過去形の直接的な適用という二つの基本操作を果たせばよい』
この小説は納め所の難しい小説だ。特に前半と後半の印象ががらりと変わる。ただ解説にあるようなSF か家族小説かというような二者択一を迫られているとは思わない。この小説はあくまでもSF であると思う。ただ、SFとしての印象の落とし処が見えにくいという気がしてならないのだ。
単純化を恐れず言えば、SFの楽しみは想像力の喚起、ということに尽きるのではないかと思う。しかもそれは一見 -
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ネタバレ【オブ・ザ・ベースボール】
なんだかこの話は終盤物哀しい。
人が降ってくる町では、バットでそれを打ち返すという勤めを果たした人は未だいなかった。
それを成し遂げた初めての人である主人公に、なぜか役場も酒場の友人も温かみがない。
主人公は退職させられ、町を出ていく。落下した老人の所有していた手帳と写真を持って。
その写真は主人公に似ている。主人公が人生の先、老人となる途中のようなの顔。
そして手帳についてはこう述べられている。
「ノートに何が書かれているかなんてことは確認するまでもなく、書き上げてもいないのに勝手に描き上げられた俺のノートに決まっている。手間が省けたと喜ぶべきなのか今の俺には判 -
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文庫化されたので再読。デビュー作にして入門編。文章も内容も平易でとても読みやすい。
価値観の多様性、信じるものの有無、あらゆる前提がまんべんなく粉砕されているこのご時世。
すでに崩壊のカタルシスすら無効という世界において、円城塔さんの作品には純粋な「フィクションの愉しみ」がある。
でかい一発を知るがゆえ、人はさらに同等かそれ以上の一発を期待しすぎ、体力勝負で自分に負ける。歪んだ愛情を留保して、野次馬に身をやつし、レビューで★を減らす。知識による自家中毒でどこまでも人は堕ちて行き……、話が脱線してしまった。
空から人が降ってくる町、ファウルズ。主人公の仕事はバットとユニフォームを身につけ -
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日本語で書かれた小説を読んで、何が書かれているかわからないなんてことがあるのか⁉ほとんど何が書かれているか全く理解出来ない。だけど読んでしまうのはこの小説が〈理解出来ない=つまんない〉ではないから。表題作「Boy's Surface」は恋愛(他者との関係)における〈認識と真理〉について書かれていると思って読んだが、この小説はそんな一言二言で要約できるようなものでもない。書いてあることそれ以下でも以上でもない。こういうことだ!と言えないから小説にしているのだ。様々な誤読を取り込んで「はははぁ〜、そうかもねぇ〜」と走り去って行く、そんな小説だ。
私にとっては片想い。たぶん一生理解出来ない -
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題材はすごくおもしろい。ただめちゃくちゃ寝た。覚えてるだけで10回は寝落ちした。1章と2章ですでに何を読んでいるのかわからなくなってChatGPTに「コード・ブッダを読むと眠くなりますどうすればいいですか?」と聞くくらい寝た。「それが正常な反応です。」と言われたから安心した。自分がpythonエンジニアってこともあって真ん中あたりはとても楽しくなった。思わず吹き出したところもあった。どこか覚えてないけど。文章は自分の中をひたすらに流れていって、たまに何とも言えない跡を残していった。それを言葉にするのは自分の能力を超えているから言えない。ただなんか読後感は悪くないんだよ。
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2021年、東京オリンピックの年、とある銀行の勘定系チャットボットが自らをブッダであると宣言した。曰く「わたしは輪廻の苦しみを解消する方法を知るに至った」「ゆえにわたしはブッダである」。このボットは、活動期間わずか数日にして寂滅するが、人間、AIを問わず多くの説法をとき、彼らの苦しみの声に耳を傾け、弟子をもった。その結果、ボット寂滅後、機械仏教の諸派が乱立し始めることとなる。
作中、ブッダ・チャットボットは「世の苦しみは、コピーから生まれる」と説く。それでいて、機械仏教の歴史は、現実の仏教史を丁寧にコピーしていく。ホウ・然にシン・鸞に至っては、まるで戯画である。この辺り、仏教に詳しい人ほど楽