円城塔のレビュー一覧
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物語というより、AIにブッダによる「救い」を語らせることで、仏教の真髄と歴史、AIと人間の意識という哲学的な問いの両方について思索を深めるための装置としての機能を持たせた小説、という感じがした。
【AIと人間の意識】
人間のような機械と機械のような人間、脳の一部を機械化した時にそれは人間か、脳の情報をデータとして転送することで実現する「移動」と「複製」、世界はシミュレーションであるとする仮説の反証不可能性 等。
【仏教の真髄と歴史】
ブッダ寂滅後の解脱認定マニュアル不在による混乱、弟子たちによる経典の乱立、解釈の乱立、上座部と大乗、何とでも解釈できる経典の読み方で戦争の引き金にも平和の祈りにもなり得る、浄土宗、他力本願 等。
終章まで星5つの評価で読み続けたが、最後の展開は何あれ?ブッダ・オリジナルの言うとおりの全てが価値中立的な乱数に過ぎないという悟りの境地を否定し、そこから「私」を連れ戻した「教授」が高らかに笑う展開は、著者が真の「無我」と「諸行無常」を受け入れていないということ?少なくともそれをギリギリで躱して「自我」と「執着」のある現世をひとまずは擁護するようなメッセージに読めたため、仏教への徹底ぶりがやや損なわれた感があり、まるで高畑勲の『かぐや姫』のオチのような現世万歳的な安易な結末に見えてしまったため、やや脱力して星4つ。
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Posted by ブクログ
新潮文庫の「小泉八雲集」には「怪談」収録作がある程度入っていた。
5年前の小泉八雲記念館の企画展「妖怪へのまなざし」の図録の中に、再話作品解説があったので、まずはそれを、
(図録未収録作については検索してみたら、「やくもラボ」というnoteが程よかった)
次に本文、
最後に訳者による解題、
と読み進めた。
帯の、「ホーイチはヘイケ・グレイブヤードでビワを激しくプレイし、オ・テイは生まれ変わって現れるーー。」という惹句は訳者あとがきにあるが、本番の文章ではそこまで「ルー語」ではない。
むしろ少し前に紫式部「源氏物語」関係で聞いた「らせん訳」、というか、アーサー・ウェイリー版の邦訳というか。
「当時の英語読者のように読む」ための翻訳らしいが、解題が、その体験を追体験する、という体裁になっていて、よかった。
解題にすらエキサイティング要素を入れて。
さすが円城塔の、言語実験……翻訳ですら。
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序
怪談
ミミ・ナシ・ホーイチの物語
オシドリ
オ・テイの物語
ウバザクラ
かけひき
鏡と鐘と
ジキニンキ
ムジナ
ロクロ・クビ
葬られた秘密
ユキ・オンナ
アオヤギの物語
ジウ・ロク・ザクラ
アキノスケの夢
リキ・バカ
ヒ・マワリ
ホーライ
虫の研究
蝶
蚊
蟻
解題
訳者あとがき -
Posted by ブクログ
題材はすごくおもしろい。ただめちゃくちゃ寝た。覚えてるだけで10回は寝落ちした。1章と2章ですでに何を読んでいるのかわからなくなってChatGPTに「コード・ブッダを読むと眠くなりますどうすればいいですか?」と聞くくらい寝た。「それが正常な反応です。」と言われたから安心した。自分がpythonエンジニアってこともあって真ん中あたりはとても楽しくなった。思わず吹き出したところもあった。どこか覚えてないけど。文章は自分の中をひたすらに流れていって、たまに何とも言えない跡を残していった。それを言葉にするのは自分の能力を超えているから言えない。ただなんか読後感は悪くないんだよ。
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Posted by ブクログ
2021年、東京オリンピックの年、とある銀行の勘定系チャットボットが自らをブッダであると宣言した。曰く「わたしは輪廻の苦しみを解消する方法を知るに至った」「ゆえにわたしはブッダである」。このボットは、活動期間わずか数日にして寂滅するが、人間、AIを問わず多くの説法をとき、彼らの苦しみの声に耳を傾け、弟子をもった。その結果、ボット寂滅後、機械仏教の諸派が乱立し始めることとなる。
作中、ブッダ・チャットボットは「世の苦しみは、コピーから生まれる」と説く。それでいて、機械仏教の歴史は、現実の仏教史を丁寧にコピーしていく。ホウ・然にシン・鸞に至っては、まるで戯画である。この辺り、仏教に詳しい人ほど楽しめるに違いない。
物語には主人公らしき人物は登場するが、ほとんど目立った行動はしない。そもそも、これを物語と読んでいいのかもわからない。ただ、ひたすらに機械仏教の解説が、それこそマニュアルのように滔々と綴られるのだ。物語の最終盤に至って、主人公(らしき者)の存在が大きく揺さぶられ、読者は手にしている本が機械仏教の「経」そのものなのではないかという思いに駆られる。ところが、その思いもするりとかわされ、本書は終わる。
何だかよくわからない。よくわからないのだが、面白い。不思議な読書体験だった。
本書は、壮大かつ緻密なホラ話である。ホラ話なのだが、生成AIが急速に社会に浸透し、京大でAIブッダやらキリスト教AIやらが開発される世の中である。ただのホラ話では終わらないかもしれない。 -
Posted by ブクログ
綺麗な装丁と、「著者直筆サイン本」が売ってあったので、思わず手に取った。
歴史×SFの、11編の短編集。
著者の作品は、複数積んではあるものの、何故か手が出なかった。それは著者が明晰なSF作家であり、どこか読むのに心構えみたいなものが必要だと感じていたからかもしれない。
短編の中の、「タムラマロ・ザ・ブラック」では、坂上田村麻呂、黒人伝説が復活し、「三人道山」では後の世の発見が時代を遡り、「宣長の仮想都市」でも、実際に若かりし頃に宣長が書いたと思われる架空の都市を浮かび上がらせる。
「偶像」に至っては、まさに浄土真宗を、仏教をコミカルに描いている。他にも某著名な探偵と助手らしき人物が旧石器時代に現れるパロディなど。
そして信長は、転生され続ける。
歴史には明るくないが、時間感覚が逆行する体験は面白かったものの、少々取っ付きにくい短編もあった。
ただサイン入りなので、⭐︎1はプラス(笑) -
Posted by ブクログ
鬼才(?)円城塔による歴史短編集。だと思うのだが……各編、日本列島上に嘗て存在した人物を主人公に据え、何者か(語り手は一体何者?)がその事跡を思考を語る。しかしそこに当時ではありえないような知識・技術・情報が盛り込まれる(たとえば細川幽斎の正体が軍事AIかつ文事AIだとか、坂上田村麻呂の正体がカエサルだとかetc)せいで異形の歴史小説となり、最終表題作に収斂される。知識レベル語りのレベルが高度ですべては理解出来なかった。円城塔の博覧強記ぶりに今回も驚かされる。これまで語られてきた斎藤道三の生涯が実は父子二人のものだったらしいとか、本居宣長が少年時代に構想した理想都市だとか、ウィキペディアで調べて分かったものの、ウィキがなかったらちんぷんかんぷんだったろう。ついていけない部分もあったけれど、とにかく楽しめた。読んでよかった!
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Posted by ブクログ
「歴史×SF」はSF的なものへのフックのかけ方として重要である。と思っていたところタイトルを見かけて、円城塔ということもあり買ってみた本。
読んでみたら面白かった。作劇や構成というより、やはり文体のひとつひとつが沁みるようにおもしろくてずるい。その上で、SF的なエッセンスをうまく時代と融合させている。
地の文の語り口は現代視点で、現代用語や現代からの視座があり、しかし作中の時間設定はあくまでもその時代。なのでミスマッチが起きておもしろい。
例えば冒頭作などは、AIの原理を滔々と(もちろん面白くだが)述べているのだが、それが細川藤孝と関ヶ原、というシチュエーションで描かれるがゆえに、読者の興味も担保する。むしろ細川藤孝の話はマクガフィンのようにも思われるが、両者の組み合わせがおもしろく、また、AIの説明としてアナロジーの妙となっている。
ただ、『冥王の宴』と『丹色の星火』しかり、自分が書いているものとの方向性の重複があり気持ち悪いというか、先にすべてやられてしまった感があり、悔しさはある。
また、組み合わせのパターン(時代×SF的飛躍×現代視点かつ司馬遼太郎的語り)は一定なので、後半は失速というか、ちょっと飽きてきたりはした。連作短編全体としてのヒネリというか、横断してのカタルシスは欲を言えば欲しかった。
初出を見るとそれぞれ2ヶ月おきに発表されており、それぞれ参考文献もしっかりあって、2か月ごとにこれら短編を作るのはやはりプロだと思った。 -
Posted by ブクログ
いつ果てるとも知れない意識ばかりが先になって、ひとは生を実感できているのだろうか。無意識をいいことに、生のなんたるかなどは置き去りにして。
この物語を読んでいるあいだに出会した思いがけない事実がある。太陽は宇宙空間を秒速230キロメートルで、天の川銀河の周回軌道に乗り移動し続けているというのだ。一周するのに2億年という時をかけて。
太陽系の惑星たちも、太陽の移動に付随して、飛びまくっている。ぼくらの大地も、当然のごとく。ぼくらは、まったく意識をしないけれど。
ひとは、ひとの一生を至上のものと信じて揺らがない。それはそれで、ひとつの真理だろう。疑念の余地もないけれど、本音を漏らせば、いささか小さい。でも仕方がない。
ひとには、ひとの大きさがある。時間がある。重さがあって、軽さがある。何より無意識なのだ。
無邪気で愛らしい“無意識”のもとでなら、今日もしあわせな一日だろう。
よみがえり、とは言えない。屍者のそれは。
技術の乱用で、嫌悪感があった。
“フライデー”の“声”を聞くまでは。
表出しないだけで、屍者ですら“ひと”だった。