あらすじ
円城塔の作品世界は難解ではない――格好の入り口となる全10篇を収録する第3作品集!/掲出の書影は底本のものです
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Posted by ブクログ
ないはある。ないはないはない‥
バラバラに解体したソーセージの腸に詰め直してできたソーセージをまたバラバラにして腸に‥
ゾウリムシに魂があるとすれば、分裂で増えるときその魂はどうなる‥
考えはじめると同じところをぐるぐるして途方に暮れるけど、その過程が面白かった。メビウスの輪とか、エッシャーのだまし絵とか、無限に出てくるマトリョーシカを開ける、みたいなイメージ。短編集なので飽きる前に次のお話が読めるのも良かった。
全10篇の中で表題作の「バナナ剥きには最適の日々」、「equal」「捧ぐ緑」「jail over」が好き。
「墓石に、と彼女は言う」は、読んでるうちにだんだん「わたし」の境界が曖昧になっていく感じが好きだった。
Posted by ブクログ
解説にもあったけども、バナナ剥きには最適の日々は円城塔先生作品では一番読みやすかった。
何度も読み直してる個人的に人生で一番好きな短編小説。
なんだか達観したような淡々とした一人遊びは、ユーモア溢れてて読んでいてとても楽しい。
思考の中では可能性に溢れているのに、
その一方で広大な宇宙の中では無力感がすごくて、そういった無限と有限の対比に、宇宙や未知へのロマンを感じる。
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こういう文学の形があるんだなと関心した本。
表紙がなかなか好きだったので買って読んだ。けれども読んでみて「ちょっとわかるけど全然わからないな」と思って掴みだけでも知りたくなってあらゆるレビューを見た。どれも「わからないがそれが良い」というもので何かしらをわかってるらしい人はひとりもいなかった。
この作品の上手いところは「完全にわからないわけでもないな」と思わせるところで、それが癖になって読み返す。やっぱりわかんねぇなと思う。本って別に必ずしもわかんなくていいらしい。
作品を読む上でわからないといけないという焦りがあったけど、こういう誰もがわからない作品を読むと安心する。
高尚な読書家に劣等感を感じても「そいつもきっとこの本のことわかんねぇからいいか」と思える。
Posted by ブクログ
2019.05.10~07.01
他の作品よりも読みやすく感じたのは、慣れたから?それでも、難しかったけど。内容を掴むのはやはり大変だったし、たぶん作者の思いの25%も読み取れていない。だけど、やっぱり、面白い。私の中の何が共感してるんだろう。
Posted by ブクログ
わかるとかわからないとか問題にするならば、まずはわかるということを明確に定義し、わかるということがよくわかるようにしなければならないということがわかるのである。
円城塔の書評ならば、まずはこんな感じで始めればいいんじゃないか。
お風呂掃除をしながら、猫はそう考える。
そして「おふろそうじ」は「さむらごうち」と似ている、と思う。
思えば、かの「おふろそうじ」氏も、「わからない」現代音楽を否定して、「わかる」語法で長大な交響曲というモニュメントを打ち立てたかったのではないか。そこにナルシシスティックな自己宣伝が混じっていたから人々の反発をかきたてているのだが、「わかる」ものを作り出したいという、純粋といっていい目論見も一方ではあったのではないか。他方、「わからない」現代音楽を書いていたゴーストライター氏の作品は例えばYouTubeで試聴できるが、パフォーマンス性が高く、脈絡なく訳わからないものだが、会場の笑いをとっているほど「おもしろい」。
わからないとおもしろくないという誤解が巷に蔓延している。おそらく「わかる」と「おもしろい」は排他的でもなければ、連動もしていない。「わかる」はずの「おふろそうじ」交響曲も多くの人がわかったのかといえばそうではなく、人々がわかったのは、悲劇の作曲家がすげー曲を作ったという「わかりやすい」お話だったのである。そしてそういう「わかりやすいお話」というのはトリヴィアル以外の何ものでもないではないか。
「ばななむき」は「さなだむし」に似ている。
夢の中でトイレ掃除をしながら、あなたはそう考える。そしてサナダ虫には最適の場所のことを考えてちょっとうんざりする。
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「わたし」とは何か? それを数学や物理学のアイディアを手掛かりに詩的に展開してみた。と、おそらくはそんな趣向の短編集。ただその辿り着いたところは、何やら仏教的なテイストがある。SFを純文学に寄せた感じとも言える。このケムに巻かれる感じは悪くない。
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初めて読んだ『Self-Reference ENGINE』よりは分かりやすく、純粋に楽しめた。「バナナ剥きには最適な日々」と「捧ぐ緑」、「Jail Over」が好き。 理屈をごねたり、詭弁か真理かなんなのか分からない哲学的なことを言ってみたり、さっぱり訳わからん、というところもあるけど、美文を連ねたら文学なら円城塔は間違いなく文学だと思う。短編を選んで何回か読み返したい。
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読んでも読んでも全然わかるようにならないけど、それが気にならないぐらいさらさらした良い文章。小説を読んでいるはずなのに音楽を聴いているような気分になる。猛烈に好きになる、という感じではないけど、確かにこの世界観は定期的に摂取してみたくなるのもわかる。
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相変わらずよく分からない。
しかし、本当に全く分からなければ、そもそも読み進めること無く古本屋行きだろう。
「これはある数式に関連しているのでは」「これはプログラムかな?」となんとなく予想はしてみるものの、結局のところ結論は出ない。
分かりそうで分からない、この絶妙な不安定さに惹かれてしまう。
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フリオかオクタビオのどちらでもない『オクタビオ・パス』が1番好き。本の上の波紋から魚が跳ね、白紙のページは白い獣の流れ、八本脚の乗物、対岸を求めて旅立つおじいさん、そして白い宇宙服の細身の女性。イメージも内容も綺麗で面白かった。『捧ぐ緑』ゾウリムシの実験構想を長々と語り合いつつロマンチックだった。『AUTOMATICA』文章にまつわる考察的な話。『エデン逆行』DNAを辿ってルーツを調べる調査からこんな考察的な話が生まれたのかしら?文庫帯がとても素晴らしい。まさに「研ぎすまされた適当」を堪能した。
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相変わらずのわからなさ(笑)
でも、独特の雰囲気とリズムで読まされ、ほんのごく一部わかったような気になっただけで、面白いと思わされてしまう。
うーん、レビューもわからなさすぎやな。
Posted by ブクログ
「パラダイス行」
わっかになった裏山の通路。
「バナナ剝きには最適の日々」
星間探査球の一部である僕が、旗を置いていく。
チャッキーとバナナ星人。
「祖母の記録」★
失踪する祖父をコマ撮影する僕と弟、と、彼女とその祖母。
ジョンとは……
「AUTOMATICA」
二重括弧、文章自動生成。
「equal」
「捧ぐ緑」
ゾウリムシの研究。
「Jail Over」★
赤いソーセージと白いソーセージ。
「墓石に、と彼女は言う」
「エデン逆行」★★
時計の街、わたし=祖母。母=娘。
「コルタサル・パス」★
コムの向こう側のクィ。
詩的論理の力でもって「わたし」を解体してくれる。
Posted by ブクログ
文庫で再読。
単行本も持ってるけどボーナストラック入ってるし表紙も素敵だし(後に100%ORANGEと判明)、何より帯のコメントに心を鷲掴みにされてしまった。
「研ぎすまされた適当」とは、言い得て妙すぎる。
そんな感じの惹句を自分でも妄想してみたのだけれど、
「思わせぶりな無意味」とか「回りくどい明快」とか「難解な明解」とか、そんなのしか思い浮かばなかった。
円城作品を読むときにいつも悩まされるのは、そこに現れる(もしくは表れる、または著される)「わたし」とは一体だれなのか、ということだ。そこが幾重にも重ねられた比喩で覆い隠されている(ような気がする)から、読む「わたし」が読まれる「わたし」に翻弄されてしまうのではないか、と「わたし」は思うのです。
けれど「『わたし』とはだれか」という問い自体は決して新いものではないし、「読む者」と「読まれる者」の対立なんて、小説が生まれる以前からすでにあった問題であり、どちらもすでに語りつくされているはずだ。
難解な事柄をいかに分かりやすく解きほぐして伝えるか、ということが、近年求められている才能であったりスキルであったりする。
けれど円城作品では、ある程度語り尽くされて解き解されてきた単純な事柄が、あえて難解に書き直されているように思う。
それが作品の中にしばしば登場する「再構築」とか「書き換え」ということでもあり、この「逆行してる感」が円城塔という作家の「他を寄せ付けない感」の正体なんじゃないかなと思ったりした。
それを真顔でやってのけるから、だから円城塔を読むのはなんかよくわかんないけど痛快なんだと思う。
Posted by ブクログ
単行本も読みました。文庫版ボーナストラックのコルタサル・パスはキャッチーでいかにもなSF、と見せかけて全てをひっくり返す雰囲気を孕んでいてゾクゾクします。捧ぐ緑、バナナ剥き、祖母の記録などは軽快で楽しく、やはり「どちらかというとわかりやすい作品集」だと思います。
Posted by ブクログ
普通のSFをやってると逆にコメントしたくなってしまう作家。しかし負けずに…「祖母」は舞城王太郎的な馬鹿馬鹿しいグロテスクさが新鮮。「バナナ剥き」は出だしは普通なのに結局論点がどこなのかよくわからないのが最高。「捧ぐ緑」はいちばんわかりやすく面白い。長編楽しみすぎる。
Posted by ブクログ
わからないけどおもしろいという評判のように、よく分からないが、もう少しで分かりそうなところで宙ぶらりんになっているような印象を受けた。
全十篇の、それぞれ短いながらも確固たる世界観を楽しめた作品集だった。
Posted by ブクログ
が書いてあるのか分からない。分からないんだけど面白い。何なんだこれは。
まるで、宇宙空間に漂っている様な、ふわふわとした浮遊感に包まれた。
多分これは、分かるとか分からないとかそういう話じゃなくて、分からないこと、そして文章のリズムを楽しむのがいいんじゃないだろうか。
私が面白かったのは、表題作と捧ぐ緑、equal。
表題作に関しては、宇宙人の話とかしてるんだけど、全然出てこない。唯一出てくるのが、僕が想像するバナナ星人。皮が3枚に剥けるか4枚に剥けるかで争ってるんだけど、どちらか判明するのは、死んでからという。
読んでいる間は何が何だかさっぱり分からないんだけど、後から考えるとじわじわくるんだよなこれ。
初めての円城塔にはぴったりだった。
Posted by ブクログ
・体調不良のなか読んだのでふらふらと夢幻をさまようような気分に陥った。
・独特のわかりにくさはお話の到達しようとする先が見えにくいことと無用な情報がいっぱい付与されていることに由来するか? これは今たまたま並行して読んでいる森博嗣さんの「水柿助教授」シリーズにも共通されるところでいっときの流行りやったのかもしれない。だらだらと低調のまま続いてくヤマなしオチなしイミなしのある意味やおい系? 高校生、大学生の作家志望の人が書くようなうっかりすると独りよがり系の作品ではあるかと。この手のを読むのは慣れてるので意外に抵抗感がなかった。
・Speculative FictionとしてのSF、あるいはあえてそう見せている偽Speculative Fictionといえる気もする。だからどこか、古臭くも感じる。
・この著者有名作家として名を知ってはいたが読むのはたぶん初めてと思う。
・文庫版p.105はクラフト・エヴィング商會っぽい。
・「墓石に、と彼女は言う」では最近読んだ伴名練『なめらかな世界と、その敵』を思い出したのでするっと入ることができた。
Posted by ブクログ
ハイパーな感じで頭の中をわやにしたいとき、円城塔はキく。魔術師の蝶よりもやや宇宙っぽい感じで、もう少し深く考えればもう少し深く読み込めるんだろうがそれを放っておいても読めるし良い。
Posted by ブクログ
うーむ、円城塔は「なんか分からないけど面白い」と言われてることが理解出来ました。
ほんとに分からないものばかりでした(笑)
でも嫌いにもなれない。。。
ほんとに不思議な小説です。
個人的には曲はいいけど歌詞の意味はあんまり分からない音楽を聴いてる気分になりました(笑)
伝わるかどうかは分かりませんが...(^^;)
一つ一つの単語の意味は分かって、でも繋がると分からない。でもなんか文章のリズムが良くて読めてしまう。
その雰囲気を楽しむ小説。
そう割り切って読めば楽しむことが出来る気がします。
正直、この作品を深く考察する勇気はありません。
なかなか興味深い作品に出会えました。
Posted by ブクログ
なるほど.わけがわからない.が,面白い.
読む人を選ぶことは間違いないが,フィットさえすれば,琴線に触れてくるはず.私にはフィットしたため,円城塔に引き続き絡み取られてみようと思う.
Posted by ブクログ
「パラダイス行」★★★
「バナナ剥きには最適の日々」★★★
「祖母の記録」★★
「AUTOMATICA」★★★★★
「equal」★
「捧ぐ緑」★★★★
「Jail Over」★★★
「墓石に、と彼女は言う」★★
「エデン逆行」★★★★
「コルタサル・パス」★★★
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まぁ円城塔である。二回読んだけどわかったとはよう言わん。わからんのと、わかった気くらいになるのと。いや、別にわかりたくて読んでるわけでもないので、わかった気になっておもしろかったりわからんけどおもしろかったりでいいのだ。
ということで、わかった気になっておもしろかったのがまず表題作。うん、頭使わずにぼんやり読んでもおもしろい。
「祖母の記憶」ノリ的にちょっとバリー・ユアグローっぽい。悪趣味さと乾いた感触。ユアグローに比べると長いだけおもしろいのとダレるのと。アイディア一発ではないのだな。
「捧ぐ緑」何だよゾウリムシ。といいながらこういうなんちゃって生物学みたいなの好き。石黒達昌とか。
Posted by ブクログ
“おめでとう、おめでとう。
何世代か前に、超光速航法を編み出した祖先たちが入植した土地に、僕はようやく辿り着いたというわけだ。骨董品の長い旅を労おうと、僕を迎えるためのびっくりパーティーを用意しておいてくれたのだ。まあその前に電波の様子で僕の方にも知れるだろうが。
あなたは別に何かをみつけたわけでもないですし、我々の知識に何かをつけ加えたわけでもないですが、とにかくこうして裸一貫、大海原を越えてやってきてくれたことが偉大です。おめでとう。おめでとう。とか言われるのだ。”[P.32_バナナ剝きには最適の日々]
「パラダイス行」
「バナナ剝きには最適の日々」
「祖母の記録」
「AUTOMATICA」
「equal」
「捧ぐ緑」
「Jail Over」
「墓石に、と彼女は言う」
「エデン逆行」
「コルタサル・パス」
単行本に「コルタサル・パス」を加えての文庫化。
この文章がたまらなく好き、とかこの表現がとても気持ちいい、みたいなのがちょくちょくあってそこが楽しい。
“透明な形でできた三角形。そこには腕が四本あって、足が七本あるのであって、四は七より小さくて、七は三より小さいのです。
おかしいなと思ったとして、ここにはまだ四も七も三もいないのでした。出て来る必要がありませんから。そんなものがなかったとして、困ることもないわけなのです。
全然この世にいないとしても、三角形のことが大好きだよ。
もしかして、既にこの世にいるものや、既にこの世にいなくなってしまったものと比べてさえも。この世の中に原理的に存在できないもののことが大好きだよ。
こうした言葉の並びみたいな。
そうして、大好きなものは大嫌いだよ。
大好きなものなんてこの世にずっとないままでいい。この世が大好きで一杯ならば、この世は大嫌いで一杯で、そんなのは、ほんとうにもう大嫌いでちょっとだけ好き。”[P.101_equal]
Posted by ブクログ
円城塔の短篇集。
「ゾウリムシは信仰を持つか調べています」と、バナナ星人の対立のくだりは最高に面白いw
個人的には上記の『捧ぐ緑』、『バナナ剥きには最適な日々』と、『パラダイス行き』、『コルタサル・パス』あたりが好きです。
円城塔のナンセンスとまでは行かないけど、よくわからない絶妙な感じが好きですね。
言葉選びのセンスと設定の作り方が上手い。
まともな文章も書けることは『屍者の帝国』でも証明済みなので、たまにはこれらの巧みな設定を活かした普通の文章の普通の作品を書いて欲しいと切実に願っています。
でもそうすると円城塔の味が薄れて、没個性・大量消費型の作品になってしまうんでしょうね・・・。
それはそれで考えものかもしれない。