藤原正彦のレビュー一覧
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ネタバレメモ寄りの感想
結論
欧米の論理と合理よりも、日本古来の情緒と形(感受性や考え方(八百万の神や武士道、もののあわれ等))を重要視
論理には限界(世の中には論理で説明できないことが多くあるし、その中には大切なことが多い)があり、社会の安定性には情緒が必要
論理の世界は画一的であるが、情緒の世界は個性的
メモ
英語よりも国語(自国の文化や考え方を勉強含め)に注力すべき。
→思考は言語で行うものであり、国語が弱い状態で英語だけ話せても、その人の人間性の向上はできない
二つの祖国愛。ナショナリズムは自国の国益のみを優先(トランプ)、パトリオティズム(自国の文化、伝統、自然等を愛すること)
貧しいが高貴ができる国
真のエリートとは文学、哲学、歴史、芸術、科学といった何の役にも立たないような教養を身につけている(大局観)。国家のためにいざとなれば命を捨てる気概があること。
家族愛→郷土愛→祖国愛→人類愛
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書店の平積みに目が止まり読んだ。
藤原正彦は新田次郎と藤原テイの次男で、彼の心に残った歌謡曲を取り上げて、その曲にまつわる情景や思い出を回想しながら書いたエッセイである。
当該曲とその人のもち歌をスマホのYoutubeで聴きながら自分の“懐メロワールド”を楽しむ一風変わった読書体験ができた。
作者の文章は力みがなく平易で読みやすい。
日本の歴史や伝統に誇りをもち幼少期の国語教育を大事にすべきという考えには同感できる。
戦中の大陸生活と母に連れられた引き揚げそして父のシベリア抑留など家族の体験は彼に環境に負けない強い意志を育むことになる。成長過程を語る言い回しには所所でエリート数学者の衒いを感じる。戦争に翻弄される生活者の悲しみや希望を願う歌謡曲を取り上げていて、それぞれの歌は各々深い共感を誘う。
島倉千代子の『哀愁のからまつ林』はそれほど聴いた覚えはないが透き通った声の切ない歌が心に沁みる。
この本にはないが『東京だよおっかさん』も聴いた。戦争は母親に非情で、息子を失う悲しさが痛切だ。
悲哀を帯びた旋律に歌詞の秀逸さが際立つ。当時大人達が彼女の歌に聴き入っていた意味が今頃になってわかる。同期入社の友人がよく歌っていた。
『花』や『空の神兵』『花の街』は終戦後の人々の苦労と平和への祈り、天使の声のような女学生の合唱に作者は今も聴きながら涙するという。
『異国の丘』『柿の木坂の家』『琵琶湖周航の歌』『別れの一本杉』などは自分には一世代前の歌だが、時代を超えた何ともいえない懐かしい曲だ。
『22才の別れ』は社会に出て少し経った頃のかぐや姫の歌である。矛盾を怒り無性に人が恋しかった荒んだ日々を思い出しよく聴いた。懐かしさと後悔が疼く。
『なごり雪』も同じで、伊勢幸三の作詞作曲である。
作者はアメリカから帰ってきて初めてこれを聴いて衝撃を受けたという。
『秋桜』は嫁ぐ娘への母親の切ない想いを歌う。山口百恵が母娘の哀調を淡々と醸す。この歌を聴くたびに苦労をかけた母に詫びる気持ちで一杯になる。
『紅葉』『毬藻の唄』『学生街の喫茶店』など作者が青春の憂愁と懐かしさに酔う様子もリアルで共感できる。
作者の感想よりそれぞれの曲に興奮する自分がいた。
最後に作者がアメリカ留学に持って行った本の、中原中也の「月の浜辺」と萩原朔太郎の「櫻」、そして茨木のり子の「さくら」の詩を全文紹介する。
日本人の「もののあわれ」の情趣をしみじみ噛み締めてこのエッセイを締めくくる。
数学家に大成した彼の人生は若い頃からその時々に流行った歌謡曲や演歌の魂とともにあった。
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ネタバレ新田次郎と藤原ていを両親に持つ藤原正彦の「週刊新潮」連載コラムのシリーズ第3弾。時期的には、東日本大震災後の2011年7月からの約1年間ですが、今読んでも示唆に富む話題満載です。
間違いなく、現存する良識ある言論人の一人。名著「国家の品格」「日本人の誇り」「名著講義」などハズレがない作家でもある。
短いコラムながら、寸鉄人を刺す芸は流石。
「ロビイストにやられる」では、日本人のお人好しを誇りつつ嘆く。曰く、「日本人は、正しいことはわかってもらえる、と信じており、自らの正しさを大声で主張するのはさもしいと思う。美しい誇るべき国柄だ。ただ、世界は日本人が考えるよりはるかに醜い」
「大清算」では、「欧米人は帝国主義時代より、有色人種を働かせ、自分たちはその上前をはねることで楽しく豊かに暮らす。今でも、アフリカ人やアラブ人には鉱物資源や化石資源を採掘させ、南米人には農産物を生育させ、アジア人には工業製品を製造させ、自らは、投資や金融を通してその上前を吸い上げるという構図だ」とグローバリズムの本質を正直に告白してしまう。
「高くつく手土産」では、政権与党の民主党の戦略なきバラマキ外交を嘆く。鳩山首相の温室効果ガス20%削減、安住財務相の消費税率10%引き上げ、野田首相の韓国への資金支援枠の5倍拡大、TPP参加表明など、どれも国内コンセンサスの得られていない民意無視の一方的宣言(譲歩)を行い、そればかりか、損して得取れという交渉の基本である相手からの譲歩案件すらしないという国益無視。(今の自民党も変わらないが…)
「会津のすごい女性たち」では、一夜にして朝敵となった会津藩の話。中でも、会津女性の凄さと強さを語る。が、おそらく当時の人たちは男女問わず質実剛健で立派な人が多く、特に会津藩がその度量を示す機会の矢面に立たざるを得なかったからなのが実情だと思う。
「ノブレス・オブリージュ」では、上に立つ英国エリート階級や富裕階級の社会に対する責任、いわば騎士道精神について。例えば、リーダーとして率先して戦場に立つというもので、親のコネを使って兵役逃れなどもってのほか。日本の武士道と相通じるものがあるが、そうした誇りや美徳よりも目先の損得を優先しても恥じない今の議員の多さよ。
「財界エゴとワーキングプア」は、安い労働者を求めて大量移民を受け入れた欧州では、既に治安悪化や社会コスト増大と文化や宗教の違いによる現地民との軋轢という問題が起こっていたのにもかかわらず、10年遅れでそうした失敗(移民政策)を繰り返す日本の政治家と経団連の浅はかさと売国ぶり。
「バークと福澤の叡智」では、「制度、慣習、道徳、家族などには祖先の叡智が堆積している」(英国思想家バーク)と、浅知恵や短慮で日本の伝統的行動様式を変えようとする気運を戒めた福澤諭吉の言葉を重ねる。 -
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作者の主義主張にはこだわりがあり、同意できない部分もあったが、全体的な大意には賛同。
ただし、テクノロジーの進化を止めることはできないので、スマホの使い方などは、もっと共存できる余地を探すべきなのではないかと思った。
情緒を磨かないと大局観をそもそも見誤る。そもそも出発点を間違える。適正に選択されない情報はいくらあっても無価値。情緒が情報の選択を正しい方へ導いてくれる。
この考え方は今までの私にはなかったので、新鮮だった。きっと今後もずっと心に響き続けると思う。
思考は言語で行なっている。基本的には母国語。語彙が貧弱だと思考も貧弱。これはいろんな人が言っているし、私もその通りだと思う。子どもたちにはたくさんの言葉に触れてもらい、語彙を増やし、思考を楽しんでもらいたいと思う。
最後になるが、本のタイトルと内容が合っていない気がするのは私だけだろうか?本を読む、日本語を学ぶ、日本語を大切にすることと、本屋を守ることはイコールではないはずで、違和感があった。本屋を守れというタイトルが極端だなと思う。本屋を守りたい気持ちは私も同じだが。 -
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数学者であり世界各国のいわゆるエリート層ともかかわりの深い著者が「教養」の歴史を紐解きながら各時代の社会の中でどのような役割を演じていたか、もしくは演じられなかったかを解説し、それを元に現代社会への警鐘を鳴らしている。
内容は良いと思うが、著者の国際社会への見方は少々偏りがありその部分は話半分に聞くべきかなと思った。
特に事実認識と意見が混在しているときがあり、他に見方があるかもしれないのに断定的なのがちょっとなと思った。
とはいえ、その部分に目をつぶれば数学者ならではの雑学やスベッても気にしないユーモア(笑)もあり、楽しめる部分も多かった。
教養に関しては知識、情緒、形(徳目)を実生活に活かすべしというのがあり、それは同意である。
所謂、論語読みの論語知らずという奴だ。
あとはやはり読書は大事なようである。 -
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この本の発売当時はどうだったのか分からないが、今の日本はこの本の内容からは遠い所に来てしまったなと思う。
第一章〜第三章は大きな事を語り過ぎていて読んでいて疲れる。ただ「論理には出発点が必要」の考え方は面白かった。情緒力がなくて論理的な人がいると困ると言うのは共感しかない。
第四章〜第七章がとにかく良かった。日本人の自然に対する感受性、もののあわれの考え方、武士道精神等...これが国家の品格かと思う。今は失われつつあるこの品格を持ち続けていきたい。
ただ、作中に度々出てくる作者の妻に対する暴言が気に入らない。作者は受け狙いで書いているのかもしれないが、この余計な一言のせいで作者がどうしても好きになれない。「四つの愛」で「家族愛」「郷土愛」「祖国愛」「人類愛」をあげているのに....。私が作者の妻なら冗談でも殴りたい等言われたく無い。 -
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藤原正彦先生、傘寿を迎えられたとのこと。著作との初めての出会いは博士課程の時で、もう20年以上前になる。当時サンダルでカリフォルニアに降り立った私を、ニュータイプと頼もしく思われたか、あるいは呆れられたかで、恩師は「若き数学者のアメリカ」を薦めてくれた。それからというもの、確かにいくらかはもう古い考え方で、しかし凛として揺るがない武士道・騎士道の思想に貫かれ、ユーモアと情緒と人間愛に溢れた文章にハマりにハマった。著作に出会う度に、自分と他者との境界を曖昧にしてはいけないと思い直す。自分はどう考えどうしたいのかと。藤原正彦先生が上梓を続けてこられた20年以上もの間、折に触れ、数多の文章が時々私を矯正してくれている気がする。
シニア割やイギリスの自虐、近隣を対立させる遣り口に対する意見は、他の誰からでもない、内側から出てきた独自のものだろう。私もそうでありたい。 -
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時代は明治から大正。
ポルトガル人で、元軍人、外交官のモラエス氏の日本での半生を描いた歴史小説。
彼は、母国ポルトガルに戻ることなく、徳島で終いの人生を迎える。
当時、日本に来た外国人の渡航記を読んでも気が付くことだが、この小説でもラモエス氏の客観的な外からの視点で、当時の日本の生活、文化、日本人に触れられており、とても興味深い。(多くがポジティブな捉え方)
日本人女性も妻、愛人を通じて褒め称えているのだが、その関係には悲劇が付きまとう。
実際の彼の書物を読むと、より直接的に当時の日本について知ることができるのかもしれない。
ちなみに、本著は、新田次郎が連載を開始したものがベースとなり、死去により途絶えていたものを、息子の藤原正彦が継いで完成させた大作。
徳島には、モラエスにまつわる観光地があるようなので、いつか巡ってみたい。
(眉山山上の博物館施設「モラエス館」や旧宅のあった徳島市伊賀町一帯)
なお、徳島は、第一次世界大戦で捕虜になったドイツ人が収容された場所としても有名であり、その交流も小説になっている。
今では年末の風物詩にもなっている第九は、この時から広がったらしい。