藤原正彦のレビュー一覧
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安野光雅(1926~2020年)氏は、島根県津和野町生まれ、山口師範学校(現・山口大学教育学部)卒の画家・絵本作家。芸術選奨新人賞、講談社出版文化賞、小学館絵画賞、(英)ケイト・グリーナウェイ賞特別賞、(米)最も美しい50冊の本賞、(チェコスロバキア)BIBゴールデンアップル賞、(伊)ボローニャ国際児童図書展グラフィック大賞、国際アンデルセン賞、菊池寛賞等、内外の数多くの児童書・美術の賞を受賞。紫綬褒章、勲四等旭日小綬章受章。文化功労者。
藤原正彦(1943年~)氏は、満州国新京(現・中国吉林省長春市)生まれ、東大理学部数学科卒、東大大学院理学系研究科修士課程修了、ミシガン大学研究員、コロラド大学助教授、お茶の水女子大学理学部数学科教授等を経て、同大学名誉教授。新田次郎とベストセラー『流れる星は生きている』の著者・藤原てい夫妻の次男。米国留学記『若き数学者のアメリカ』(1977年)で日本エッセイスト・クラブ賞受賞。「情緒」、「国語」、「愛国心(パトリオティズム)」、「武士道」等の大切さを説いた『国家の品格』(2005年)は200万部を超えるベストセラーとなり、その後も様々な講演活動、雑誌連載・本の執筆等を行っている。
本書は、安野氏と、安野氏が小学校の図画工作の教師だった時に生徒だった藤原氏が、日本語の美しさについて、数々の文学作品や唱歌・童謡等を引用しつつ語り合ったもので、2006年に出版された。
目次は以下の通り。まえがき(藤原正彦)、第一章:読書ゼミのこと、第二章:国語教育の見直しを!、第三章:日本人特有のリズム、第四章:日本語は豊かな言語、第五章:小学唱歌と童謡のこと、第六章:文語体の力、第七章:ユーモアと空想、あとがき(安野光雅)
本書の大前提となっている「美しい日本語の大切さ」については、藤原氏は、同時期に出版した『国家の品格』はじめ様々なところで説いているが、本書のまえがきにも次のように書いている。「美しい日本語に触れないと、美しく繊細な情緒が育たない。恋愛さえままならない。文学に一切触れず、「好き」と「大好き」くらいの語彙しかない人間は、ケダモノの恋しかできそうにない。・・・様々な語彙を手に入れはじめて恋愛のひだも深くなるのである。・・・祖国に対する誇りや自信も身につかない。祖国がいかに経済的繁栄を続けても、いかに強力な軍隊を持っても、深い誇りとか自信はそこから生まれはしない。世界もそんな国や国民には、嫉妬や恐れを抱いても決して尊敬はしない。深い誇りや自信は、祖国の生んだ文化や伝統、すなわち普遍的価値から生まれる。」
私は、これまで藤原氏の多数の本を読み、その主張には大いに共感しているので、本書についても頷きながら読み進めたが、最近短歌を詠み始めたこともあり、特に、日本人特有の「五七」のリズム、文語体の力と美しさ(尤も、私が詠むのは俵万智の『サラダ記念日』のような口語短歌だが)についてのやり取り、及び、「ユーモアと独創性」とは非常に近いもので、その真髄は二つの離れたものを結びつけるという「意外性」にあるというくだりは、興味深く読んだ。
安野氏と藤原氏という、かつての教師と生徒、かつ、共に専門外ながら日本語(文学)に強い思いを抱く二人ならではの、日本語愛に溢れた対談本と言えるだろう。(作家や日本語の専門家同士の対談であったら、(良いか悪いかはともかく)随分違ったものになっていたに違いない)
(2022年10月了) -
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お茶の水女子大1年生20人限定の読書ゼミ内容を紙上公開。毎週1冊の課題図書(岩波文庫)を買って読みレポートする。
課題図書の選定がイイ。どの本も読めば、戦後日本人が無くしたモノに気づくことになる仕掛け。
例えば、内村鑑三「代表的日本人」に出てくる上杉鷹山(や保科正之など)の合理性と先見性や西郷隆盛のあふれる人間愛、日蓮上人の強い信念と実行力など。
また、英国外交官の妻、キャサリン・サンソムが東京赴任中に書き記した「東京に暮らす」の時代は、世界恐慌や満州事変、国連からの脱退、二二六事件や日中戦争など平穏とは真逆の激動の時代でした。そんな暗い世相の中でも、日本人の陽気さや礼儀正しさを賛美する本書の内容は、当時の来日外国人の多くが「貧困でも幸せな国民」という形容の普遍性を証明するものでしょう。ゼミのディスカッションで「当時はうつ病になる人が少ない」という文章に着目した藤原氏は、翻って現代日本は「(核家族化に伴い、)家族やコミュニティーの絆を失った人々にとって、自由選択、自己責任、競争社会という重荷を背負います。絆を断ち切ると自由が得られます。家族を捨て個人主義に走ると自由が得られます。その反作用が、不安、孤独、そこはかとない精神の疲労です。自由というものの光と影を見極め日本的なものを取り戻さない限り、うつ病が減ることはないでしょう」と鋭い。
本書で紹介された本すべて魅力的ですが、あえて1冊のみを選べば、最終講義での課題図書、福沢諭吉「福翁自伝」でしょうか。 -
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ネタバレ日本人は「正しいことはいつも誰もが分かってくれる」と信じており、自らの正しさを大声で主張し宣伝するのは「さもしい」と思う。金銭をばらまくなどというのは最低の行為と思う。美しい誇るべき国柄だ。ただ、世界は日本人が考えるよりはるかに醜い。 藤原正彦「卑怯を映す鏡」、2015.6発行。鎖国を選択し細々と生きるのは、文化と文明の乖離、日本の戦略的地位から難しいのでしょうね・・・。アフガニスタンやミャンマーにも思いが及びました。
第一次世界大戦は、300年暴威をふるった帝国主義の大清算。第一次だけでは足りず、第二次大戦を経てやっと終息。甘い夢をばらまいた共産主義も70年余り、多くの犠牲者を出した末、ベルリンの壁で清算された。リーマンショック以来の経済危機は、資本主義が大清算に入ったことを意味している。危機はまだまだ続く。今、清算されたはずの帝国主義と共産主義の復活を無謀に目論むロシアの暴挙と新型コロナ・ウィルスの嵐が・・・。 -
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ゆとり、個性、創造性等が大切だと''個性尊重''の教育方針で育った子供達は、周りに合わせる事を学び目立った行動を控えて考え方も画一的になった。本を読んで思考を高め教養を養う事が大切だが学生の読者好は''変人''で読まない方が''普通''らしい。
教養は、文学・思想・歴史・芸術で実用には必要ないものだがそこから精神が生まれる。大局観が生まれる。
読者しなくなったのは、孤独な時間をスマホやネットに変わったから。スマホでのメールやり取りは単なる反応の繰り返しでネット情報は単なる情報であって知識や教養では無い。著者は高校生までの子供のスマホには電話機能以外は作動させないようにするや、ネットでの本販売は、送料実費にする等、読書をする大切な時間を捻出する事、教養を醸成させる環境を作る事が大切だと訴える。
また、自己顕示は卑しい人間のする事で謙虚さが大切だと。
理学博士で''国家の品格''でベストセラーとなった著者ですが、相変わらず鋭い切り口と独特の感性に共感します。紙の本を読む事は教養、情緒、大局観を養う上で大切だと。電子書籍では記憶に残らない、一目では何の書籍か判断出来ない、感覚が残らない等、本屋で購入し読む事を勧める。本を一日に1ページも読まない人はケダモノだと喝破します。 -
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ネタバレ数学って実は美しく面白いものなんだ、ということを知ったのが小川洋子さんの著書「博士の愛した数式」だった。それまで数学は四角四面の無味乾燥のものだと思っていたが、それ以来数学を見る目が変わった。
また「遥かなるケンブリッジ」で藤原先生の大ファンになっていたので、骨髄反射的にこの本を手に取ってしまっていた。
数学は大の苦手だけれど、「美しい」ということだけは分かる気がする。そして美しいことは正しい、というのも腑に落ちる。それが宇宙の法則なのか、神の技なのか。混沌の中からその秩序を見つけ出す、秘密を解き明かす数学者には信念と情熱が必要。実はとてもウェットな世界だよなぁと感じた。数学に、数学者に、宇宙に敬意を感じずにはおれない。
日本も歴史に残るような偉大な数学者を多く輩出しているという事実に改めて驚いた。鎖国時代にも独自に研究を進めていたというのも興味深い。
藤原先生の「谷村ー志村予想」についての例え「エベレストの頂上と富士山の頂上を結ぶ虹のかけ橋」というのもまた美しい。
・室伏選手のアテネオリンピックでのエピソード
・三角数の美しさ
以下、読書メモ
・天才数学者の生まれる条件
①何かにひざまずく心を持っている
②美の存在
③精神性を尊ぶ(役に立たないもの)
・正しい方向に間違う -
Posted by ブクログ
人は自分にとって価値ある情報を"嗅覚"で選ぶ。この嗅覚は"教養"と、そこから生まれる"見識"によって培われる。
教養は、人類の歴史の中で、次のように扱われてきた。
・古代ギリシアでは、ピタゴラス学派が自由人になるための技術として7科目を基本とした。
└数学系4科:音楽、算術、幾何学、天文
└言語系3科:文法、修辞、論理
・帝政ローマ時代の末期、数学系4科と言語系3科を合わせて、自由7科(リベラル・アーツ)と呼ぶようになった。
中世に入ると、自由7科の上に"哲学"を置くようになった。
・第2次大戦後、教養主義は徐々に衰えた。
理由として、
└現代人が教養を見下すようになったこと
└知性を軽視する"アメリカ化"が世界で進んだこと
などが挙げられる。
今後、新しい情報社会に対応するには「現実対応型」の教養が欠かせない。これは
└情緒:人生経験によって培われる心
└形 :正義感、勇気など人間のあり方
と一体となった知識である。
これからの教養を構成する情緒や形、知識は、実体験によって得られる。
ただし、一生の間に実体験できることは限られるため、間接体験(追体験)、つまり読書や芸術などに親しむことが大切になる。
これからの「教養の4本柱」は次の通り。
・人文教養:長い歴史をもつ文学や哲学など
・社会教養:政治、経済、歴史、地政学など
・科学教養:自然科学や統計など
・大衆文化教養:古典芸能やマンガなど