藤原正彦のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
現代の自称保守のような差別や排外ではない、本来的な保守の思想を学びたい(どんなものなのか見てみたい)と思い手に取った。筆者は本書の中で「弱いものいじめは良くない、(なので)他の戦争は仕方がないが日中戦争だけはよくなかった」「大戦争は避けるべき」といったようなことを述べており、では自分よりも強い相手に小規模な戦争をふっかけるのならば良いのか? という疑念や、大戦で犠牲となった人々を意識していないのではないかなど、ツッコミどころはあるものの、全体としては「卑怯なことはよくない」などの筋がきちんと通っており、また「現代は『論理』が重要視されるが、論理は比較的どうとでもなる、戦争にさえ論理性や合理性を見出すことが出来る。論理だけではだめだ」と現代の論理·合理優先の世の中に警鐘を鳴らしているのは一定以上の理があり興味深くもある。
残念ながら本書の発行から約10年、本書で指摘された「愛国心」「ナショナリズム」の台頭は留まるところを知らず、筆者の主張する「祖国愛」は浸透せず、論理だけどころか論理すらも軽視され、道徳は崩壊し、義理などでは到底ない激的かつ排外的排他的な感情論ばかりが罷り通る世の中になってしまった。近年の風潮を筆者はどう見ているのだろうか。
また筆者がそのような考えかどうかは測りかねるものの本書にも排外主義の萌芽のようなものが見え、この頃からすでに道筋は示されていたのではないかと言う気もする。
今後の、差別でも排外でも弱い立場のものを踏みにじるのでもない、本来的な保守の復権に期待したいところだ。