藤原正彦のレビュー一覧
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歴史の先生が言っていた。
「日本、アメリカになっちゃえばいいと思わない?アメリカ合衆国ジャパン州、どうよ?」
この発言の適不適はさておき、私含め生徒たちはなんだか背筋がぞわっとして、なに言ってんだこの人はと思った。
この本を読んでいて思い出したのはそんな昔のことで、あれはかの先生なりの、戦後日本への問題提起だったのだと気づかされる。
『国家の品格』でもたしか書いてあった、ナショナリズムとパトリオティズムの違い。知ったときは本当に目から鱗だった。
祖国愛は持ちたいもの。というか持つべきもの。本当に心からそう思う。
それでも持っているだけではダメで、愛とともに、盲信ではない自信を持って進まなければならないのだと感じる。 -
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著名な数学者でありエッセイストでもある筆者が、自身の尊敬するニュートン。ハミルトン。ラマヌジャン。の3人の天才数学者の業績と足跡を自らの足で辿った評伝紀行です。一人一人の人生がすごいです。
著名な数学者、ならびにエッセイストとしても有名な筆者が自身の尊敬する数学者―ニュートン。ハミルトン。ラマヌジャン。の3人の足跡をたどる評伝紀行エッセイでございます。僕は数学を中学、高校で完膚なきなでに挫折して、それ以来数式にもほとんど触れないという人生を送ってまいりましたが、本書には難しい定理や数式などはほとんど出てくることはなく、同業者にしかわからない筆致で3人の苦悩や、数学をすることの喜び、さらには抗いようもない人生の悲哀に直面した彼らをつづっております。
万有引力で有名なニュートンは「プリンキピア」をすさまじい集中力であらわし、後の人生は新しい発見をすることなく、その「権威」で送ったことや、彼の幼少期の孤独な姿が描かれ、その「プリンキピア」を若干 12歳で読破した早熟の天才ハミルトンは、その際のとは裏腹に、幾多もの恋に破れ、その心の傷を詩に託し、その怨念を研究にぶつけていた、という箇所は本当に涙を誘いました。一緒になった妻とは性格的に合わず、人妻となった当時の恋人とプラトニックな文通をし、彼女が死の床についている際に見舞ったときのエピソードは本当に痛切でした。
しかし、圧巻なのは本書の半分以上を占めるインドの数学者、シュリニヴァーサ・ラマヌジャンの章で、筆者はインドに飛び、彼の歩んだ足跡をたどりながら、32歳で世を去った数学者の神がかり的な数学業績と、それと引き換えに彼が送ったインド~イギリスでも漂白の人生をしのぶ姿が印象的でした。その中にも今はどうなっているかはわかりませんが、インドのカースト制度にも多くが割かれていて、バラモンであったラマヌジャンと、それをめぐる戒律が彼の中でものすごい葛藤だったというエピソードや、筆者が行く先々で目にするカーストのありようにはなんともいえないものを感じました。
これを読んでいたころに、ビートたけしがとあるテレビ番組でこの本の中にも書かれてあるラマヌジャンのエピソードで1729という数字が『3乗の和として2通りに書き表せる数のうち、最小のもの』ということを熱心に語っており、彼の数学に関する強い関心が窺えて、とても驚いたことを、最後に付け加えておきます。 -
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本書は、著者が指定する文庫本を毎週一冊読んできて、それについて毎回ディスカッションするという、いささかハードなお茶大の名物ゼミをまとめたものである。
藤原正彦は、思想家としては三流、数学者としての実力は未知数であるが、文章家としては超一流である。天才的といってもいい。まるで美しい数学の証明を見るように、簡潔にして要を得ており、全く無駄がない。文章の濃度が濃いのだ。だから、文庫本とはいえ、なかなか読みでがある。
著者の膨大な読書量には圧倒される。しかしその割には、彼の思想は、バランスを欠いた狭隘なナショナリズムに過ぎない。江戸・明治期の日本と、昭和前期の日本を一緒くたにして、何でもかんでも礼賛すればいいと言うものではない。二言目にはGHQや日教組の陰謀などと言い出すところにも閉口する。まぁこれは、彼の欧米に対するコンプレックスの裏返しなのだろう。もっと下の世代は、そんなに肩肘張って頑張らなくても、日本の良さを十分知っていると思う。
でも、そんな心配をよそに、十代の女子学生たちの反応が素晴らしいのだ。著者が、右だの左だのと古い人々の頑迷な思考パターンに捕らわれている間に、彼女たちはそれを軽やかに飛び越え、もっとずっと先に行っている。
このゼミで取り上げられた11冊は、以下の通りである。青帯の岩波文庫を主とした重厚なラインナップだ。その他にも、面白そうな関連書籍が山ほど出てくる。恥ずかしながら私は、まだ『きけ わだつみのこえ』しか読んだことがない。著者の主張を割り引いて読めば、本書は、とても秀逸なブックガイドだと言える。大事なことは、読んで、自分の頭で考えることである。
・新渡戸稲造『武士道』
・内村鑑三『余は如何にして基督信徒となりし乎』
・福沢諭吉『学問のすゝめ』
・日本戦没学生記念会編『新版 きけ わだつみのこえ』
・渡辺京二『逝きし世の面影』
・山川菊栄『武家の女性』
・内村鑑三『代表的日本人』
・無着成恭『山びこ学校』
・宮本常一『忘れられた日本人』
・キャサリン・サムソン『東京に暮らす』
・福沢諭吉『福翁自伝』
最後にお茶大での最終講義が収録されている。私も拝聴させていただいたが、改めて読み直してみると、とても良い。数学と文学との間に架かる橋を行ったり来たりしてきた藤原正彦は、人生を楽しむことにかけても天才なのかもしれない。 -
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画家の安野光雅さんと、数学家の藤原正彦さんが日本語について語るなんて面白そうだし、専門家が語るより気軽に読めると思い、借りました。
漢詩(読み下し)や童謡など、意味が分からなくても若いうちから暗誦することの大切さを話していて、とても「にほんごであそぼ」的であると感じました。暗誦すると、確かにあとから効いてきて、人生をより豊かに過ごせるように思いました。
「読書ゼミ」で読む、と挙げられていた本は、なかなか難しそうなものが多かったですが、これから少しずつ読んでいこうと思います。
二人の実感に基づくお話が繰り広げられていて、ふーん、そんなものなのか、と感心しつつ楽しく読みました。 -
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前作「若い数学者のアメリカ」が大変よかったので、2作目である本作品も期待して読んでみれば、期待にたがわぬ素晴らしい出来栄えだった。
1987-88年にケンブリッジ大学クイーンズ・カレッジで研究を行った著者の生活記。
外国へ行くと極端に日本擁護派になってしまう藤原氏の前のめりな姿勢に時には苦笑しつつも、客観的で冷静なイギリス人分析力はさすがの一言に尽きる。
「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」という格言通り、次第次第に周囲と打ち解けていき素晴らしい人間関係を気付いていく彼の人の良さには感動すら覚えてしまう。
数学者とは思えないほどの文才も前作に引き続き冴えわたっている。まさに一級品のルポルタージュである。
個人的には5つ星でも差支えないのだが、前作があまりに出来が良かったため星1つ減らした。
おもしろさは請け合いますぜ。