【感想・ネタバレ】孤愁〈サウダーデ〉のレビュー

あらすじ

「父が精魂を傾けながら絶筆となってしまったこの作品を、必ずや私の手で完成し父の無念を晴らすつもりだ」――その公約を果たすためには、30余年の歳月が必要であった。本書は、「孤愁(サウダーデ)」を毎日新聞連載中に新田次郎氏が急逝、未完に終わった作品を息子である藤原正彦が書き継いで完成させた。ポルトガル人ヴェンセスラオ・デ・モラエスの評伝である。
「孤愁(サウダーデ)」とは、「愛するものの不在により引き起こされる、胸のうずくような思いや懐かしさ」のこと。軍人で、外交官で、商人で、詩人でもあったモラエスは、在日ポルトガル領事もつとめた。日本人のおよねと結婚、およね亡き後は妻の故郷である徳島に住み、その生涯を終えた。あまり知られていないが、モラエスの遺した詳細な日記や日本を題材にした作品が、日本の素晴らしさ、日本人の美徳を世界に知らしめ、「もう一人の小泉八雲」といわれている。
精緻で美しくも厳しい自然描写の新田次郎ファン、日本人の誇りと品格を重んじる藤原正彦ファン、双方の期待に応える一冊。

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Posted by ブクログ

ところどころで涙が出た。読んで良かった。
今でも思い出しただけで目が潤む。

主人公は外国人なのに、ところどころで自分が日本人であることを再認識させられる不思議。(私の場合は『思い出させてくれる』の方が近いかも)
それほどモラエスさんの日本にい対する知識や適応力はずば抜けていた。(よくよく考えたら明治・大正・昭和の日本を生きている!)

亜珍の存在。昔だったら彼女の暴走に腹を立てていただろうけど、出自や身の上を考えると、どちらの気持ちも分からんでもないんだよなー…
それでも睨むようにこちらを見る彼女の写真を見ると、やっぱりこの人苦手…に切り替わる笑

坂の上を目指す日本と、もはや小国への末路を辿るポルトガルの対比も見事だった。変わりゆく故郷との訣別を心に決めるも、ふとした時にそれを思い出してしまう。そのポルトガルもモラエスさんの死後ドイツに占領されることを知っているから、せめて生前だけでも綺麗な形で故郷のイメージを残して欲しかったとか考えてしまう。(読み手の辛いところは歴史を知ってしまっているところ…)

新田氏が命を賭し、バトンを繋いだ御子息の藤原氏がライフワークさながら年月をかけて調査・書き上げた超大作。
なかなか聞かない例だから文体とかどこかで違いが出てくるかと思っていたけど、二人の人間が書いたことを忘れるくらい何の違和感も持たずに読みふけった。

出版に至った際、藤原氏は新田氏の無念を晴らしたのと同時に父親へのサウダーデに溢れていたのかな、とも。氏へのやり切れないであろう想いを想像したら二重で涙が出てきた。

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2021年10月21日

Posted by ブクログ

近年まれにみる傑作。モラエスを心の奥底まで探るように描いており、とてもすばらしい本だ。モラエスについて勉強したくなった。

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2016年02月16日

Posted by ブクログ

時代に翻弄された一人のポルトガル人の話し。日本と日本人の妻を愛し、日本の土となった。『孤愁』という訳語がじんわりと心に染みる。物語全体に漂うメランコリーな雰囲気が好き。

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2024年10月09日

Posted by ブクログ

時代は明治から大正。
ポルトガル人で、元軍人、外交官のモラエス氏の日本での半生を描いた歴史小説。
彼は、母国ポルトガルに戻ることなく、徳島で終いの人生を迎える。

当時、日本に来た外国人の渡航記を読んでも気が付くことだが、この小説でもラモエス氏の客観的な外からの視点で、当時の日本の生活、文化、日本人に触れられており、とても興味深い。(多くがポジティブな捉え方)
日本人女性も妻、愛人を通じて褒め称えているのだが、その関係には悲劇が付きまとう。

実際の彼の書物を読むと、より直接的に当時の日本について知ることができるのかもしれない。

ちなみに、本著は、新田次郎が連載を開始したものがベースとなり、死去により途絶えていたものを、息子の藤原正彦が継いで完成させた大作。

徳島には、モラエスにまつわる観光地があるようなので、いつか巡ってみたい。
(眉山山上の博物館施設「モラエス館」や旧宅のあった徳島市伊賀町一帯)

なお、徳島は、第一次世界大戦で捕虜になったドイツ人が収容された場所としても有名であり、その交流も小説になっている。
今では年末の風物詩にもなっている第九は、この時から広がったらしい。

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2023年09月17日

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