これぞ青春小説ど真ん中! 青春のイタさも爽やかさも切なさも、とても上手く表現されています。
舞台となるのは北海道の全校生徒5人の小さな分校。そこに林という一人の新人教師が赴任してくるところから物語は始まります。
この教師がまあやる気が無い。彼女に振られた腹いせに司法試験を受けようとする彼は、生徒にテストを受けさせている間に、自分は司法試験の参考書を読む始末。林の歓迎会も仮病を使って帰ろうとします。しかしその仮病を村の久松医師は勘づきつつも、話を合わせます。
この二人の会話のシーンは良かったなあ。過去に囚われる林に対し、責めるでもなくゆっくりと促すように話す久松医師。人生を時間や一日で例える話が出てくるのですが、それが心に染み入る。読者である自分も、勇気づけられているような気もしてきます。
そして前を向き始めた林に対し、ある生徒から投げられる痛烈な言葉。その場面が読んでいて痛かった。まあ、全面的に林が悪いので、こっちが痛がる理由もないのだけど、なぜか林の心情の波長が自分にも伝わってきたような気がします。多分心理描写が上手いのだろうなあ。
そして語り手は中学校の生徒たちへ。学校唯一の三年生・弥生は、本校の生徒たちと一緒に修学旅行へ行くことになるのですが……。
これもとにかくイタい話。修学旅行に行かせるのは学校にとっては大事なのだろうけど、いきなり女子のグループに一人放り込むかね、などと思ってしまいます。
放り込まれた方の心情も痛いほど分かるし、そこも感情移入できるのだけど、それを受け入れたグループ側の言い分もとてもよく分かる。そこでまた、弥生の一種の傲慢さや、ふて腐れた心情が露わになり、これがまたイタい……。
続く章では、自分に霊能力があることに気づいた少女の顛末が語られるのですがこれもイタい……。同級生と彼女の会話のシーンは、自分は絶対に居合わせたくありません(苦笑)。見てるこっちが恥ずかしくなるというか、いたたまれなくなるというか……。
もちろん本人の惨めさはひとしおで、その心情も読んでいてイタい……。弥生とこのみなみという少女の章で、読んでいる自分の精神は大分削られたように思います。
そして、話は男子生徒たちへ移ります。
神童と呼ばれる学とその親友の憲太の話は一転して爽やか! 絵に描いたような友情物語というか、こんな話を恥ずかしげなく書けるのも、この年代の少年たちの物語だからだろうな、と思います。
そして嘘ばかりつくといわれている亮介という少年。
この少年の嘘は他の人物の視点の話でも度々出てきたのですが、その嘘に悪意がまったく感じられないのが印象に残っていました。その嘘の理由は、読んでいくうちに勘づくところはあったのですが、それでも改めて物語の転がし方が上手いなあ、と感じました。
北海道の分校という舞台を活かしての物語作り。それが亮介の嘘の意味をより際立たせます。
そして最終章で視点は再び林に。
それぞれの章の話をつなぎ、登場人物たちの成長を描いているのはもちろんなのですが、特にみなみの霊能力の伏線が素晴らしかった! これはズルいなあ。弥生もあの後どうなるのか、と思っていたのですが、あの経験をこういう強さに変えられるのか、と思わず感心。そしてある事情から分校を離れた亮介の手紙も、また心に刻まれる……。
読み終えて、自然と登場人物たちのその後を想像してしまう小説だと思います。その想像は一歩間違えると、悲しい展開にも転ぶものです。だからこそこの小説のタイトルは『願いながら、祈りながら』なのだと思います。
本を閉じた後、”願いながら、祈りながら”登場人物たちのその後を少しだけ想像する。そんな小説だったと思います。