乾ルカのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
これぞ青春小説ど真ん中! 青春のイタさも爽やかさも切なさも、とても上手く表現されています。
舞台となるのは北海道の全校生徒5人の小さな分校。そこに林という一人の新人教師が赴任してくるところから物語は始まります。
この教師がまあやる気が無い。彼女に振られた腹いせに司法試験を受けようとする彼は、生徒にテストを受けさせている間に、自分は司法試験の参考書を読む始末。林の歓迎会も仮病を使って帰ろうとします。しかしその仮病を村の久松医師は勘づきつつも、話を合わせます。
この二人の会話のシーンは良かったなあ。過去に囚われる林に対し、責めるでもなくゆっくりと促すように話す久松医師。人生を時間や一日で例え -
Posted by ブクログ
まさに真冬に吐く白い息みたいな小説。
生徒数5人の田舎の分校が舞台。
舞台が舞台だけに、登場人物は少ないものの、風景や場面、キャラクターの心情描写がみずみずしく、どこか切ない。
過激な表現はなくて、むしろ穏やかな時間の流れを感じさせるストーリーで、特に自分と重なるシュチュエーションはないのに、なぜか心に刺さるポイントが多い。鼻の奥がツンとなる、哀しいような、懐かしいような、なんとも言えない感情に襲われます。
思春期のリアルな心の機微を感じつつも、それぞれが己を語る場面では、いやいや、中2でこんな出来た子たちフィクションじゃないとありえない、というツッコミが頭の片隅から聞こえてしまう自分の心 -
Posted by ブクログ
ネタバレ5歳の冬に帰ってこない母に捨てられ、施設で育った慶吾。
当時母が夢中になっていた囲碁をやるようになり、高校の囲碁部で、香田と出会った。
高卒後、信金で働きながら夜間の大学に通い、彼女もできた。
それなのに、体調を崩して大学も中退をせざるを得なくなり、彼女にも愛想をつかれてしまった。
母に捨てられたという気持ちから逃れられないままの自分。
香田と喧嘩して、自分の殻をわずかにでも破ることができた慶吾は
自分を捨てた母が当時何をしていたのかの真相と向き合うことにした。
一人になりたくて、一人で生きてきたつもりだったけど
自分の味方になってくれる人は何人もいた。
一見物わかりの良さそうで実 -
Posted by ブクログ
北海道とおぼしき大学の学生部、学生にアルバイトの斡旋をおこなう奨学係。求人情報に期待してやってきた学生もいれば、ふらりと立ち寄っただけの学生も。それに応対する女性職員は整った顔立ちながら無表情で不気味。必要最小限のことしか話さない。けれど、彼女に「あなたは行くべき。断らないで」と言われると、なぜか誰もが引き受けてしまう。
こうしてアルバイトをすることになった5人の学生を描く連作短編集。ただ1人、彼女から奨められなかったのに職を求めた学生の章のみ、異色のホラー仕立て。それ以外はファンタジー風もありリアル風もあり。いくつかの章で涙が溢れました。
万人受けはしないかもしれないけれど、人との繋がり