乾ルカのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
「みんなで一斉に書きませんか?」
伊坂幸太郎さんのひと言から始まった螺旋プロジェクトの第五弾。
螺旋プロジェクトとは
◇「山族」と「海族」の対立を描く
◇共通のキャラクターを登場させる
◇共通シーンや象徴モチーフを出す
という、共通ルールを決めて8人の作家さんにより書かれた原始から未来までの物語。
山族、海族という独特で何だか難しいテーマを、それぞれの作家さんがどういう風に物語に落とし込んでいくのかが見どころ。こういうの楽しい〜♬
螺旋プロジェクトの作品を読むのはこれで3作目だけど、読んだ3作の中では1番このテーマが自然に馴染んで描かれていた気がした。
戦争により疎開してき -
Posted by ブクログ
中高生におすすめの一冊、発見です!
川嶋有人。中2で心に傷を負い不登校に。医師である叔父の勧めで、東京から北海道の離島の高校へ。
そこは、全校生徒5人、朝刊は昼届き、コンビニなし、Wi-Fiなし、まるで流刑地・奈落の底(?)のように思えるのでした。
けれども島の人たちは、まるごと家族みたいで、叔父の診療所はTVドラマ『Dr.コトー診療所』の一場面を観ているような気になります。
有人は、誰彼なく話しかけられ、島内の情報伝達力の速さに逃げ場のなさを感じますが、それでも、島の人や自然と関わる中で、認められる経験を通して緊張感がほぐれ、心の中に熱が宿り、少しずつ変容していき、ここは自分の -
Posted by ブクログ
『水底のスピカ』もそうだったけれど、これも友達との距離感をテーマにしたストーリー。近しい人が苦しんでいる時に、リスクを負ってどこまで相手のプライベートな領域に踏み込んでいくかが描かれている。物語としては『銀の匙』のように、都会の学校での生活で失敗を経験した子が、田舎の学校で新しい自分を見つけていくというような話になっている。だけれど、『銀の匙』において主人公が入っていく農業高校は濃密な生き物や自然との関りだけれど、ここでは人口の密集した都会での人々の距離感と、過疎の島での濃密な人と人との関りという対比がより重視されている。
ラストの叔父との葛藤と乗り越えは、例によって物語をしめるための、ドラマ -
Posted by ブクログ
ネタバレこちらも職場の方から借りた本。
短編6作が収録されている。
どの作品も「死」があたりに漂い、時空を超えた過去・現在・未来が交差する、せつない物語。
「真夜中の動物園」
→心にしみるいい話だな~と思いながら読んでいると、ラストでこれからが予想できて悲しいことこの上なし。
「翔ける少年」
→もうこれは、涙なしには読めない。実際に起こった災害が示唆されていて、せつない、悲しい。でも温かい。
「あの日にかえりたい」
→私個人的には、あまりピンとこなかったお話。でも、表題。ささる人にはささるだろうな~。
「へび玉」
→何が起こったのか気になって気になって、先へ先へと気が急いでしまうお話。こんな -
Posted by ブクログ
北海道の過疎の村にある生田羽中学校生田羽分校に、社会科教諭として着任した林武史。
生田羽村は都会からの誘致の甲斐もなく、村民の増える兆しもない。
分校の生徒数はたったの5人で、一年後には本校に統合されるという。
失恋の痛手を引きずりながらこの土地にやってきて、前時代的な風情の分校を目にして今すぐにでも辞めたいと思う、やる気のない林のことを、子どもたちはすべて見抜いていた。
学年でひとりきりで過ごしてきた三年の弥生。
あとの4人はすべて一年で、村長の孫の憲太、『神童』と呼ばれている学、自称霊感少女のみなみ、噓をつく癖のある亮介。
乾ルカさんの作品は、決して温かい言葉だけで埋め尽くされているわ -
Posted by ブクログ
5編からなる連作短編集。ホラー要素の強いファンタジー作品。
各編の主人公は何らかの問題を抱えているH大学の学生で、奨学係の女性職員・悠木に斡旋されたアルバイトによって人生に光明が差すというストーリー。
* * * * *
物語を動かすのはキーパーソンとなる悠木の眼力(能力?)。それは主に2種類あります。
1つは奨学係を訪れる学生のプロフィールや心に宿る陰を見抜く眼。
もう1つはその陰を取り除く仕事を選定できる眼です。これこそ悠木の魅力だけれど、それだけでなく、その風貌から言動まですばらしく魅力的なのです。ナイス設定だと言えます。
彼女の秘密が各話で小出しになってい -
Posted by ブクログ
家賃:月一万三千円 間取り:2K 敷金・礼金:なし 管理費:なしの木造建築おんぼろアパート「てふてふ荘」
「このアパートには各室にそれぞれ地縛霊がいるんです」とさらりと言ってのける大家。
明らかに常軌を逸した環境と住人たちだが、幽霊たちと関わっていくうちに、重く閉ざされた心を解きほぐしてくれるような、切なくてほっこりするような物語だった。
ここの住人たち(幽霊を含めて)がみんな人情味溢れていて、後味も決して悪くない。
成仏されない幽霊たちが、もしかして私の後ろにもいるのだろうか。
不思議な世界を堪能できたし、それと同時に、人と触れ合うことの大切さにも気づかされた。
「てふてふ荘」と大