乾ルカのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
母に捨てられ施設で育った慶吾の孤独。ただ一人の友人香田の強引な明るさにも、なかなか心を開いていくことができない。もどかしく、切なく、ジリジリと心を煎られるような気持ちで、一気に読み終えてしまった。
「本の雑誌」で北上次郎さんが取り上げていた場面は、本当に素晴らしい。慶吾が、自分が施設育ちであることを香田に告げて、その反応を待ち受けるところだ。傷つくまいと心を固い鎧で覆っている慶吾が不憫で、また、あっけなくヒョイと壁を越えてくる香田がほんとにいいヤツで、何度も読み返したくなる。
そうなんだけど…。諸手を挙げて良かったーと言う気持ちにならないのはどうしてだろう。読み終わってしばし考え込んでしま -
Posted by ブクログ
冬の日に、母親に見捨てられた少年。彼は、施設で暖かく見守られて育ちながらも、そのわだかまりの記憶を胸中に抱え続けていた。やがて彼は信頼できる友達と出会い、ゆっくりと一歩ずつ前に踏み出していき、過去の自分、そして母親の真実と向き合う覚悟を抱いていく、とう物語。
囲碁を話のキーとしてはいても、物語の重心は息子と母親の間の葛藤。
一人称で訥々と繰り返される主人公である彼の独白は、きりきりと痛ましいのだけれど、少しばかり、重すぎるように感じました。敵が周りにいるのではなく、自分が高い壁を作っているというのは、彼の境遇を思えば理解はできるのですが…。
エピソードほとんどが「壁を作る」「自覚する」「内省す -
Posted by ブクログ
2014.7.15.三月半ば過ぎの寒い日、沖田慶吾の母親は五つばかりのパンを置いて出て行ったきり帰る日を一日過ぎても戻って来なかった。寒さとひもじさに我慢ならず、慶吾は寒い日によく撫でに行っていた犬の小屋にもぐりこみ、犬の餌を食べ老犬の暖かい毛の中で一晩を過ごした。翌日、その家の人に見つかり、児童相談所に連れていかれ、そのまま施設で育てられることになった。施設で18まで育ち、優秀なことから地元の信金に採用された慶吾だが、ずっと孤独な境遇のままだった。一人の風変わりな友人香田をのぞいては…。母はなぜ、自分を捨てたのか、いろいろなことを乗り越えるうちに、その疑問に真正面から向き合おうとする慶吾の成