北海道立白麗高校2年8組。
校内カースト、マウンティング女子が幅を利かせる世界に投じられた一石 ―― 東京からの転校生 ―― 汐谷美令。
和奈、美令、更紗、そして萌芽、清太の物語が和奈、更紗、美令、萌芽、それぞれの一人称で語られてゆく。
「人の秘密は借金みたいなものだよ。連帯保証人になる覚
...続きを読む悟はある?」(181頁)
「海の底に沈んで、上を見上げているの。そうやって、水の上にいる美令と更紗を見ている。二人とも、夏月も、他の楽しそうだったり満ち足りてそうだったりする人たちも、みんな私と違う眩しいところにいる。ずっとそういう感じなんだ。二人と出会う前から、今もそう。私の目に見えるのはそういう感じ。そんな世界にいるんだ」
「見てきたよ」
「は?」
「すごく綺麗な世界にいるんだね」
美令は手で水面を払って、和奈と更紗に飛ばしてきた。(350頁)
「私も見たいな。ねえ、いっせーのーで!」
言い終わるや、更紗は先ほどの美令と同じことをした。水音。ほとんど同時に、美令もまたやった。水しぶきが雨のように落ちる。和奈は一瞬迷い遅れた。
でも一瞬だけだ。二人はまだ水面下にいる。
和奈はもう何も考えなかった。
水面を叩いた背中は少し痛かった。息を堪えて浮力に逆らい、水底の砂地に沈む。海の中で髪の毛が揺れるのを感じる。水は温かで、低く柔らかに歌うような音が聞こえた。
目を開ける。水の上に空が見える。青が揺蕩っている。息を吐いた。
吐いた息の気泡が、光の膜に包まれて立ち上り、水面の上の空に溶けていく。
美令の言ったとおりだ。
ここは綺麗だ。 (351頁)
章立ては以下の通り。
美令:3頁/美令:49頁/美令:181頁(3章)
和奈:10頁/和奈:25頁/和奈:72頁/ 和奈:116頁/和奈:155頁/和奈:185頁/和奈:197頁/和奈:222頁/和奈:235頁/和奈:258頁/和奈:302頁(11章)
更紗:18頁/更紗:88頁/更紗:133頁/更紗:247頁(4章)
萌芽:52頁/萌芽:99頁/萌芽:207頁(3章)
九月六日:275頁
海へ:323頁
(内容紹介)
その転校生は、クラス全員を圧倒し、敗北させた――
夏休み明け、北海道立白麗高校2年8組に、東京からひとりの転校生がやって来た。汐谷美令――容姿端麗にして頭脳明晰。
完璧な彼女は学校中から注目を集めるが、些細な事からクラスで浮いた存在になってしまう……。
学校祭準備で美令と友人となった、クラスで孤高を演じる松島和奈。
そして美令が孤立する原因を作ってしまった、クラスのカースト上位である城之内更紗もまた、美令、和奈と深く関わってゆく。
それぞれ秘密を抱える三人が向かう先に待つものは、そして美令の「私、神様の見張り番をしているの」という言葉の意味とは……。
今、彼女たちの人生で、もっとも濃密な一年が始まった――。
誰もがあの時を思い出す、青春群像劇の傑作!
最高に美しいラストシーンを、ぜひご堪能ください!!
「 今、私がひとりではないことが、奇跡なのだ――」