金子勝のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
いわゆる裏金事件だけでなく、世襲議員と選挙の問題、政官財のトライアングル、防衛費や電力、マイナンバーカードの問題まで取り上げており、読みごたえがあった。
小選挙区制度が導入された1996年総選挙以降の総理大臣は、12人のうち9人が世襲議員。 2024年現在の自民党の衆議院議員258名のうち109人(45%)が世襲議員。世襲議員は、金でつながる地域の利益共同体を作ってしまえば、同じ選挙区で競い合う必要がないため、切磋琢磨して身につける政策形成能力も答弁能力も必要なくなっていく。小選挙区制度の下では、裏金を含めた政治資金を持って地方議員を囲い込む利益共同体を作り、世襲政治家を軸に政府の利益配分によって地域政治の独占を図っている。
中国新聞の報道によれば、官房長官には毎月1億円の官房機密費が入ってきて、領収書なしで使える。そのうち1000万円は首相や自民党国対委員長に渡すのが習わしらしい。
日本の司法制度は、起訴するか否かについて検察がさじ加減で決めることができる起訴便宜主義をとっている。政権交代がなく、長期政権が続いているために、検察は自公政権を忖度しながら、自らの権限を拡大するように動いてきた。
第二次安倍政権の2013年以降、天下りが増えていった。 2014年には経団連が政治献金を復活させた。自公政権が行っている経済政策は、多額の企業献金を出した企業に向けて、自民党がその利益を優先した経済政策を実行し、天下り官僚がそれを媒介し、アベノミクスが支える仕組みが出来上がっていった。著者は、これをメディア抑制体制とともに「2015年体制」と呼ぶ。
大規模な財政出動と金融緩和で円安インフレがもたらされたことによって、経団連企業は膨大な利益を上げることができた。防衛費倍増や原発の運転期間の60年超への延長も、傾いた重化学工業の救済が目的。マイナンバーカードを推進する狙いは、アメリカ巨大IT企業に後れを取る日本のIT企業への救済でもある。
1960年代から70年代の高度成長期の再現を望む東京オリンピック、大阪万博、リニア新幹線といった路線は、過去の栄光にしがみついたものである。世界で進歩が著しい情報通信産業、ゲノム創薬と医薬品ヘルスケア産業、再生可能エネルギーと蓄電池、EVと自動運転などの先端産業分野では、決定的に遅れをとってしまった。
新型コロナウイルスの流行という惨事に便乗して、国会のチェックが効かない予備費を2020年から毎年およそ10兆円も組んできた。 そこから国会のチェックが効かない隠し金である「基金」を設けて余らせて、防衛費の倍増政策を賄おうとした。
※防衛費は2027年度までに年額約11兆円(GDP比2%)へ倍増することを表明し、2023年以降に急拡大した。財源として、税収増、歳出削減、決算剰余金、特別会計の繰入れなどを組み合わせると政府は説明した。
福島第一原発事故後の発送電分離改革は法的分離にとどまっている。東京電力は持株会社を作って、発電会社と送配電会社を同じグループ企業として一体化させており、関西電力は、発電会社が送配電会社を子会社化するといったレベルに留まっている。この10年間で、太陽光発電のコストは1/10、風力発電のコストは1/5に下落しているが、政治献金と天下りによって経産省は太陽光発電を衰退させていった。電力の安定供給という古い発想に基づいて、日本独自の「容量市場」を創設し、再エネの新電力にも大手電力会社の原発や火力の建設・維持管理負担まで負わせている。
※大手電力会社は既存の発電・送電インフラ(火力・原発・地域独占送電網)によって構築された利益構造を守るため、再生可能エネルギー(特に太陽光・風力)の受け入れに消極的。電力業界は経産省との関係が深く、天下りや業界団体を通じた影響力が大きい。多くの政治家も電力労組や電力会社とつながっており、政官業の三位一体構造が再エネ推進を阻んでいる。容量市場では、実態として大手電力の老朽火力や原発の維持費が新電力や消費者に転嫁されている。2020年の初回の容量市場では、1兆円以上の支払いが消費者・新電力に課された。
マイナンバー関連事業は10年間で少なくとも3000億円近く発注されているが、大企業8社が独占的に契約している。自民党政権復帰以降の9年分の政治資金収支報告書によると、NTTデータ、凸版印刷、日本電気、日立製作所、富士通の5社で合計7億円を自民党の政治資金団体に献金している。その中心にとなるJ-LIS(地方公共団体情報システム機構)には、総務省官僚が天下っている。 -
Posted by ブクログ
カタストロフは一般的には、崩壊と考えられているが、実は一つの周期であり、局所的な変曲点だそうです。
だいたい50年という周期で経済や生命科学が新しい枠組みに切り替わっていることが書かれていました。
この本は2022年12月に発行された本で、コロナウイルスの感染拡大の経緯が書かれていましたが、まだ2、3年しか経っていないのに、いろいろなことを忘れてしまっているな~と反省しました。
安定的な構造がカタストロフという変曲点を経て、次の安定的な構造になるためには、自立した地域からの再生エネルギーと食の供給を基盤とする再生、教育と医療の確立が必要だということでした。 -
Posted by ブクログ
要するに、世襲議員が偏差値エリート官僚と、社内抗争だけで生き残った
大企業のサラリーマン経営者とつるんで、国税を未来のために使わず、
既得権益維持のために無駄に使っている、ってことだ。
文化放送大竹まことのゴールデンラジオで毎週金曜に叫んでいる金子勝節が、
この新書で体系的に示されている。
世襲議員は相続税なしで親の地盤看板を受け継ぎ、家業を守ることだけ考え、
偏差値エリート官僚は天下りで数年に一度高額退職金を得、
大企業サラリーマン社長は一般サラリーマンの100倍の報酬を得る。日産のように。
そして日本は沈む。ってこと。
悲しくなるね。
こりゃ陰謀論じゃないよ。
だから心ある官僚がどんどんやめてるんだよ
第1章 「2015年体制」というディストピア
第1節 日本政治の腐った根っこ
第2節 「2015年体制」とは何か
第3節 世襲という病
第2章 自浄能力なき隠蔽国家――腐敗が止まらない仕組み
第1節 検 察の権力チェック機能も自民党の自浄能力も期待できない
第2節 国会審議で明らかになったことは何か
第3節 自民党内のアリバイ的処分と法改正
第4節 政治資金規正法改正の自民党案の欺瞞性
第3章 裏金国家――国が腐るとはどういうことか
第1節 「惨事」便乗型資本主義
第2節 「国家的」な裏金作り
第3節 円安インフレと防衛費膨張の悪循環
第4節 投機マネーに狙われる国
第5節 ずるずるとした滅び
第4章 裏金国家の経済政策――仲間内資本主義日本
第1節 プーチン型権力を目指す
第2節 リフレ派とMMTが日本経済を滅ぼす
第3節 政府の産業政策が衰退を加速させる
第5章 ディストピアから脱する道――裏金を提供する者のためでなく困っている者のための政治へ
第1節 政権交代が必須
第2節 円安インフレと格差拡大を防ぐ
第3節 防衛費膨張を止めてイノベーティブ福祉国家へ
第4節 地方衰退を食い止める
第5節 いかにして少子化を食い止めるか -
Posted by ブクログ
ポッドキャストでよく聴いていた金子節は辛辣な内容でも語り口が心地よく、同感同感と何度も頷いていた。
本書は経済学者としての見識に溢れ、我が国の現状分析、裏金と国の行く末との関係、さらには国自体が裏金を作り出す「裏金国家」と堕していることへの鋭い追及も鮮やかである。
先など意識せず今だけ儲かればいいという経団連等の害悪は裁かれるべきだし、先を見せないことに注力する政、官、マスメディアもひっくり返す必要がある。
衆院選で自民は大きく衰退したが、案の定ここぞとばかりすり寄る輩が国民の願いを台無しにしようとしている今、金子勝の「令和船中八策」に学ぶべきだと思えた。
-
Posted by ブクログ
(2014/12/17)
大竹まことゴールデンラジオ大竹交遊録金曜日担当の金子勝慶大経済学部教授の本。
歯に衣着せぬ毒舌ぶりから期待して手に取ったのだけれど、、、
なんだかよくわからなかった。
ピンとこなかった。
頭に入らなかった。
農業は関心度の高いテーマだし、読んでわからないことはないと思うのだけれど、
なぜかひっかかるものがなかった。
なんでだろう。
小作農の農地面積は機械化しない前提ではちょうどいい大きさ。
アメリカの大規模集約じゃ無理。
百姓とはいろんなことをして食べる人、という意味。兼業農家こそ理想。
TPPが入ったら壊滅する。
小規模農家にエネルギーを作らせよう
原発問題も解決。。
そうか、ちょっと書いてみてわかったけど、
論理の飛躍について行けなかったのだな。
教授を前にして言うのは失礼ながら、ロジカルに感じなかったのだ。
だからピンとこなかった。
わからんものはわからん。
ごめんね金子さん。
でもね。
私はTPPの進め方は反対だったけど、これだけ締結が遅れるってことは、
アメリカのいいなりにはなってないってことだからまあよしとして、
農業のある程度の自由化には賛成なんです。
農業保護をうたいながら、農業従事者の平均年齢が60を超えるってことは、
全く魅力のない職業、ってことでしょう。
それを株式会社もいれない、自由化もしない、ってのは、
ある特定団体のエゴに過ぎないと思うのですよ。
とても日本の食を守ろうと思って言っているわけではないと。
日本の農村の美しさを守ろうとしているわけでもないと。
守りたければ後継者を作る努力をするはず。
利権と思うしかない。
そう、金子教授と思いは同じ。
儲かる農業にしないといけない。
美味しいものは地方にこそある。
日本酒がおいしいのも米と水がおいしいから。
このままでは守れない。
美味しいものにお金を出して、
作り手に儲けてもらって、
このシステムを維持していかなくてはいけない。
そのおいしいものはTPPだろうがなんだろうが負けないはず。
「農業を守る」は無理筋だと声を大にして言いたい。
第1章 食と農が崩壊する時(食料自給率とは
食料自給率低下はなぜ起きたのか ほか)
第2章 新しい兼業スタイルへ(日本の兼業農家の歴史的背景
農業労働の季節性 ほか)
第3章 日本の再生可能エネルギーと農村・農業(第二次安倍政権と原発依存への回帰
再生可能エネルギーの消極的な目標 ほか)
第4章 農村・エネルギー転換と課題(地域主導のエネルギー転換に
地域におけるエネルギーの自立 ほか)
第5章 「地域分散・ネットワーク型」社会に向かって(新しい産業構造と社会システムへ
食と農の分野における「地域分散・ネットワーク型」システム ほか) -
Posted by ブクログ
現代カタストロフ論
経済と生命の周期を解き明かす
岩波新書 新赤版 1953
著:金子 勝
著:児玉 龍彦
カタストロフとは、安定的な状況が突然破局する現象を説明するための数学モデルだとおもっていました。
でも、ちょっと、主旨がちがっていました。
ここでは、コロナの変種、経済危機がくりかえし発生することを説明するのに使われています。
あるいは、経済が周期的に変化していく内容を、カタストロフをつかって説明しようとしている書です。
内容はこうです
①生物も繰り返し変わっていくが、ある限界までは、「安定的な構造」を保ち、変化は予想される範囲に収まる
②しかし、不安定な循環が重なり、「安定的な構造」が壊れ、分岐点を迎え、それを経て、次の「安定的な構造」を生み出す
③さらに、初期値、または、周辺条件が限界を超えて変化すると、カタストロフと呼ばれる予測と異なる、大きな構造的変化を引き起こす
一般的にカタストロフとは、崩壊、と考えらえているが、実は一つの周期であり、局所的な変曲点なのである
⇒ 毎日は、単なる日常の連続ではない
⇒ 漸進的に変化していくプロセスでもない
⇒ 歴史は、断絶する非線形的変化をもたらす
⇒ 変化が周期的に繰り返されるうちに、予想もしない、大変化が生じる、それがカタストロフだ
気になったのは次です
・社会のパラダイムシフトは、50年周期で発生する。ヨーゼフ・シュンペータのコンドラチェフ循環をいう
経済の4つの循環
40か月 在庫循環 キチン循環
10年 通常の景気循環、設備投資の周期 ジュグラー循環
20年 建築循環 クズネッツ循環
50年 コンドラチェフ循環
・50年周期の政治諸制度の変化
1873 年大不況 パスク・ブリタニカの出現
1914 第一世界大戦 大衆民主主義の台頭、ロシア革命
1960 ベトナム戦争 金準備の現法、貿易赤字により、パクス・アメリカーナの転換
2001 同時多発テロ
・なぜ、景気循環はうまくいかないのか
①同じ周期を繰り返すように見えて、変化しながら周期を繰り返す
②ある種類の周期は繰り返しながら、同時に、いくつもの異なる周期が重なり合う時が生じる
③周期の過程で生み出されるカタストロフの中には、周期性自体の自壊を引き起こすケースがある
・日本経済の弱体化
1986年日米半導体協定により、コンピュータなどの先端技術の衰退がはじまる
2008年リーマンショック
2011年福島第一原発
2012年財政赤字下での金融緩和
いまや国債の累積額は1000兆円をこえ、わずかな金利上昇でも国債費が大きく膨張するに至る
・コロナ禍の成果
①19世紀は血清を生み出した
②20世紀前半に、有機化合物
③20世紀後半に、たんぱく質製剤によるバイオ医薬品
④21世紀前半に、RNA医薬品の登場 ⇐ コロナによる
目次
はじめに――「現代カタストロフ論」とは?
第一章 カタストロフはどのように起こるか
1 新しい時代が始まる
2 繰り返す変異株の波――リアルタイムの進化の観測
3 五〇年周期で起きる政治経済の大転換
4 生命科学の五〇年周期のパラダイムシフト
5 イノベーションと創造的破壊
6 五〇年周期の政治諸制度の変化
7 新しい政治的分断と格差・貧困の拡大
8 人口減少と社会保障費削減の悪循環
第二章 なぜカタストロフに行きつくのか?――周期のメカニズム
1 繰り返しながら変わっていくことの科学
2 なぜ変異株が周期的に襲ってくるのか?
3 周期的カタストロフをデータから解き明かす
4 重なり合うカタストロフ
5 経済を周期で見る景気循環論
6 従来の景気循環論の問題点
7 自壊に向かう循環
8 カタストロフの底へ向かう循環――戦争とパンデミックの時代
第三章 カタストロフから新しい世界を創る
1 グローバルな感染症と向き合う
2 少子高齢化に対応した新しい産業革命
3 先端産業の衰退を克服する
4 地域からエネルギーと情報と生活のフィードバックを
あとがき
ISBN:9784004319535
出版社:岩波書店
判型:新書
ページ数:238ページ
定価:860円(本体)ISBN:9784004319535
出版社:岩波書店
判型:新書
ページ数:238ページ
定価:860円(本体)
発行年月日:2022年12月
発売日:2022年12月22日
発売日:2022年12月20日 -
Posted by ブクログ
現在の日本の状況をどう捉えたらよいのか、経済学者の視点から幅広く批評している。もはや日本は発展途上国になりつつあるという見方はかなり辛口ではあるが、そのくらい“人を救えない国”に成り下がってしまっているのは確かだと思う。未来の世代のために、よりよい社会にするために今を犠牲にしても教育にお金をかける精神は失われてしまった。今の問題を何とかすることにきゅうきゅうとして、その場しのぎで、しっかりとした将来のビジョンなしにつきすすむ。社会システムのいたるところでどうにもならなくなっている閉塞感。従来の発想を根本から変えて社会を大胆に変革していくときだ。しかし、黒船到来のようなインパクトがないと変われないのは日本社会の習性か。いずれこのままだと、社会を揺るがすとんでもないことが起きるのは確かだ。だが、悲観的になることはない、スイッチが入れば日本は強い。そういう国だと本を読みながら思った。
-
Posted by ブクログ
最近受験生の我が息子は、少し遠くの塾に
日曜日の夜間に通っています。(そんなに必死に
受験勉強しているわけではないのですが)
そこで、夫婦も揃って息子を送り届けて
塾が終わるまで二人でスタバに行って2時間
くらい待っています。私はじっくり本を読める時間
なので割と気に入っています。そこで読み終わった
今回のこの本。
川崎の桐光学園高校に様々な
論客(日本のトップクラス)が特別の授業をする
らしいのですがその授業の内容が本になっている内容。
こんな高校生はとても幸せだと思いますが
多分自分が高校生だったときはあまり興味を
覚えなかっただろうなあと思います。
でも、それでもそういうことを言っていた人が
いたなあとかすかに覚えていたり、そのうちの誰かの
話す内容に衝撃を受けたりすることが少ない確立でも
あったら、それって素晴らしいことなのではないかと
思います。
内容的には、とても知的な好奇心や問題提起がなされて
いてとても面白い内容です。おっさんがよんでも
とても勉強になり、感動し、納得し、面白いと
思える本です。
ぜひともいろいろな人に読んでほしいと思います。
やっぱりとりわけ若い人に読んでほしいと思います。
高校生でなくても、大学生や社会人でも。 -
Posted by ブクログ
第一章:バブルの経済学
第二章:構造改革の経済学
第三章:格差とインセンティブの経済学
かなり読みやすかった。
一貫して新古典派経済学への批判。
(竹中、小泉さんへの批判は少しうけた)
サブプライムについて述べている本かと思いきや、
アメリカを代表とする現代資本主義経済の限界について述べられていた。
バブル以降日本が模倣してきたアメリカの金融体制。しかし、実際はバブルが崩壊すると金融緩和、また新しいバブルを待って・・の繰り返しでごまかしてた。挙句、世界中にリスク分散させ失敗し、不況は全世界に波及してしまった。アメリカ型の金融政策を行ってきた日本の危うさを感じさせてくれました。
でも、個人的には、第三章が興味深かった。
「大きな政府」か「小さな政府」か。
→縦軸にGDP, 横軸に政府規模をとった場合、ここに相関関係は存在しないらしい。
小さな政府の成功例…アメリカ
大きな政府の成功例…北欧
では、これから日本政府はどうすればいいのか。現在注目されているのは、北欧の社会政策(Flexicurity)かと。ただ、これをすぐさま日本にそのまま導入出来るかというと難しいところ。現状の税制などとかなりのギャップがあるかと。ただ、アメリカの模倣で失敗した日本。さまざまな社会問題が浮き彫りになっている日本。現状の政策を維持し続けていてはいつか崩壊することは氏も述べている通り。
感想としては、現状経済に対し政府はどんな政策をとっていくべきなのかについてもっと言及してほしかった。
余談ですが、ロールズの『正義論』を読んでみたくなりました。
てか、やっぱ金融苦手。