金子勝のレビュー一覧
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平成時代に日本経済はほとんど成長していない。むしろ、衰退の道を歩んでいると言って良い状態である。その理由を筆者はその間の政策にもとめている。結果として、現在の日本経済の状態は筆者の言葉を借りれば、下記の六重苦の状態となっている。
①産業衰退の加速
②貿易赤字の定着
③実質賃金と実質家計支出の継続的低下
④少子高齢化と地域衰退
⑤銀行経営の圧迫と金融リスク
⑥中央銀行の機能麻痺
私の感覚で言えば、この中では、①の「産業衰退の加速」、すなわち、日本の産業競争力の弱体化(要するに競争に負けているということ。例えば、電機産業、特に昔の家電メーカーは往時の面影は全くない。三洋電機、シャープ、東芝等)は -
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バブル崩壊以降、すなわち、平成以降の日本経済の歴史について、まとめて何冊か本を読もうとしている。これは、その2冊目。
筆者は経済学者であり、平成以降、特に安倍・菅政権の時代の経済政策、そしてその結果の現状の日本経済について、論理的・実証的に論じている。多くのことを論じているが、現在の日本経済の問題点・悪循環の原因を3つに整理している。
ひとつは、異次元の金融緩和と呼ばれるものが、そろそろ限界にきていること。特にコロナ禍以降の財政規律のなさは、コロナバブルを生んでおり、そろそろ、そのバブルの崩壊も近いと主張している。また、日本企業が不景気の中での収益確保策として、コスト削減策を選んだために、賃金 -
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金子勝という人はイデオロギーの色が付き過ぎて素直に信じられなくなっているが、原発を始めとする過去の主張を見ると、本質を掴まえる事においては信頼できそうだ。であるからこそ経済学者は政策の実現に責任があると思うのだが、どこか他人事だ。そんなに先が見えるのなら自分が責任を引き受けて行動すべきであって、その覚悟がないなら安易に為政者を無責任などと糾弾すべきでない、と思う。
仮に本書の見方が大方正しいとして、何が諸悪の根源かと言えば縁故資本主義であるように感じた。安倍、竹中のヨコシマコンビは言うに及ばず、ほとんど“家業化”した世襲国会議員こそがネポティズムの象徴であり、彼らのお仲間が楽して特権を維持する -
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すごく示唆に富む本
「複雑系」との違い・・・システム全体のモデル化を目的にする複雑系と異なり、調節制御の仕組みや要素間の関係そのものが研究対象
ノイズとシグナルの峻別・・・重要な差異か、無視してよい誤差か
「一創造百盗作」−大野乾の遺伝子重複仮説
ゲーム理論に基づく情報の経済学の限界−年金制度や失業保険制度で論理破綻
日本企業の「現場監督者(フォアマン)」は、職場の代表であると同時に経営側(制御系)の末端機構である。
└2つの調節制御の機能が一人の人間に重複し、その機能を果たせないようになっている。
交渉モデルでは、相反する利害を持つ者同士が交渉しないと均衡には達しないのに、「現場監 -
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朝日新聞『Be』に連載中の人生相談「悩みのるつぼ」に寄せられた声に、経済学者の金子勝氏が応えたものを10のテーマに分けてまとめた一冊です。
少し前に金子さんの講演を聞く機会があったのですが、日本経済や政治状況へのするどい指摘に大きな拍手を送ったところだったので、読む前には「どんな展開になるのだろう」と楽しみでした。経済学者としてこの時代を読み解きながら、その中で暮らす人間への深い洞察と信頼をベースに、悩みに対して縦横に語られていて「すごいな」と率直に思いました。
回答の中では小説や落語の一説などが使われていて、相談者や読者のための本のガイドブックとして活用できると思います。
<「悩みの時 -
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ネタバレ読書途中。20人の講師による。一人90分の講演会の収録である。一気に読めるはずもなく、じわじわと読んだ。
姜尚中の講演のなかで、夏目漱石が奥さんをなぐっていたエピソードがあった。ノイローゼであったらしい。私は夏目漱石になれないけど、夏目漱石よりましだなと少し思った。考えかたとしてまちがっているのかな?どんな偉い人もほんとうにいろいろな苦しみにもがいていきているのだと思い直した。
20名全て役に立つわけでないが、中には、気に入る人もいるかもしれないとのことだろうか?3.11後の話など考えさせられたり。光触媒の話は興味を覚えた。文学、美術に関心を持った。宇宙論や素粒子の話は、わからないので、もうい -
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専業農家ではなく、兼業農家を目指そう。それも、エネルギー業と兼業する「エネルギー兼業農家」となることで、利益を出そうという主張の本。
工場の期間工など、お金が地域外に流れるものや、農業との相乗効果が期待できない兼業ではなく、エネルギー業と兼業することで、お金を地域で循環できるようになり、地域コミュニティの活性化にもつながり、農業にも相乗効果が期待できるようになる。
確かに、農業という季節や年により不安定な収入に、エネルギー収入という安定的なベース収入を兼ねることで、ポートフォリオが格段によくなる。
ただし、本書でも以下のように触れているように、誰がエネルギー兼業化を推し進めるのかという問題 -
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経済理論・政治理論が、理論の出発点にどのような人間像を置いているのか。現実離れした「強い個人」(高い判断力、高いモラル、等々)を仮定して理論を組み立てれば、どんな理論でもいずれ現実との間に齟齬を来たし、生身の人間に無理を強いることになりかねない。そしてそのような理論には当然、持続可能性がない。著者は、この観点に絞って代表的な経済・政治理論や実際の経済政策の検討を進めていく。経済学を学んだことのない人のために書いたとのことだが、やはり経済学を学んだことのないものにはややつらい部分も多い。ただ、著者の論点がはっきりしているので読み進めることはできるし、すこし頭の整理ができたような気がする。1999