新田次郎のレビュー一覧
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ネタバレ明治時代、冬期富士山頂での観測を目指した夫婦の物語。
特に妻に焦点が当たる。封建的な考え方が当たり前の時代に強い意志を持って夫と共に観測に挑んだ感動的な話であり、山頂で自然にボコボコにされた箇所がなければ朝の連続テレビ小説に採用されていそうだ。
明治時代を昭和の時代から見た物語と言うことで古臭さはどうしようもないが、それだけに時代の雰囲気であったり価値観であったりを垣間見ることのできる物語だったと思う。
ただ、雪山に挑む装備が貧弱すぎて、南極で散ったロバート・スコットの話を読んでいるかのようだった。明治時代の、海外に追いつけ追い越せの流れの中ではこのような物語も必然だったのか。命の危険 -
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強力伝
驚いたことに、実際に大理石の風景指示盤を白馬岳山頂に運んだ富士山観測所の強力である小見山正さんをモデルにした小説で、その風景指示盤は現存するとのこと。Webサイトで調べると石を運んでいる様子の写真まで見られた。猿倉から大雪渓を経て白馬岳につづく道は昨年歩いただけに描写される風景を心に描きながら読み進められた。
八甲田山
八甲田山の雪中行軍遭難事件で最初に発見された後藤伍長をモデルにした「江藤伍長」のお話。短編ながら次第に伍長の意識が朦朧として、身体が重くなっていく過程がよく描かれている。
凍傷
富士山頂に測候所を建設するために、冬季の富士山頂に滞在が可能であることを身をもって示した -
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新田次郎とアラスカというのは少し違和感があり、どんな小説なんだろうと思ったのだが、これはフランク安田という日本人が、極寒の地の狩猟民族イヌイットを救う物語であった。実在した人物を描いているので歴史小説なのだ。世界がそれぞれの地域で閉ざされた世界であった頃は、鯨やアザラシを狩猟して生活するスタイルが存続できたが、遠い国からの訪問者が大型船で乱獲する時代になるとエスキモーの生活は成り立たない。今でこそ鯨の捕獲について日本は悪者になっているのだが、元々はロシアやアメリカがクジラを乱獲して絶滅の危機に陥ったのだ。ロシアは鯨が取れなくなったのでアラスカをアメリカに売ったにであり、アメリカは鯨から油を取
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「孤高の人」は初読でしたが
コミックの「孤高の人」は何巻か読んでいて
まあ別物ですね。
孤高の登山家・加藤文太郎氏の生涯の後編です。
タイトルから想像するほど、ひたすら山に生きた人物像だけが描かれるわけではなく、勤め先での仕事、下宿での生活、そして関わった何人かの女性たち。登山家としての姿以上に、日常を生きる一人の人間としての加藤文太郎氏の姿が丁寧に描かれています。
実際の山行については、本人による山岳日誌『単独行』が出版されているため、本作ではそれを踏まえつつ、ある程度脚色された生涯を描くといったところでしょうか。
単独行が多かった主人公が乞われて随行した
最期の山については、結末が分 -
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先日読んだ『冬山の掟』に続いて、また短篇集。見え見えのフラグ→見事にフラグ回収、という、おそらくこの人の小説の「様式美」のようなものが、だんだんと見えてきた気がする。雪山に挑むに当たって、一つでも気を許せばたちまち命を落としてしまうという雪山の厳しさ、つい心に隙を作ってしまう人間の弱さ。遭難も、その後の死も帰還も、いくつもの偶然が重なり合って起きていたとしても、全て必然として描かれているように感じる。
古い小説ということもあり、男女観等はそれはもう古臭い。加えて、昔の山屋にいかにもいそうな偏屈さがひしひしと伝わってくるので、昔の小説として割り切って読む必要はある。
また、『ホテル氷河 -
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ネタバレ孤高が至高。
上巻の最初にオチをネタバレされている手法なので、「主人公が初めてパーティを組んで山登りをすることにより死ぬ」とわかっていた。だから、幸せそうな生活を送っていればいるほど、この人は死んでしまうんだな、と頭の片隅に引っかかり、そのギャップが切ない。読み進めれば読み進めるほど、その時が着々と迫ってきてしまい、先が読みたいけど、死んでしまうんだよな、戸惑う。
その時に繋がる山登りの話が出てきたとき、ああ、そういうふうに最期に繋がっていくのね、、と、ようやくわたしたちは死の状況の詳細がわかる。
死んでしまうとわかっていたこともあり、途中からずっと宮村くんにムカつきながら読んだ。
孤高の -
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ネタバレ火の巻は駿河上陸と今川家・北条家との戦い。
「義信逆心」は戦国時代らしいお話しだったなぁ。義信とんでもないことやらかしてる!と思いつつ、信玄の優しさが出ちゃってて読めば読むほど不思議な人だなぁと思う。虎...?
義信の性格はどうしようもないにせよ、他の兄弟が愛されているのを目の当たりにしてたらそりゃ反逆心も芽生えるよな。しかも母である三条氏も徹底的に嫌われて...。だからこそ「御先陣を賜る」がとても切なかった。
いつも通り徹底的に策は講じているものの、相次いで戦を仕掛ける姿にやはり信玄らしくない、という感じはした。信玄と信長、お互いにお互いを脅威と思っているなんてこの時は知る由もなかっただ -
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ネタバレ名前しか覚えてない武田信玄の本を手に取ることになるとは、歴史小説の中毒性はすごい...。
信虎を追放して国主となった晴信が信濃国を取りに行く話。「甲斐の虎」と名高いから凶暴な人なんだろうと思っていたけど、意外と分別のある人なんだなという印象を受けた(発熱している時以外は)。
あと無闇矢鱈に攻めず、死なずに済むならその方法を積極的に選ぶ戦術に利口な人だな〜と思った。当たり前だけど、当たり前じゃない時代だろうから。
新田次郎が諏訪出身ということもあって、可能な限り史実に基づいた内容でありながらどことなく心が入っている書き方が好きだなと思った。
次は上杉謙信やら織田信長やらが登場するっぽい。楽 -
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ノンフィクションではあるが、登場人物の名前は変えている。
日立銅山が銅を生産し出してからの公害への対応について、被害を受けた入四間村が日立を相手取って賠償交渉や被害軽減策の検討を申し入れていった経緯などが書かれている。
大煙突をたてるまでには、いろんな紆余曲折があり、細かく描かれており興味深かった。
最終的には、156メートルの大煙突をたてるのであるが、頂点に達したのは大正3年12月20日であった。
日立鉱山史によると、
(この間、労役人夫、男三二、三八九人、女四、四五一人、計三六、八四〇人。足場丸太三ー、六五〇本。総経費実に一五二、二一八円也。しかもここに特筆すべきは、当時、日本に於け -
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P16・17の、部長が命令しないところが、すごくズルくて笑ってしまった。
命をかけて行け、という実質命令なのに、死んだ際の責任はとらない、という態度なのではないのか、と思った。
プライド・誇りを持つということは、その人の姿勢を正し、良き判断や行動をとる原動力になることも多い。
反面、負けたくないとか、知らぬ間に人を見下してしまいそうになったりと、マイナスに働くことも、多々ある。
測量隊と山岳会、どちらが先に剱岳に登るか、といった競争は、見ている分には面白い。
しかし、本質はただの見栄にすぎない。
先に山岳会が登頂したとしても、別にいいはずなのだ。
逆にそっちのほうが有難いはずなのに。
三角点