新田次郎のレビュー一覧
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宮城の裕福な家庭に生まれながら、家庭の事情で不遇な生活を送ることとなり、一念発起して渡米した安田恭輔。北極警備の船員として生活の糧を得るが、人種差別にあい、遭難しかけた船から追い出されるように救助に向かう。奇跡的に救助は成功するが、船には戻らず、現地のエスキモーと生活することを選択する。その後は、エスキモーの1人として、頑なに部族に貢献し、絶滅しかけた一族を内部へ移住させることに成功し、エスキモーのモーゼと称される。日本人でこれほど現地に影響を与えた人はいないと思えるほどだが、ほとんど知られていないのは残念。旅行記というには重たい物語だが、カナダや北極圏に旅したくなる一冊。
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ネタバレ西上の夢を追いかける信玄の最期を見届けていたら、涙が止まらなくなってしまった。いつのまにか私も信玄公の虜になっていたようだ。
信玄があと10年早く武田家の長になっていたら、どんな歴史になっていたんだろうって思いを巡らざるを得ないなぁ。
家康陣営があれほど怯える騎馬隊も、張り巡らされた策略も、敵を感嘆させるほどの隊列も、すべて西上のため。信長からしたらマジか、あっぶねー...セーフ...って感じだろうけど、やっぱり真正面から戦ってほしかった気持ちはある。
これ以降衰退の一途を辿る勝頼時代を見届けるのはあまりに辛すぎたので、正直ここで終わってくれて助かりました。記憶に残る本だった!読んでよかっ -
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映画に感化されて八甲田山観光、その前に予習。
よかった!おそろしかった!
映画を見ているので、雪地獄がビジュアルで浮かぶ。
映画と違い、徳島隊が三本木にたどり着くまでの過酷な道のりを示し、神田隊が来ていないことを知りぞっとする。そして死へ行進が幕を開ける…素晴らしい構成で、青森隊出立からは最後まで止まらない勢い。
1番のハイライトはさわの道案内。吹雪にもかかわらず、ワクワクするような爽やかで明るい行軍となった。
日露戦争に向けた、当時の空気をひしひしと感じる。たかだか数十年前に誕生し、急速に力を持った支配階級・軍人を、市井の人々はどう見ていたのか。
最後の立川中将の「軍兵増強と知名度を勝 -
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小説を本格的に書き出したのは39歳。それから現在(63歳)までの、個々の作品執筆をめぐる自伝。昼間は藤原寛人として気象庁に勤務し、夜は新田次郎として小説を書く。二足の草鞋。
小説を書くのがおもしろくてたまらない。それなりにお金も入る。しかし、賞をとるごとに、職場でのまわりの目が気になる。焦燥や苛立ちや怒りも描かれている。でも、実務的な仕事をしていなければ、あのような作品群(とくに山岳や気象の関係する作品)は書けなかった、と私は思う。しかも退職時には、富士山頂に気象レーダーを設置するという大仕事もなしとげた。二足の草鞋というよりは、車の両輪だったのかも。
文庫版の付録、妻・藤原ていが書いている新 -
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日露戦争前夜、雪中での行軍を想定した演習で発生した未曾有の大遭難という史実をベースとした作品。
「Wikipedia三大文学」の一角ということと、大まかなストーリーは知っていたのですが、実際に読んでみて圧倒されました。
一目で「あっ、この瞬間に歯車が狂ったな」と分かるシーンもあれば、「これ、最終的にどっちのチームが遭難するんだ…?」と感じてしまう不穏な描写が散りばめられており、サスペンス作品としても楽しめると思います。
また、演習とはいえ軍事行動における「英雄」という偶像についても考えさせられました。
この演習で生き残った人々のその後や、考え方によっては「本番」と言える日露戦争での結末を知 -
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岩井圭也さんの「完全なる白銀」を読んだ時
今年のネンイチニッタは八甲田山死の彷徨を再読に決まりました
雪山小説の最高峰は、まだ譲れない
1977年の映画と共に記憶に残る作品です
弘前歩兵第三十一連隊隊長徳島大尉が高倉健
青森歩兵第5連隊の神田大尉が北大路欣也
2隊の対比が物語の主体
時代は日露戦争前夜(1902年)
日露が戦争状態となった場合の八甲田山系雪山縦断の可能性の模索
遭難事故については いろいろなところで語られていますので多くの方がご存知かと思います
久しぶりに読んで 記憶と違ったところがいくつかありました
一つは小説は1971年の書き下ろしで遭難事故より時代がかなり経っていた