新田次郎のレビュー一覧
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ネタバレ「栄光の岸壁」の主人公・竹井岳彦は10代で遭難し、凍傷により両足先の大半と片足のかかとを失うのですが、不屈の精神力でリハビリを行い、未登攀の岩壁を次々に征服します。
「足のない足」で「登山」だけでなく、岸壁の「登攀」をするのですからすごいです。
そんな主人公に現在故障中で走れない私が自分を重ね合わせていることは言うまでもありませんw
主人公のモデルが実在の人物であることも、私の興味を大きくします。
主人公・竹井岳彦と私では身体的ハンデの大きさ、それを克服する心の強さ、どちらも天と地の差ではありますが・・・。
「孤高の人」の主人公・加藤文太郎、「栄光の岸壁」の竹井岳彦、どちらもすさまじい「山バカ」なのですが、どちらもとても美しい女性と幸せな結婚をします。子どもにも恵まれます。
山岳小説って主人公が亡くなってしまうパターンが多いって聞いていて、確かに「孤高の人」の加藤文太郎は妻と幼い子どもを残して山で死んでしまいます。
なので、竹井岳彦がそのようなことにならないか、下巻を読み始めてから物語の最後の山行から無事に生還するか気になって先に結末を確認してしまいましたw
はたして結末は・・・是非読んで確認してくださいw
山岳小説を何冊も読んで、山には行きたくて仕方がありませんか、小説の主人公のように厳冬期の山には恐ろしくて到底行きたいという気持ちにならないですね~。もう小説の中だけで十分です。
いずれは夏山でいいので八ヶ岳あたりの山とか登ってみたいです。
まずは故障が直ったら、いつも走って登ってた猿投山を歩いて登ってみるかな・・・。 -
Posted by ブクログ
再読中。武田勝頼の人生を描いた小説である。著者は『武田信玄』を前に上梓している。他にも『武田三代』などの著書もあり相当な研究を著者はされている。武田勝頼の人物像は一般的には長篠の合戦で信長と対比される非合理で猪突猛進的な武将であることが多い。
しかし、本書を読むとそのイメージはいい意味で打破される。勝頼は信玄の正嫡ではない(諏訪四郎勝頼という)ビハインドを抱えながら、信玄死後の武田の混乱に臨み、苦悩しながらも領国経営と他国との戦略に臨んだ大名であった。信玄の遺臣たちの対応(彼らの気持ちは常に信玄に向いている)に追われ、その中で自らの支配基盤を確立しようと必死にもがくその姿と、勝頼の与えられたいかんともしがたい様々な”前提”に同情を覚える。隣国には近世的な支配体制を確立していた織田信長ないた。経済力でも地理的条件においても武田家は不如意な地勢的なビハインドをこれも抱えていた。しかし、彼は立ち向かわざるを得ないのである。
武田勝頼は内にも外にも「重圧」を抱えているのである。その重圧に果敢に取り組もうとする姿勢は、現代風に言えば、急成長のライバル企業に囲まれながら、そして、先代社長が強いカリスマ性を発揮した企業を受けついだ(そしてその企業は支店長の割拠性が強い)会社を引き継いだ若手社長の苦悩、となるであろうか。しかし舞台は戦国時代である。その終結は死であった。彼のひたむきな姿と、その努力を悉く裏切る現実、結果。その勝頼の悲哀を想うと、勝頼最期の合戦である天目山の戦いは涙を禁じえない。
以前、山梨県は甲府からはるか西部にある甲州市に勝頼の菩提寺「景徳院」を詣でた。ひっそりとした墓に参拝者は誰もなく、蝉時雨が耳を劈く声で鳴いていた。その時、新田次郎『武田勝頼』を思い出した。僕は新田氏の著作に出会わなかったらこの場所に詣でることはなかっただろう。素晴らしい小説であると感じた。 -
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感動の野武士伝説
富士山頂への気象レーダー建設物語。
作家でもある気象庁課長が通信メーカーと一緒に一大事業を成し遂げる。名誉のため採算度外視で受注活動を繰り広げるメーカー各社。
事業は一社でやるべきと主張する気象庁課長の主人公。ドラマがそこに生まれる。
主人公の政治的圧力をも跳ね返す意志力。圧力でどうしてもメーカーに分割発注しないといけなくなったときの心、さらに逆転でそれを跳ね返して一社で工事をやり遂げた達成感。
建設会社の現場監督の言葉もいい。
工事の完成は人の数でも技術でも金の力でもなく、人の気持ちだ
完成後のパーティーで、機械予算は取ってそこで働くことになる人のための予算が少ないことを所員から責められるのだが、黙ってそれを聞く主人公の心の動きも鮮やかに書かれている。
富士山頂レーダー建設を背景にした主人公の心の物語であるとともに、新田次郎その人の私小説のような気がして、この作品は私にとって新田次郎作品ベスト3に入るものとなっている。 -
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御館様・信玄公の突然の死により、28歳の若さで武田家の指揮をとることとなった勝頼。信玄時代の老臣たちとのジェネレーションギャップに苦しみながら、偉大な父を超え、自分の思いを遂げようとして進んでいく勝頼の姿が好意的に描かれていています。
戦国最強軍団が、脆くも内部から崩れ去っていく様子が、それぞれの心情とともに鮮明に表現されていています。老臣の意見に心ならずも流されていく勝頼に歯痒く思う場面も多いですが、勝頼の無念さが伝わってきて心が打たれます。
「なぜ、武田家は滅ばなければならなかったのか」と改めて考えさせられます。
章末には「信玄公記」や「甲陽軍艦」の引用が掲載されています。原書ではほんの一行で表されている部分が、小説では背景描写・人物の心情描写等が重厚に表現されていることにも感動をおぼえます。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ全巻のラストで文太郎が突っ伏しているシーンがあったので、新田次郎の「孤高の人」と同じく、そこで終わるのかと思いきや、再度の登攀へ向かう。やはり、そうこなくっちゃ。そして、そこから始まる登攀の描写がすごい。
カバーの折返にある作者の言葉で、
『僕は擬音を信用しなくなった。』
という記述がある。これを読んでから本巻を読むと、本当に作者が絵と、コマで音を出そうとしているのがわかる。
実際、わたしの頭にはシューベルトの『魔王』が浮かんできた。まあ、文字で書かれているし、コマのテンポはなしにして、絵を見れば誰でも連想するとは思うのだけど。