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Posted by ブクログ
2026.01.05記
これを読まずして武田信玄は語れない。
武田信玄の理解の傑作!
武田信玄の生涯は大きく分けることができる。
①父、信虎を追い出し、砥石崩れまで。
②山本勘助の活躍する川中島の戦い。
③長男、義信の裏切りと後継者勝頼まで。
④病気を押して戦をする三方原の戦い。
この絶妙な流れを風林火山として四冊にまとめ上げ、天才的文章で、今まさに同時代に生きているかのような錯覚に陥らせるほどの内容となっている。
小説家井上靖氏も、 武田信玄を書くことに試みているが、どうもそちらは単なる恋物語にしていて、歴史的深みのような重みを 感じさせなかった。
新田次郎氏は、まさしく、この『武田信玄』を書くためだけに生まれ、そのために死していったのではないかというほど、生涯を掛けた魂の結晶化したものに感じさせる。
個人的には「あとがき」での著者の感想がとても面白かった。
小説に出した登場人物の子孫から、批判を浴びたり、もっといいようにかけと言われたりもしていた。
「もし、武田信玄が生き残っていたらどうなったか?というようなものを書いて欲しい」など、めちゃくちゃな要求もされていたようだ。
初めのうちは、人物名、地名なのに読めないというところが多いかもしれない。
その場合、今一つ没入感のようなものが得られないが、配下の名前や地名の場所などが認識できてくると、徐々にタイムスリップしたような感覚になる。
読み終えた後の聖地巡礼は、とても感慨深いものになった。
新田次郎の最高傑作。
イマドキの歴史小説家さんは、結構大胆にキャラ設定して、割と自由に立ち回るじゃないですか?
でも、新田次郎が書いていた頃は、実在する歴史上の人物を主人公とする時、歴史文献や史実の確認をしっかりと踏まえた上で書かないと、『キワモノ小説』扱いされるし、地元住民から怒られる様な時代だったんですよ。多少の贔屓目は有りとしてもね。
そういう意味で、重厚且つじっくりと話が進みますので、気の短い方には不向きかもしれません。でも、それを乗り越えて読み進めていくと、信じられないほどの一体感と云うか《同じ場所にあたかも自分がいる様な》錯覚すら受ける瞬間がやってきます。その時の感動と言ったら…!!
そういう時に「読書の至福」が味わえるのだと思います。
当然、この作品が書かれた時点での歴史資料ですから、ここ最近の新しく発見された資料等は、当然のことながら反映されていません。だからと言って、この作品の価値が下がってしまう訳では有りません。《武田好き》の人間の心を掴んで離さないだけの魅力が、此処には描かれています。“武田信玄と云う人物”に興味を持った人には必ず読んでほしい作品です。
又、続編にあたる『武田勝頼』(全3巻)も有りますので、お好きな方は是非チャレンジして下さい。《悲しい結果》と分かっていても、心に迫るものが有ります。
「贔屓目」と云う言葉で思い出すのが、海音寺潮五郎の『天と地と』です。アチラは上杉謙信か主役で、信玄は《欲望深き人物》として(何しろ仇敵ですからw)描かれています。
その為、二人の歴史的評価はこの2作の《互いの敵の評価》ぐらいで丁度良い、と出版当時は言われていたそうです。言い得て妙かもしれません…。アッチはちゃんと読んでないけどww。
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