新田次郎のレビュー一覧

  • 劔岳〈点の記〉
    点の記とは、山の頂によく設置されている「三角点」の設定記録のこと。1888年以降の点の記が国土地理院に保管されているそうですが、「点」を追い求めて道なき道を開いた測量官たちの、まさに命懸けの仕事の証なんです。

    「地図に載っているのに今は廃道になっている」からって軽々に文句を言ったらバチが当たります...続きを読む
  • 孤高の人(下)
    孤独を愛した登山家というイメージで読み始めたからか、孤独で寂しいとか、人とうまく話せないもどかしさもあったりして、そういう部分は普通の人と同じだったのかなと感じた。

    最期に単独行でなく、パーティを組む選択をしたこととか、その他諸々の選択の結果死ぬことになってしまつて、どんな言い訳しても結局選んだの...続きを読む
  • 孤高の人(下)
    ひと息に読んだ。
    新田の山岳小説ならではのストイックな主人公だが、脇役が昼ドラみたいな展開で笑ってしまう。
    サラリーマンの悲哀滲む部分はリアリティがあるが。 新田作品には珍しく、内面にかなり迫っていたり、幻覚パートがややくどい。

    最後の相方が死神ぽく描かれているが、事実は異なるともされる。

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  • 孤高の人(下)
    「孤高の人」が気高く険しい孤高から降りたったとき、なんと哀しい結末が待ち受けているものだろうか。以前の加藤文太郎であれば山で生きる鍛錬を繰り返しながらも「山男は山で死ねば本望」などと思っている節もあったが、花子と結婚し生きる喜びを見つけた加藤にとって人生とは如何に不合理なものか。ヒマラヤの地を踏むこ...続きを読む
  • 孤高の人(上)
    本作品は山岳小説の大家である新田次郎氏が「加藤文太郎」という登山家に焦点を当てた山岳小説である。そこに描かれているのは外山三郎ら庇護する者や影山ら乱す者との人間ドラマであるとともに、大正から昭和へと変わる不穏な雰囲気、関東大震災や5.15事件の軍国化、共産主義の暗躍といった出来事である。「単独行の加...続きを読む
  • 孤高の人(下)
    故郷で出会った少女に思いを寄せ、数年後彼女と結ばれる加藤文太郎。結婚を機にそれまで題名通り孤高の人であった彼は周囲との付き合いを見直し、打ち解けるようになっていった。
    一方、娘も生まれ家庭が尋常のものになっていくにつれ、山からは遠ざかっていく。そんな折彼を師として慕う登山家・宮村から、思い人を吹っ切...続きを読む
  • ある町の高い煙突
    新聞の書評で紹介されて読んでみた。日立に住んでいた事もあったがこの煙突の事は知らなかった。企業が地元と共存していく上での参考事例になるお話。
  • 劔岳〈点の記〉
    三等三角点埋設とともに剣岳初登頂の至上命令を受けた柴崎芳太郎の物語。剣岳初登頂だけに争点を置かず、山岳会との競争、県庁や軍幹部との確執、立山信仰といった土着文化など、複合的な要素を交えることで本作を重厚な物語に仕上げている。主人公を測量官という特殊な職業にすることで、所々「測量」という観点で描写され...続きを読む
  • 孤高の人(下)
    「単独行の加藤文太郎」として著名な彼の生涯を綴った作品。会社員という立場で山行を重ねる彼の生き方は共感が持てた。彼が抱く決意、山では自分しか自分の身を守ることはできないという登山における根本的な要素が浮き彫りにされて描かれてあり、読むたびに引き込まれた。
  • 武田信玄 火の巻
    信玄の戦略のすごさと長男のワガママ、親を超えたいがために命令を無視して重臣を死なせるなど度重なる違反で信玄は親子の縁を切る。
    勝頼を跡継ぎとし、勝頼のたくましさに親バカになりそうなのを必死で隠すなど、信玄の人間らしさも描かれている。
    勝頼も期待を裏切らない戦略で期待の跡取りだったんだなぁ。
    戦闘部分...続きを読む
  • 武田信玄 林の巻
    上杉謙信との闘いで双方の衝突がメイン。
    女たらしだった信玄の男らしい決断と生き方にため息の連続
    成長を見守るような感じで読んでいたけど他の小説と並行して読んでいたのでやたらに〜した。の連続で読みづらさが出てきて、速度が遅くなる。
    作者によって文章が違うと校閲している人は大変なのかなぁ❓と最近読んだ本...続きを読む
  • 縦走路
    昭和37年(1962年)に書かれた作品
    山登りが趣味の会社員たちを描いた恋愛小説だが
    いまや時代劇とそのことば回しがたいしてかわりなく感じる
    それでも登場人物の造形と話立ての面白さはさすがの実力
  • 芙蓉の人
    ありえない。。明治でしょ、富士山で?山頂で越冬??そんなの絶対無理無理。と思って、そんな非現実的なことなんて全然無理無理と思って読み始めた。
    そして二人とも高山病と寒さで11月にはすぐ死んでしまいそうになるのも、そりゃ頷ける。でもでも、あの時代にトライしようとしたのが本当にありえなくてすごすぎる。
    ...続きを読む
  • 栄光の岩壁(上)
    冬季岩壁を登るだけでも凄いが、足の無い足でチャレンジする事が凄い。しかも、トップクラスのクライマーである意思の強さには感服
  • 聖職の碑
    大正時代に駒ヶ岳で起きた中学校修学旅行の遭難事故(11人死亡)を題材とした小説.自然相手の活動を行う際,どんなに事前準備をしても,自然の急変等により事故が起きる可能性がある.このことは常に肝に銘じるべし.事故後の教育会(今でいう教育委員会?)の対応も示唆的.現在ではこのような対応は難しいかも.
  • 孤高の人(下)
    残念ながらプロローグで示したとおり加藤文太郎は宮村との初の槍ヶ岳共同登頂で命を落としてしまう。加藤のような用意周到で強靭かつ判断力に優れた人物なら単独登頂が理想と言えなくもない。命がかかる冬山登山は自分を生かすとともに仲間を生かすことも含め重要な選択があると思うが、そこは友人宮村を見捨てない姿勢が却...続きを読む
  • 孤高の人(上)
    実在の人、加藤文太郎による前人未到の日本列島の縦断単独踏破までの上巻。
    登山小説における、究極の状態における人間心理や素晴らしい景観、そして死と隣合わせの冒険という特有要素が満載で、大正、昭和における登山行の考え方や道具等細かに描かれており、興味深い。主人公、加藤文太郎の寡黙な人柄は、この小説によっ...続きを読む
  • 孤高の人(下)
    生まれ育った神戸が舞台になっており、山歩きも好きなので興味深く読みました。
    主人公が実在の人物と言う事で、上巻はエピソードの記述が諄く感じだけど、下巻は一気に読んでしまいました。
  • 武田信玄 風の巻
    のっけから、信玄の葛藤がある。
    この本の中に、葛藤していない信玄はひとかけらもいない。
    父に苦しみ、正妻に苦しみ、仕事に苦しみ、病に苦しみ、思い上がりから家臣を死なせ……
    溺れても仕方のないほどの才を自身で操り切れず、才が大きい分、痛みも大きい。
    でも葛藤しながら、自分で運命を引き受けるから、こんな...続きを読む
  • 孤高の人(下)
    弧高の加藤が結婚を機にがらっとかわるのが、読んでてそういうものなのかと思った。本作は独りの悲しみや困難などが多く、内容としては決して明るいものではない。しかし、独りとは一体どういうものなのか考えさせられ、心の奥がじんと熱くなる小説であった。独りでいきることが悪いのではない、独りでもいいのかもしれない...続きを読む