新田次郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
登山が好きな人には是非読んでもらいたい本です。剱岳は地獄絵図の針の山と呼ばれていて登ることはできない、登ってはならない山であったそうだ。
昨年の夏に立山連峰を登る前に読んだ。実際に室堂バスターミナルから眺める立山連峰は雄大であるが、その更に奥にそびえたっている剱岳は確かに針の山を想像させるような底が果てしない闇の中にある不気味にとんがった山である。よくこんな山を人間が登ろうと思ったものだと感心する。
街の建物などは数十年、百年も前の光景はほぼ跡形もないが、山の風景は恐らく数百年前とそれ程変わってはいないだろう。だから今自分が見ている山々や木々や花などほとんど変わらない風景を主人公達も見ていたのだろうなぁと思うと歴史のロマンを感じて感慨深くなる。
先人が作った山道を経て頂上まで辿り着けるがこの当時までは到底登れない、登っては行けない山だったというのはとても納得できる。
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Posted by ブクログ
今のように衛星などなかった明治28年、正確な天気を知るために明治に富士山に気象観測所を設けるという目標を掲げた野中到
最初はたったひとりで挑戦だったが、密かに妻
千代子も夫を助けるのは当然の事という断固した意思を持って、周りも説得し、娘を自身の親に預けて夫がいる観測所に向かう…
最初は難色を占めした到を説き伏せ夫婦ふたりで挑む
どれほど大変で、無謀な挑戦であったのかとひしひしと感じた
観測危機が寒さや風で壊れていき、高山病、低体温症、栄養失調に脚気…
体も壊れていく中、強い意思と決して弱音をはかないその姿勢は感銘を受けた
何事も最初の挑戦は困難を伴う事が多い
たとえ自身が叶わなくてもその意思を継ぐ架け橋になるならばその挑戦に無駄なものは何ひとつはないと感じた
ただ、娘さんが不憫に感じてしまう
たとえ夫を支えるためであったとしてもまだまだ母の恋しい時期に離れ、最期すら看取れない…
妻としては正解かもしれないが、母としてはどうなんだろうかと少しもやもやしてしまった
その後、生還し沢山の子をもうけて尽くしたのは時代もあるが、その罪悪感もあってのことなのかなとも思ってしまった
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Posted by ブクログ
プロジェクトマネジメントの全てが詰まっている…そう評価された映画の原作がこちら。
山岳遭難としてハラハラ読み応えがある。雪中行軍に挑んだ(挑まされた)2つの隊であるが、ひとつは200名近い死者を出して壊滅、もうひとつの隊は無事に踏破。無事とひとくちに言ってもギリギリのところではあるのだが。
計画も含めた入念な事前準備、指揮権の明白化、集団としての認識統一、絶対に変えないことと変えてもいいこと。これら全てを通した部隊と、全てを裏切った部隊。その対比がおもしろい。
また、単なる組織、リーダー論では語り切れない本作。
対ロシア戦争を前にして、こういう人体実験をしてしまうことからして既に思考停止だったというべきか。流れ、勢いというのはマイナスに動き出したとき本当に怖い。
企画するとき、絶対に達成することと、達成したいが無理が生じたら捨てること…改めて考えてみたい。そこのビジョンがあれば、「引き返す」ことができるのだろう。
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Posted by ブクログ
日露戦争直前に寒冷地における装備や行軍の実験をする目的として、真冬の八甲田山を雪中行軍を陸軍弘前5聯隊.31聯隊が行うことになった事実を元にしたフィクションではあるが当時の新聞や官報を元にしているので、一部ノンフィクション小説でもある本書
読んでみると
① 部下に忖度させて責任を負おうとしないトップ
② 部下の忠告を聞かず、指揮権を掠め取る功名心とプライドが高い上司
③ 劣等感の塊のため自分の発言を強く言えず、無茶な上司の決定に従ってしまう中間管理職
④ 現在自分たちが置かれている状況をガン無視して根性論で乗り切ろうとする部下
⑤ 自分が経験したことのないことについて、ろくに情報収集もせずに楽観的に捉えようとする下っ端
などなど三者三様のしくじりのオンパレードであり、八甲田山遭難事件だけではなく事故というのは、起こるべくして起きた人災のようなモノが多数派なのではないかと考えさせられるような内容だった
ただ遭難した5聯隊は無駄死にだったかと言われると「精神や鍛錬だけでは吹雪に勝てないことを知った〜極端な言い方をすれば、5聯隊の遭難が日本陸軍の敗北を未然に防いだことになる」(p310)と教訓から次世代を守るという、ある意味救済(?)を感じた
一方で対比として雪中行軍を踏破した31聯隊は、上司に対して毅然とした態度で過去の経験から慢心せず規律に重きを置き組織としては立派ではあったけれども、独善的となり過ぎてしまい、組織以外の周囲(案内人など)に無理を強いるなど成功の裏に犠牲となるものがいるという面も描かれており、美談の裏にある話題に上がらない醜聞も描かれているのが本作の面白いところだなと思う
一見すると綺麗であるけれど、一度足を踏み入れるとひょう豹変する化物のような雪山と、誇りや根性論、プラス思考など一見すると立派に思える人間の裏側には"しくじり"果ては"人災"という化物が潜んでおり、モノゴトには常に良い面と悪い面が表裏一体になっていると思える作品だと思う -
Posted by ブクログ
最初は難しそうな言葉がたくさん並んでいて、身構えたが、物語の中に入ってみると、ぐんぐん引きずり込まれて行った。
第5聯隊が、生き延びられる結末はあったのだろうか?
過ぎたことに「もし」を考えても仕方ないが、この物語の中では、最悪の事態を回避できたかもしれない「もし」を、たくさん感じた。
もし、予定通り案内人を立てていたら…
もし、永野軍医の言葉を聞き入れて引き返していたら…
もし、神田大尉が指揮権の全てを握っていたら、結末は違ったのだろうか。
しかし、階級や身分が色濃く残る軍のなかで、平民出の神田大尉が山田大隊長の意見を翻すことは、今考えても無理だったのではないかと思う。
神田大尉と、徳島大尉を分けたものは運命だったのか…
よりによって、この雪中行軍が行われた年は、記録的な寒波に見舞われた年だったという。
他の年なら、両隊とも生き残れたのだろうか。