新田次郎のレビュー一覧

  • 富士に死す

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    自分にとって身近な富士山。その山の中で江戸時代に入定(宗教的自殺)をした人がいたことは知っていた。ただ、知識として知っていても、その人の人となりや当時の空気感のようなものはなかなかわからない。リアルと創作の境目が曖昧な小説ではあるが、それでも理解のヒントにはなるかなと期待して読んだ。

    師匠との出会いから江戸での生活の様子、2度の結婚など、ひとりの商人が周囲の人たちとの関わりの中で次第に富士山信仰に入り込んでいく様子がイメージとして浮かび上がる見事なストーリーだった。富士講はその時々の指導者が、始祖角行の教えを自由に解釈するというスタンスに驚き、同時に納得できた。

    岩室に篭って死に至る31日

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    2025年11月11日
  • 八甲田山死の彷徨

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    神田部隊と徳島部隊を比較して指揮官のあり方について言及して書かれている。神田部隊最大の不幸は山田少佐の行軍参加だろう。これにより自ら指揮する権限がなくなった。一方徳島部隊は徳島大尉の念密な計画と権限を掌握したことで成功した。
    山田少佐の気まぐれ判断で部隊は混乱し全滅したのは気の毒という一言ではすまない。神田大尉は山田少佐に恨みも怒りもなかったのは象徴的だった。


    山田少佐が、もしいっさいを自分に任せていてくれたら、指揮権を奪うようなことをしなかったら、このようなことにはならなかったかもしれない。しかし、今となっては繰り言でしかない。自分へ雪中行軍の計画者なのだ。(P210)


    私なら「山

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    2025年10月31日
  • 小説に書けなかった自伝

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    自伝というより半自伝という本。生い立ちは全く書いてない。書き出しは満州引き上げから作家になるまでの経緯である。
    新田次郎の魅力は大胆さと小心さの兼ね合いだと思う。「強力伝」がサンデー毎日1等をとったら、その賞金でいきなり吉祥寺に土地を買ってしまうのだ。まだ「強力伝」しか書いていないのにである。しかもこのころはまだ完全な職業作家ではない。気象庁で働ききながらの兼業作家だった。その後は直木賞も受賞し文名も上がっていく。ところが新田は「気象庁をおさらばして筆1本で食べていかねばならないと思うと不安だった」と述べる。結局兼業作家生活は10年続くことになる。

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    2025年10月27日
  • 孤高の人(下)

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    結末が分かっている中、最後の登山の場面は長く苦しい。
    自分まで息苦しくなる感じがするほどの描写はあまりにもリアル。

    なんとも悲しい結末ではあるものの、圧巻な物語だった。

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    2025年10月21日
  • 孤高の人(下)

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    仕事と趣味の両立。時代背景を考えるとかなり進んだ生き方だなと思う。真面目で不器用、だから人付き合いが苦手だったんだろうな。

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    2025年10月09日
  • 武田信玄 林の巻

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    ネタバレ

    まず山本勘助について。個人的に忍び系(?)の人が好きなので気にして追っかけてた。織田信長に会うシーンや桶狭間の合戦の勘助はヒリヒリしたなぁ。川中島の合戦の勘助について多くは語らないけど、2日間ほどページが捲れなかったことは書き残しておこう。

    上杉政虎について。天才肌だったんだなぁという印象だけど、政虎を支える人たちによって才能を活かすも殺すもされるんだなぁと切ない気持ちになった。小田原城の合戦に関してはほぼ戦ってないような?そんなもんだったの?という。信玄と政虎、お互い裏の裏を考えて策略し合うのが秀才同士って感じで胸熱。

    最後に晴信-またの名を信玄について、私この人が考える策がどうやら好き

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    2025年10月02日
  • 八甲田山死の彷徨

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    難しいのかなと思ってたけど読み始めたら面白すぎた
    面白い…と言って良いのかわからないけど。

    今は「なんでそんなことするんだよ、普通に考えたらわかるだろ」みたいなことも、それは先人たちのトライアンドエラーで作り上げられた尊い常識なんですよね。
    でもやっぱり日本軍の縦社会、精神力崇拝文化ダメすぎ

    生き残った者はほとんど日露戦争で死に、つまり死ぬのがちょっと早かったか遅かったかの差だけだった、っていうのがやるせないですね

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    2025年09月27日
  • 八甲田山死の彷徨

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    日露戦争前夜の日本陸軍雪中行軍訓練。
    八甲田山という極限の寒冷地において
    人体がどのような反応を示すのか、
    怖い程に描かれている。

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    2025年07月28日
  • 八甲田山死の彷徨

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    小学生の頃だと思う
    映画の八甲田山を観た
    本を買った瞬間は気が付かなかったが
    読む直前のふと思い出した
    人がいっぱい死ぬ衝撃的な映画であり
    それこそ半世紀前のことなはら
    薄ぼんやりと覚えている

    この何年か後に二百三高地を観るのだが
    なんとなく繋がっているし
    悲惨な感じと無能な上官という設定が
    よく似た映画である

    八甲田山は配信を探したがDVDしか見つからず。

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    2025年07月09日
  • 孤高の人(上)

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    楽しく読ませていただいたのだが
    残念すぎる結末が
    冒頭から分かる内容なので
    分かっていながらも後味が悪いです
    やっぱハッピーエンドって素晴らしいです

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    2025年06月03日
  • 八甲田山死の彷徨

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    淡々と起こったことを書き連ねているだけなのに、冷たくない、むしろ熱をひしひし感じる不思議な文章。
    この行軍に成功者はいないと感じた……ひたすらに虚しさと学びだけがある。

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    2025年05月19日
  • 劔岳〈点の記〉

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    初めての山岳小説でした。史実に基づいていることもあると思いますが、必要以上のドラマチック演出もなく、リアリティ重視で、小説だけど登場人物の横に一緒にいるような親近感を持たせてくれる本でした。その分測量の作業のイメージはつきづらいので、少し時間はかかりました。

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    2025年05月13日
  • 孤高の人(下)

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    ネタバレ

    多分でしかないけどすべてが完璧にいく登山なんてほぼなかったんじゃないかな。常に学んで修正して挑んで、その繰り返し。その工程が加藤文太郎を育てたのだと思う。

    それにしても下巻の途中からは読むのが辛くなっちゃったな...。あれだけ山に夢中だった加藤が結婚を機に人が変わるとは、人が人に与える影響力は底知れない。孤高であったが故にこれから先は幸せに生きて欲しいと願っていた。

    経験と知識からなる譲れない芯は持っているのだから、もっと自己主張が強ければ、グループ登山の経験があれば救われたのかもしれない。けどどちらも持ち合わせていないのも加藤文太郎の魅力であり...。

    山はとてつもなく魅力的な場所であ

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    2025年05月11日
  • 劔岳〈点の記〉

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    軍上層部からの実質的には強制で剣岳への人類初の登頂を命じられた柴崎芳太郎。
    宇治長次郎など優秀な仲間を得、過酷な自然に勇敢に立ち向かう。
    想像を絶する苦難を乗り越えて、剣岳を征服するが、頂上には奈良時代の修験者が残した刀剣と錫杖があった。
    軍部は「初登頂」でないことが世間に知れるのことを恐れて、柴崎らの業績を大々的には報じない。むしろその業績に対して関心が薄れたような反応さえ見せる。
    現代でも組織のマネージメント層が自分たちの都合や無理解で現場で苦労をしながらも結果を出した人を正当に評価しないがままあると思う。残念なことだ。
    「命をかけろ」との命令を遂行したが、満足な評価を得られなかった柴崎達

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    2025年05月05日
  • 劔岳〈点の記〉

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    『劒岳 点の記』は、自然への畏怖、人間の挑戦心、歴史の重みを感じられる一冊であり、静かに心を揺さぶられる作品でした。

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    2025年04月29日
  • 劔岳〈点の記〉

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    山で何気なく見かける三角点だが、これからは違う見え方をしてくるだろう。

    測量という仕事は存在を知るだけで詳しくは知らなかった。

    地図をつくるために危険を冒して山へ登っていた人たちの苦労を知ることができて、読んで良かったと思う。

    山には色々な楽しみ方がある。

    日常から離れて癒しを求める人もいれば、辛くても山頂を目指す人もいる。

    そんな中、こうした本からその山や、それにまつわるものの歴史、背景を知ることで、より山そのものを楽しめるようになると私は思う。

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    2025年04月14日
  • 孤高の人(上)

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    ネタバレ

    神戸アルプスから始まり、冬の北アルプスにつながる。
    山の描写は楽しめるが、日常生活部分は一般人の私生活を覗き見るようで微妙。
    主人公が伝説化され、心理的距離感がもっとあれば気持ちよく読めたかも。
    神戸アルプス縦走は面白そう。

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    2025年03月21日
  • 新装版 風の遺産

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    硬派な登山小説ではなく恋愛中心の展開に驚く。登場する人物関係を説明する前半のパートが少々間延びする。作者のあとがきによれば昭和36年頃の執筆で、昭和の時代事情を楽しむことはできる。登山し、遭難するところからは流石に作者らしいスリリングでリアルな展開で楽しく読んだ。恋愛の結末は心理描写が薄く、何となく納得性にかける。やはり遭難シーンを中心に据えての作品が好みです。

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    2025年03月18日
  • 強力伝・孤島

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    直木賞受賞の強力伝を含む6編。
    作者の初期作品群とのことだが、登場人物の心理描写がリアルで、自然現象についても氏の体験したことであろう、ただの想像では書けないような描写が凄い。
    「八甲田山」は後の作品であろう長編とは違う凝縮した展開でテンポよく読める。「孤島」については実際に観測に参加した観測員に取材したのだろうか、淡々としているが人の心理描写が面白い。「凍傷」のような過酷な場所の中で比較的安全な場所で立てこもるシチュエーションが何故か好きだ。

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    2025年03月14日
  • 雪のチングルマ

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    山岳遭難短編小説5編+アラスカ旅行もの。
    死と隣り合わせになり、自然に抗う人間の戦う術は読んでいてとても引き込まれる。それは自己を守る本能かは分からないが、絶望的な状況に貶めるシチュエーションとしては山岳物はとてもすぐれており、作者のように山岳を知悉してよりリアルな描写をする人により面白さは倍増すると思う。
    ミステリー仕立てで、当時のスキー場と宿泊所の雰囲気を伝える「コブシの花の咲く頃」、実話に基づく遭難物「春富士遭難」が特に面白いと思った。

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    2025年03月02日