新田次郎のレビュー一覧
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新田次郎 つぶやき岩の秘密
私は少年ではないが、まだ白髭さん程でもない。
教師ではないし、漁師でも、軍人になった事もない。親になったことのない大人だ。
これまでの人生を振り返ることにより、少年にアドバイスをあげることはできる。
私からのアドバイスを素直に実行することにより、短時間に良い人間になれるような気がする。
白髭さんのように、少年と話をしてみたいと思う。
小学生の頃に、この本読みなさい。
私は、新田次郎作品初めましてでしたが、読んでない大人にもおすすめできる小説です。
ミステリーばかり読んでいる私が、この本の題名を見て、カバーを見て、あらすじを読んで、ビビってきたのです。さて、少年文学 -
購入済み
真っ直ぐなる筆で語られる戦国絵
新田次郎の作品はこれと有名な八甲田山〜を読んだきりだがこちらの方が好みであった。表題作の、何ということもない筋立てだが素朴で素直で気持ちの良いキャラクターと少しの寂しさを滲ませる幕切れが忘れ難い。
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新田次郎さんの遺作短編集。
特に、表題作を含む巻頭の2作品はとても読み応えがあった。激動の歴史に翻弄された2つの都市、マカオとヴァンクーヴァー。二度と母国日本の地を踏むことは無いことを覚悟した移民たち。人種差別もある過酷な環境で力強く生きた当時の生活を想像することができた。
現代は交通通信環境が発達したため、簡単に人の捜索ができて、会うことも用意だが、昔は物理的に離れ離れになることは「今生の別れ」に相当するものだったのだろう。そのような時代がつい半世紀前まで続いていたことが分かる。
行方知れずになった人の消息や生きた証を探すなかで手紙・伝言・風景といった「手掛かり」に辿りつくだけでも本当に -
Posted by ブクログ
新田次郎にハマりいろいろ読んでます。
冬山の過酷な環境や、美しい自然の描写、人間について面白おかしく?読めてしまうのが、すごいです。初版が昭和48年、50年も昔の小説なのに、今も読み継がれる普遍性はいったいどこにあるんでしょうか。
単独登山の第一人者として、有名人になっていく様子もドラマチックでわくわくします。
メモ
・懐中コンロってなんだろう
・文太郎の食料最終アンサーは、甘納豆とから揚げの干し小魚、テルモスのお湯
・そこからいよいよ濃い霧になった。氷の霧だった。どのにでも、触れれば氷の花をつくる霧だった。白い花は、加藤の身体中に咲いた。
→霧氷ってどんな感じなんだろう。
・大きな荷物を背 -
Posted by ブクログ
狂ったように冬山にのめり込んでいた加藤が、紆余曲折のあった結婚を機に、スッカリ人柄が変わったかのような生活を送る。ここの部分は純愛小説とも読める。
また、社会人としての会社での生活はサラリーマン小説としての側面もある。単なる山岳小説ではなく色んな顔のある小説だが、かえって私にはそれが少々煩わしくも感じるところもある。ダイレクトに山岳小説に仕上げても良かったのではないか。しかしそれが物語に深みを与え、人間としての加藤の造形に深みを与えているのも確かだが。
新田の作品には、山での気象の激変がとんでもない悲劇を招く作品がいくつかあるが、その部分の描写は、ある意味気象のプロとしての作者の顔が十分に -
購入済み
苦しい、でも、美しい
人とうまく関われない、けれど、山登りや技術面で秀でた才能がある。人間関係の辛さのところは読んでいて共感できるところが多々あり、こちらも苦しくなりましたが、山登りのシーンはその凄さ、著者の描写の素晴らしさに感動しました。
最後の宮村との山行のところがあまりにもこれまでの流れと異なっている感じを受けたため、ネットで加藤文太郎を検索したところ、山友との山行は遭難時が初めてではなく、更に山友との友情について花子さんへ熱く語っていたという話もあるという記事を読んで、ほっとしました。現実はもっと加藤文太郎は納得の上での山行結構、その結果の遭難だったのだな、と。
山をやる身として、ためになる情報も得ました。 -
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地学に関する本を読んでいて気になって読んだ。
何気なくみている地図、1箇所ずつ測量していた時代があったんだなと、改めて実感した。今みたいにヒートテックがあるじゃなし、装備も揃わなかった頃に切り立った山に測量の為に入る。
なかなか見つからなかった登頂路の謎を解いて?初めて山頂にアタックするシーンは息が詰まるほどの緊張。
今だと人工衛星とかから測定したデータで地図を作れるんだよね。Google マップをその当時の人達が見たらさぞ驚く事だろう。
先日読んでいた宗教本につながる部分もあった。さいきん読書量が増えたので思わぬところでつながる。
山岳信仰に絡んで曼荼羅や大日如来の話も。
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Posted by ブクログ
短編6作どれも大自然の摂理に抗う人の生き様と孤独が描かれており、ともすれば生死の生臭さすら漂わせる描写に五感が刺激され、読み進めるにつけ引き込まれます。
大自然vs人の信念。大自然は山海や自然現象、時には野獣となって抗う人間と対峙し、命のやり取りに転じます。自然の懐に抱かれずして人はどんな未来が待っているのだろうなどと思いながらの完読でした。私が生まれる以前の作品ばかりですが、ストレスフリーで読めました。
『強力伝』力み過ぎて肩が凝りました。
『八甲田山』『凍傷』皮膚がチリチリとします。
『おとし穴』まんが日本昔ばなしに出てきそうな話で結末がなんともイタイ。
『山犬物語』『孤島』山と海、背 -
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ウィキペディアで「日立鉱山の大煙突」と検索すると、本書の基になった実話が出てくる。
現在の茨城県日立市の日立鉱山では、銅の採掘と精錬を行っていた。銅を精錬する際には、有害なガスが発生し、周囲の集落の作物や木々を枯らす等の深刻な被害が出ていた。それは、日立鉱山ばかりではなく、他の鉱山、例えば、足尾銅山や別子銅山でも同じであり、日本で最初の公害問題である。各銅山では、会社側が周囲の住民が被った被害に対しての賠償を行っていたが、その賠償の方法や額をめぐっては、少なからぬ摩擦が生じていた。日立鉱山では、賠償に加え、被害そのものを軽減するために、高さ156メートルの大煙突を建て、有害な煙を広範囲に拡散さ