宇江佐真理のレビュー一覧
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内容(ブックデータベースより)
不破龍之進ときいとの間に長男が生まれ、伊三次一家も祝いのムードに包まれる。松前藩の屋敷に勤める龍之進の妹の茜は、嫡男の良昌に見初められ、側室に望まれていた。伊三次の息子、伊与太に思いを寄せる茜は、その申し出をかわしていたが、良昌の体調が刻一刻と悪くなっていくことに心を痛める。一方、伊与太は良い師匠に恵まれたものの、才気溢れる絵を描く弟弟子から批判され、自らの才能に悩んでいた。思い詰めた彼は、師匠と親交のある当代一の絵師、葛飾北斎のもとを訪れる――。人生の岐路を迎える息子や弟子に、伊三次は何を伝えられるのか。大人気捕物帖シリーズ第13弾。
令和6年10月27日 -
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ネタバレ料理茶屋の主人、清兵衛は、隠居を機に死の恐怖に取り憑かれるが、霊感のある幼馴染、甚助に救われる。その甚助に誘われ、怪異を語り合う「話の会」に参加するようになると、徐々に元気を取り戻していく。ところが、会の参加者が一人、また一人と、怪異と死に近付いて行ってしまい‥。
最初は、登場人物たちが百物語を語っていく短編集かなと思っていたら、違った。実際に見聞きしたことを語り、その考察を参加者たちで重ねる。語られる怪異に派手な怖さはないものの、じわじわ、そろそろと、こちらの心に忍び寄ってくる。
清兵衛と甚助、幼馴染同士の、くだけているけど信頼し合っているのが伝わるやり取りが、一服の清涼剤だ。
会の参加 -
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吉原の風雅な情景と色恋の悲哀が見事なコントラストとなり、物語世界に惹き込まれました…!
旦那の死や息子の結婚を機に吉原の遊郭でお針子となった「おとせ」を主人公に、吉原の美しい四季折々のなかで繰り広げられる様々な恋愛模様を描いた短編集。
吉原の年功行事には驚かされると同時に当時の華やかさを感じました。
例えば、巻頭の「仲ノ町•夜桜」では桜の木が葉桜になる前に根こそぎ刈り取り、また季節がきたら植え直すという吉原の習わしが出てきます。
なんて贅沢な…と思ってしまいますが、その絢爛さが作中の悲恋をより際立たせ、それぞれの話を魅力的にしています。
個人的にはそれが極まる「くくり猿」が好きで、江戸の -
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ネタバレ合縁奇縁という言葉あるが、気心が合わない環境にいるなかで気持ちの合う人と結ばれるのは微笑ましい。そしてそれが淡く哀しいラストになるのが好きな自分としては本作はとても良かったです…!
本作のメインは山育ちの平民である遊と将軍の御子である斉道のラブストーリー。
遊も斉道も尋常の男女ではないが、それ以上にどちらも環境に対して不服を抱いてる点でも共通している。
遊は赤子の頃に誘拐され、自由奔放な山暮らしをしていた。そこから実の親のいる人里に戻り、山暮らしとは違う環境で周囲から浮き、社会の習わしや周りからの奇異の視線に窮屈さを感じている。
その一方、将軍十七男で将軍の実子であることを証明しようとする -
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作者の宇江佐真理さんの環境の変化もあり、優しい雰囲気が増しています。
あやめを丹精することが生きがいの老婆が、庭で頭を打って亡くなってしまう。彼女の部屋から高価な持ち物が消えていることを不審に思った息子は、伊三次に調査を依頼する。暗い過去を持つ、花屋の直次郎が疑われるが……。(「あやめ供養」)
伊三次の弟子、九兵衛に縁談が持ち上がる。相手は九兵衛の父親が働く魚屋「魚佐」の娘だが、これがかなり癖のあるお嬢さんだった。(「赤い花」)
浮気性で有名な和菓子屋の若旦那は、何度も女房を替えているが、別れた女房が次々と行方知れずになるとの噂があった。このことを聞いた伊三次は同心の不破友之進に相談する。 -
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ネタバレ目次
・落ち葉踏み締める
・雪まろげ
・紅唐桟
・こぎん
・鬼
・再びの秋
古手屋というのは、今でいう古着屋。
江戸時代の庶民は、今よりもはるかに古着に対する抵抗がなかったので、それほど儲かる商売ではないにしても、食うには困らなそう。
そして、古手屋のかたわら、同心の手下でもある。
面白いのは、普通の時代小説では、同心、岡っ引き、下っ引きは、心をひとつにして事件の真相解明に奔走するのだけど、この喜十は、っていうか、同心の上遠野(かどの)平蔵が、ケチでしみったれで人の心を逆なでにする発言を多発する男で、喜十は必ずしも上遠野に絶対的な信頼を置いていない。
しょっちゅう心の中で悪態をついている。