あらすじ
怪異の裏になにかがある!?
料理茶屋の隠居・清兵衛は働きづめの日々が終わったことで
いつしか死の恐怖に取りつかれ、余命いくばくもない有り様に。
幼馴染の甚助のお陰で危機を脱し、怪奇譚を語り合う「話の会」に
参加することで逆に自分を取り戻した清兵衛だが、
ほっとしたのも束の間、会の周辺で不穏な出来事が起こり始めて……。
〈死への恐怖〉をテーマにした異色の傑作時代小説。
解説=朝宮運河
※この電子書籍は2010年1月に刊行された文春文庫の新装版です。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
やっぱり宇江佐さんの話はいいなぁ。
平野屋、清兵衛が自身の病をきっかけに幼なじみ甚助に連れられた百物語の会。
怖い話を聞いて、受け入れて死の恐怖をなくそうというのだが、この会の話が絶妙に怖い。
じわっと、ふと怖くなる感じ。
日常に近いところにふとある見たら引き返せない暗い穴に気づいたような感じ。
ただの百物語が続くと思いきや、彼ら自身が不思議な事象に遭遇していく。
菓子屋の主人の話は怖かったなぁ。
救いがない。
物語は予想外の結末で、最後までぞくっとしてしまった。
Posted by ブクログ
料理茶屋の主人、清兵衛は、隠居を機に死の恐怖に取り憑かれるが、霊感のある幼馴染、甚助に救われる。その甚助に誘われ、怪異を語り合う「話の会」に参加するようになると、徐々に元気を取り戻していく。ところが、会の参加者が一人、また一人と、怪異と死に近付いて行ってしまい‥。
最初は、登場人物たちが百物語を語っていく短編集かなと思っていたら、違った。実際に見聞きしたことを語り、その考察を参加者たちで重ねる。語られる怪異に派手な怖さはないものの、じわじわ、そろそろと、こちらの心に忍び寄ってくる。
清兵衛と甚助、幼馴染同士の、くだけているけど信頼し合っているのが伝わるやり取りが、一服の清涼剤だ。
会の参加者からは複数の死人が出る。ついには、甚助まで!でも清兵衛は、会の活動を通してあの世や死に触れてきたことで、死への恐怖を乗り越えたのだ。寂しいけど、怖くない。死は、生と地続きなのだと、読者である私もだいぶ考えさせられた。
怖い話としても、十分楽しませてもらった。
それにしても、清兵衛が53歳で隠居って‥。今の時代で70歳くらいの感覚だろうか?