宇江佐真理のレビュー一覧
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大好きな宇江佐真理さんの作品。
生薬の問屋を営む与平は、息子たちに身上を譲り隠居となった。いつまでも口を出していては一人前にならない。
湯屋で、身の上話を耳にするたび、こうして聞いてくれる人がいる人はいいが、誰もいない人はどうしているのだろう?
「聞き屋」を始めようと店の裏口に机を出して商売が終わった時間から始めることにした。
与平はこの聞き屋で知った貧しい娘を救ってやろうとしたり、また、ただ聞くことで心を休ませる場所にした。
与平の父親は、生薬や問屋の番頭だった。
その店の一人息子はどうしようもない男で、店を潰しそうな浪費家だった。
ある時火事に巻き込まれ死んでしまった。
与平は他の薬屋で手代をしていたが、店の後始末をして看板だけもらった父親の手伝いをして店を大きくした。
その火事のことで地元の岡っ引きにしつこく見殺しにしたのではないか?と言い寄られている。
そんな岡っ引きも死に、、、。
この作家さんの物語は眼に見えるような江戸情緒と、しっとりと貫かれた登場人物の心模様の緻密さリアルさが身上。
まるでそこに自分が立っていたのではないか?と思えるほどの作風。
2度目の読書だが、今回も大満足だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレどこで購入したか記憶していない…シリーズ2冊目だが、一冊目を持っているワケでもない。大好きな宇江佐真理の作品なので手にしたのだと思う。古手屋(古着屋)に同心が手先的な事をやらせている。その事件(?)簿的な短編集。とにかく宇江佐真理のストーリーテリングっぷりが素晴らし過ぎて、あっという間に江戸の生活が立ち上がり、連れて行かれる。古手屋の喜十は正義感などでこの仕事をしている訳では無い、駄賃も無くて嫌々だ。でも、心根が真っ当だから、見て見ぬふりが出来ない…という感じ。始めの一作で宇江佐真理の作品だったと思わされる。父親が亡くなり、母親一人で5人の子供を育てている貧乏長屋の親子。貝を剥いて具にして売ってカツカツの生活、14の長男が蜆を取って、売って助けている。14と言ったら今で言えば中学生だ、寺子屋で勉強出来ると言われていたが、父親が亡くなり、行けていない。現代の話かと思う。親の稼ぎが子の教育格差に繋がるわけだ。母親は12才の長女を吉原に売り飛ばし、更に末っ子の乳飲み子を捨ててくるように長男に言いつける。長男は歯を食いしばって、なるべく良いお家にと、浅草の喜十の家にたどり着く。しかし…すぐ下の弟を連れて様子見に行った事から母親に知れ、たかろうとする母親を手にかけてしまう。やり切れない筋だ。そして、川に身を投げる…、この後誰かが助けに…とか、運良くナントカ…と続きそうだが、そこは宇江佐真理だ。容赦ない、と言うかウソがない。彼は土左衛門となって発見される。リアルでシビアだ。江戸であれ、現代であれきっとどこかで起きていそうで本当に悲しくなる。彼の見た最後の景色が美しい星空で美しいと思えたのが救いだ。そこは決してクローズアップされることは無いのが宇江佐真理の本で、そこが本当にたまらない。この後に続く短編では少しづつ喜十が引き取った捨て子が大きくなり、絡んでくるのが面白い。そして、この子の生き別れた兄姉にも続いていく。同心は決して悪い人ではないが「こすっからい」ままだ。続きが読みたいシリーズだが、それもままならない。それが本当にやり切れない。
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Lampの岩さんにお勧めされて以来、宇江佐真理さんの作品にはずるずるズルズルと引きずり込まれっぱなしです。うちにはまだ平積みにされた、読まれるのを待っている本が山になっているというのに!
…なのに、徒然舎の書棚で見つけて手に取ってしまいました。もちろん買っちゃいました。その時読んでいたのがカミュの「ペスト」で、翻訳物が苦手な癖して時節柄読んでみようと思ったのだけど、時間がかかるかかる、早く紫紺のつばめを開きたい!と思っていたので、ペストを読み終わったら即!読み始めました。
紫紺のつばめはシリーズ2作目の文庫本なのだそうで、もう一冊一緒に手に入れた作品を読むべきか、シリーズ第一作を探し求めて読むべきか、ちょっと悩ましいけれど、きっと執筆された順に読みたくなるんだろうな、と思うので、一旦、宇江佐真理作品から離れて(相当の我慢をして!)シリーズ作品を全部揃えてから読むことにしようと思います。
宇江佐真理の描く江戸の風景を想像していると、江戸時代に暮らしてみたかったなぁ、と思わずにはいられません。今とは尺度が全く違うのはもちろんでしょうが、それでも、この物語の中に生きることができたなら、それはそれで幸せなんじゃないかな、と思うのでした。 -
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ネタバレ目次
・空似
・流れる雲の影
・竃(へっつい)河岸
・車軸の雨
・暇乞い
・ほろ苦く、ほの甘く
・月夜の蟹
・擬宝珠のある橋
・青もみじ
単行本の最終巻『擬宝珠のある橋』収録の短編3本も収録された、文庫本のシリーズ最終巻。
まだ、まだまだこの先の話も読みたかった。
突然話に復活してきた薬師寺次郎衛が、この先どんな親分に成長するのか。
作者はどうして次郎衛を復活させたのか、その真意がわからないまま尻切れトンボになってしまったのは、全くもって惜しい。
そしてこのシリーズでずっと私が好きだったのは、とにかく伊与太が出てくるシーン。
「おいら、いい子だから、わがまま言わなかった」と泣いた伊与太。
「おっかさんが、いっち綺麗」という伊与太。
茜にわがまま言われても「お嬢」を立てることを忘れない伊与太。
小さかった頃の伊与太の姿は、いつでも目の前に鮮やかに浮かぶのだ。
そんな伊与太が、どうしても許せないことがあって師匠の家を飛び出した。
「おいら、行くところが無くなっちまった」と北斎の前で泣く伊与太。
せめてせめて伊与太の行く末だけでももっと読み続けたかった。
そんな詮無いことを思い、後ろ髪を引かれる思いで巻を置いた。 -
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ネタバレこの巻は伊三次の弟子の九兵衛の巻でした。
『あやめ供養』で事件を解決した伊三次は、礼がしたいという町医者松浦桂庵に弟子の九兵衛のための台箱(道具箱)をねだります。
そしてその九兵衛に縁談が舞い込む『赤い花』。
その相手は魚問屋のおてんちゃん。男勝りどころか中身はほとんど男だという。
おてんちゃんが娘らしくなるまで待ってやれという伊三次。
九兵衛もいつの間にかお嫁さんの話がでるくらい大人になったのだなぁと、このシリーズの経てきた年月を思いました。
そして悲しいことが一つ。不破龍之進の妻、きいが流産したのです。
偶然きいと会った伊三次は慰めますが、きいの心はまだ癒えなそうです。
九兵衛の台箱が出来上がり、伊三次は“道具開き”として祝いの席を設けることにします。その準備の間にも事件が起きる『赤のまんまに魚そえて』。
道具開きの席で用意された赤飯と鯛を、若旦那のために罪を被ろうとしている女中のあさに差し入れした伊三次。
それによってあさは…。
人の情けが心を動かします。
『やぶ柑子』は藩がお取り潰しになり浪人になった夫婦の話です。
伊三次の家の女中おふさが住んでいる裏店に引っ越してきたその夫婦。伝手を頼ってどうにか士官の口を探しているのですが…・
その旦那様が良い人で、後にお文が「まるで神さんみたいなお人さ」と言ったぐらいです。
幸せになって良かったと思いました。
この巻の中で一番印象に残った話でした。 -
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幕末から戊辰戦争終結後の長崎、江戸、蝦夷において、女性ながら男装して、お雇い外国人の通訳にあたった「お柳」の物語。箱館戦争から北海道の開拓に深く関わった榎本釜二郎(武揚)との関係を中心に描かれているが、お柳の潔さ、一途な姿勢が、湿っぽくなくてとても好感が持てる。当時女性は通詞(通訳)にはなれない文化であり、男装していたお柳の記録は公式には一切ない。記録と取材に基づいてはいるものの史料は少なく、かなりの部分が作者の想像の産物であるが、登場人物(お柳、榎本、土方など)の人生がこのようであったらなあと思わせる心地よい読後感を味わえる。幕末から戦中戦後の物語を読むといつも思うのは、志とか大義とか言って意思決定するのはいつも男性、それに巻き込まれて悲惨な目にあうのはいつも女子供。