宇江佐真理のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
人気シリーズの14作目。
ただし、初の文庫書下ろし。
8作目の「我、言挙げす」のラストで火事があって家を無くした伊三次とお文一家。
9作目「今日を刻む時計」では、10年がたっていたのです。
この10年間の空白に起きた出来事を描く内容になっています。
伊三次の妻で芸者のお文は、父親を知らずに育ちましたが、しだいに察してはいました。
お座敷の客として訪れた侍の海野との偶然の出会いから、互いにそれと気づきます。
さっぱりした気性のお文の、胸のうちに秘めた思いが切ない。
互いに名乗りはしないまま、手を差し伸べてくれる実の父親の気持ちを受け取ります。
祖父とは知らずに懐いていたお文の息子の伊予太。
子供の言葉がタイトルというのもいいですね。
一方、不破の息子龍之進ら奉行所の見習いの若い者らは、無頼派を名乗る若者集団を追っていました。
事件が落ち着いた後にふと出会い、互いを認め合う成り行きがまた妙味があります。
伊三次が焼け出されて、お文と離れていた時期の出来事。
不破友之進の妻いなみの、年を重ねた妻の思い。
一捻りした味わいが深く、読んでいてこちらも江戸市中をさまよい、人の心にまで共感したような心地になりました☆ -
Posted by ブクログ
2015年に「オール讀物」に掲載され絶筆となった3話に、2014年の文庫書き下ろし「月は誰のもの」、2014年のシリーズ10作目の文庫化に当たっての所感を追加した単行本化で、シリーズ15作目の最終巻。
表題作の第2話「擬宝珠のある橋」はいかにも宇江佐さんらしい、人情味あふれる話。
伊三次が得意先にしている店の改築を請け負っている大工の棟梁は、幼い子を抱えた者どうしで再婚し仲むつまじい所帯を持っていたが、その連れ合いの”おてつ”が二昔も前の伊三次の得意先にいた女中だった。前の亭主に駆け落ちされ、蕎麦屋を営んでいた義父母に説得されて今の縁を得たが、義母を亡くして店をたたみ気落ちして甥の世話になってなっている義父を案じていた。
それを知った伊三次が屋台の蕎麦屋をやらせてみたらと勧め、一人前の大工になっている孫たちが屋台を作ってやると、義父は元気になってそばを作りだしたので、伊三次はお文と娘のお吉を連れ祝儀を持って食べに出かけた。愛想のない義父だが、伊三次を見詰める目が違っていたことをお文は見て取っていた。
著者にとって、デビューから書き続けてきたこのシリーズにはやはり特別な思い入れがあるようで、「髪結い伊三次」を書いただけで満足だという。「人が人として生きていく意味を追求したい」のだと語っていて、つきあい続けてきた読者にとっては、感慨ひとしおの言葉である。 -
Posted by ブクログ
髪結い伊佐次捕物余話もシリーズ10作目。
今回は、伊三次の息子の伊予太が戻ってきたのを発端に、さまざまな出来事が絡み合います。
伊予太は絵師の見習いとなっていましたが、兄弟子とけんかになり飛び出してしまう。
詳しいことを話さない息子に、親の伊三次とお文はまずは見守るのみ。
不破の息子・龍之進は前作で、後輩の姉である若い娘きいを嫁に迎えました。
きいの視点からも描かれ、生き生きしたけなげなキャラクターと行動力で、この世界を明るくしてくれています。
町人の出のきいに、妹の茜は違和感を隠さない。
男装で道場に通う茜に、思いがけない縁談が‥
気の強い茜が唯一素直になるのは、幼馴染の伊予太だけ。
身分違いだが、お互いの気持ちは‥?
奥女中に腕の立つ娘を警護役として雇うというのがあるのですね。
事件が起きては解決するうちに、家族にも成長が。
意外な展開の中に、納得のいく流れがあって、なるほど~としみじみします。
それぞれの幸せを祈る気持ちになる読後感。
愛読していたシリーズですが、ちょっと間が開いて、この後書きで作者が闘病中と知り、驚きました。
惜しくもなくなられましたが、まだ読んでいない作品を読んだり、好きな作品を読み返したり、頭の中の世界はずっと続きます☆ -
Posted by ブクログ
今までは「オール讀物」に1年半くらいにわたって掲載してから単行本化していたのだが、病床で書いたためか、デビュー作のシリーズの気になる事柄に決着をつけておきたかったからなのか、初の文庫書き下ろし。
シリーズ最初から見守ってきた読み手へのありがたいメッセージとして受け止めた。
章立てはないが、4つのストーリーが描かれる。
(1〜8)父母を知らずに育ったお文が、十年前父親に巡り会い親子の縁を喜んだ話。泣ける。
お座敷の客として来た隠居の侍海野は、お文を見て美濃屋の内儀が探していた娘ではないかと問う。二人が駆け落ちし引きはがされた後に自分が生まれてたことを知っていたが、相手をおもんばかって否定するが海野は親愛の情をかけてくれた。「月は誰のもの」とは伊与太が海野に問うたことば。
(9〜16)本所無頼派を名乗り鬱憤晴らしに悪さを働いていた旗本の二、三男たちのリーダーだった薬師寺次郎衛に、不破の息子龍之進が邂逅し、互いを認め合う話。
龍之進ら奉行所の見習い組は、彼らを捕らえようとして最後の誘拐事件を解決するが、誰も捕らえられなかった。龍之進が荒れていた時期になじんだ芸者小勘が、勘当されて駄菓子屋の親父となった次郎衛と暮らしていた。
(17〜23)焼け出されてお文と別居していた時期の伊三次の、おでん屋の女将との淡い思いと捕り物の話。
(24)不破友之進の妻いなみの、嫁と不破への思い。 -
Posted by ブクログ
人気シリーズ。
大火の10年後、無事に暮らしている人々に起きている変化は‥?
髪結いの伊三次と妻のお文は大火事で家を失ったものの、家族は無事。
その後に生まれた娘のお吉もすくすく育って、明るさを振りまいています。
伊三次は義兄が倒れたために、義兄の店を半ば継いだ状態で働き、お吉もその店に通っています。
不破の息子の龍之進は、芸者のお文の働く料理茶屋に入り浸りとなり、まわりに心配をかけている状態。
というのは一人だけ結婚が決まらず、その理由というのが‥
とはいえ、仕事となれば駆けつけ、周りが困っているところに乗り込んで、勢いで捕縛したりするのが妙にカッコイイ。
このくだりは新作歌舞伎になりそう!
(海老蔵に似合うでしょう)
大店の娘おゆうが龍之進の母いなみに行儀見習いに来たり、そこへ妹の茜やお吉も参加したりと、それぞれ違う個性が出会い、巣立っていく様子が描かれます。
龍之進の後輩の姉に、いきのいい女の子が登場。
恋愛模様が多い回でしたね。
伊三次とお文もそれぞれにらしさを発揮する機会があり、満足な読み応えでした☆
作者急逝は惜しまれますが‥
読んでない作品を大事に読んでいきたいと思います。 -
Posted by ブクログ
髪結い伊三次捕物余話、8作目。
2011年には出ていたんですね。
主人公はシリーズ名どおり、廻り髪結いの伊三次。
町方同心不破友之進の手伝いもしているのですが、息子の龍之進の力になる機会も増えています。
じつは‥若い世代の話ばかりで、伊三次以上にごひいきだった妻で芸者でもあるお文の出番が少ないのでちょっと飽きてきて、しばらく読むのを休んでいましたが。
やっぱり、好きなシリーズです☆
龍之進も番方若同心になり、進境を見せるところがすがすがしく、頼もしい。
「委細かまわず」では、上役の小早川と対峙して成長していく。
「黒い振袖」では、ある藩の姫が行方不明となった事件を若手で捜査することに。
お家騒動の渦中にあり、喪服がわりに黒い振り袖を着た、かがり姫。
ひととき危機を共にしたことで、忘れられない相手に。
「明烏」は、久々にお文が主役。
夢の中、異界へ迷い込んだような形で、生みの母のいる美濃屋に引き取られた場合の生活ぶりが描かれます。
嬉しさと違和感と寂しさと。
そして、今の幸福をかみしめる。
いい味わいの話でした。
「我、言挙げす」という題は、内容が想像できませんでしたが、いい言葉ですねえ。
龍之進は、かって上司の不正を告発しようとして閑職に追いやられた人物・精右衛門へ、「言挙げなさった」という言葉で、共感を伝えるのです。
ラストは火事で家が焼けてしまうという衝撃的な結末ですが、この続きで暮らしが立ち直っていく様子もちゃんと出版されているので、続けて読みつなぎましょう☆ -
Posted by ブクログ
伊佐次シリーズ第10弾。今回は息子の伊予太の周りで起こる 出来事が中心。 不破の息子、龍之進ときいの祝言。 きいちゃんのキャラクターがとっても魅力的。 きっと今後大活躍しそうな気配。 このシリーズのよさは、日々の些細な会話のなかに 琴線に触れる言葉がたくさんちりばめられていて、胸がきゅんきゅん するところ。
それと、ちょいちょい出てくる夫婦間のいちゃこら(^^)これがたまらん(笑)
伊佐次とお文さんと共に私も成長している気がする。10年前に初めて読んだときは、まだまだやんちゃだったけども いまや落ち着いたいい夫婦。見習いたいところが多い。
あ~、それにしても・・・それにしても・・・。
毎回楽しみにしている宇江佐さんの「あとがき」は衝撃でした。
病気療養中とのこと、どうぞどうぞお大事に、そしてどうか克服してください。応援しています。