宇江佐真理のレビュー一覧
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時代は江戸。出戻りのおふくは口入れ屋の娘。口入れ屋とは、今で言う就職斡旋業のようなもの。奉公人と奉公先を引き合わせるのが仕事。
ただ、良い女中が見つからないときはおふくが駆り出される。様々な奉公先でおふくが奮闘するお話。物語は単発で読みやすい。おふくは奉公先で様々な癖のある人物と出会う。中にはわかりやすく意地悪なイジメをする雇い主も。
どの話も面白かったけど、「名医」と「昨日みた夢」「粒々辛苦」が好きかな。
とにかく主人公のおふくの性格がまっすぐで良い!地味ながらも、人間らしく悩みながら生きる、魅力的な人たちが沢山登場して、時代は全く違うのに共感できる部分がとても多い。おふくが良い子すぎないと -
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人気シリーズも終盤です。
惜しくて、大事に少しずつ読んできましたが‥
廻り髪結いの伊三次は、同心の不破親子の手伝いもしています。
江戸市中で起きるいくつかの事件の探索と交えながら、身近な人間模様を描いていきます。
不破の娘・茜は、松前藩の奥女中。剣の腕を見込まれての警護役ですが、若君に気に入られていました。
側室にと望まれて、最初はとんでもないと思った茜ですが‥
お世継ぎ争いに巻き込まれそうになります。
伊三次の弟子の九兵衛は、大きな魚屋の娘と縁組が決まっていたのですが、身分違いがどうしても気になっていました。祝言を前に、一旦はやめようと決めたのですが‥?
そっと見守る伊三次には、お見通 -
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ネタバレまず…この作品は文庫で読んで欲しい。単行本未収録作品が掲載されています。
江戸市井人情物の新展開、なんと江戸時代の「派遣小説」である。エエとこ目をつけるわ宇江佐先生。
つましくも明るく明日に希望を持つ庶民の暮らしを描く市井人情物。読者層は、現代を一生懸命生きる中でのしんどさつらさを読書で息抜きしようとしている人たちである。であれば、それこそ江戸時代の派遣会社(口入屋)なんてのはうってつけである。
しかも主人公は、色んなやっかいな事情で1年間の派遣期間を全うできない派遣社員の代打を請け負うという苦労人。前の旦那は店の金を持ち逃げして行方をくらました20代のバツイチ、食べるのが趣味…。読者層の -
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宇江佐先生の遺作。未完なのが悲しくて悔しいけれど、うめは今日も頑張ってお江戸を生きているだろうと思えるのがせめてもの救いか。未亡人になったうめは同心の妻だったが元はといえば醤油問屋のお嬢様育ち。夫亡き後思い立って一人暮らしを始め隣人や実家の兄弟や甥との交流を経て、成長しきれなかったお嬢様のままの自らの心や思い至らなかった亡くなった夫のさりげなさ過ぎて分からなかった優しさにようやく気付く所などはちょっと我が身も顧みて反省をした(笑)。こんなに江戸の市井を楽しむ事が出来る宇江佐先生の新作をもう読む事がないと思うと残念でならない。先生のご冥福を改めてお祈りいたします。
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ネタバレこの巻もとても良かったです。
伊三次と夫婦になり長屋暮らしとなったお文。まあまあうまくやっていたのですが、近所と子どもの夜泣きをめぐって騒動をおこし、長屋を出ていってしまいました。気が強いけれど情も深いお文。そんなお文のことを大切に思っている伊三次。解説にもありましたが、夫婦の絆がちゃんと出来ているようで嬉しいです。そしてお文に新しい命が宿ったようです。おみつにはつらいことがありましたが、きっと乗り越えていけるでしょう。おみつが放った言葉は尋常でない時の言葉なので後で悔やむと思いますが、その言葉を聞いてしまったお文はショックだったでしょう。そういう登場人物たちのありのままの人間らしい言動がこの -
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ネタバレシリーズ二冊目にして濃密な巻でした。
表題作『紫紺のつぱめ』では早くもお文との別れ?と思ったし、『ひで』は惚れた女のために板前から大工になり体調を崩して…という哀れと思える話でした。『菜の花の戦ぐ岸辺』では伊三次がご隠居殺しの下手人としてひっぱられるという衝撃的な展開でハラハラしました。その事件で自分を信じてくれなかった同心不破のだんなと決別し、彼の手先もやめた伊三次でしたが、不破の妻女いなみの仇討事件に巻き込まれてしまう『鳥瞰図』。そしてお文の女中おみつのかどわかし事件『摩利支天横丁の月』。
次から次へと事が起こり、読者を引っ張っていく力はすごいです。伊三次は結局不破の元に戻ることになるのだ -
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人気シリーズの14作目。
ただし、初の文庫書下ろし。
8作目の「我、言挙げす」のラストで火事があって家を無くした伊三次とお文一家。
9作目「今日を刻む時計」では、10年がたっていたのです。
この10年間の空白に起きた出来事を描く内容になっています。
伊三次の妻で芸者のお文は、父親を知らずに育ちましたが、しだいに察してはいました。
お座敷の客として訪れた侍の海野との偶然の出会いから、互いにそれと気づきます。
さっぱりした気性のお文の、胸のうちに秘めた思いが切ない。
互いに名乗りはしないまま、手を差し伸べてくれる実の父親の気持ちを受け取ります。
祖父とは知らずに懐いていたお文の息子の伊予太。
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2015年に「オール讀物」に掲載され絶筆となった3話に、2014年の文庫書き下ろし「月は誰のもの」、2014年のシリーズ10作目の文庫化に当たっての所感を追加した単行本化で、シリーズ15作目の最終巻。
表題作の第2話「擬宝珠のある橋」はいかにも宇江佐さんらしい、人情味あふれる話。
伊三次が得意先にしている店の改築を請け負っている大工の棟梁は、幼い子を抱えた者どうしで再婚し仲むつまじい所帯を持っていたが、その連れ合いの”おてつ”が二昔も前の伊三次の得意先にいた女中だった。前の亭主に駆け落ちされ、蕎麦屋を営んでいた義父母に説得されて今の縁を得たが、義母を亡くして店をたたみ気落ちして甥の世話に -
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髪結い伊佐次捕物余話もシリーズ10作目。
今回は、伊三次の息子の伊予太が戻ってきたのを発端に、さまざまな出来事が絡み合います。
伊予太は絵師の見習いとなっていましたが、兄弟子とけんかになり飛び出してしまう。
詳しいことを話さない息子に、親の伊三次とお文はまずは見守るのみ。
不破の息子・龍之進は前作で、後輩の姉である若い娘きいを嫁に迎えました。
きいの視点からも描かれ、生き生きしたけなげなキャラクターと行動力で、この世界を明るくしてくれています。
町人の出のきいに、妹の茜は違和感を隠さない。
男装で道場に通う茜に、思いがけない縁談が‥
気の強い茜が唯一素直になるのは、幼馴染の伊予太だけ。
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今までは「オール讀物」に1年半くらいにわたって掲載してから単行本化していたのだが、病床で書いたためか、デビュー作のシリーズの気になる事柄に決着をつけておきたかったからなのか、初の文庫書き下ろし。
シリーズ最初から見守ってきた読み手へのありがたいメッセージとして受け止めた。
章立てはないが、4つのストーリーが描かれる。
(1〜8)父母を知らずに育ったお文が、十年前父親に巡り会い親子の縁を喜んだ話。泣ける。
お座敷の客として来た隠居の侍海野は、お文を見て美濃屋の内儀が探していた娘ではないかと問う。二人が駆け落ちし引きはがされた後に自分が生まれてたことを知っていたが、相手をおもんばかって否定す