宇江佐真理のレビュー一覧
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時代は幕末から明治。
江戸の錺職人の父平兵衛は、外人の国への土産の簪
などを依頼されて作っていた。名人。
意匠を依頼主の外国人と通詞を介して話すのに、
江戸っ子の父親は回りくどいと感じて、
自分でオランダ語会話を独学で習得。
そんな錺職人を幕府の役人が放っておくわけがない。
通詞の最下級の「稽古通詞助」の少し上「小通詞並」
として出島に派遣される。
もともと外国語習得が得意な父平兵衛はみるみるうちに、
英語、フランス語にも意欲を見せる。
平兵衛の娘「柳」もフランス語を学びたいと父に教わる。
平兵衛と江戸時代から懇意にしていたのが榎本釜次郎。
子供の頃から密かに釜次郎に思いを寄せる柳は
フランス軍の兵法を教えるフランス人たち軍人らの世話を頼まれ、
男装して仕事をする。
榎本釜次郎は五稜郭で官軍に反旗を翻した張本人だが、
幕末から続く戦で坂本龍馬を始め
多くの人材を失った政府は、釜次郎の人物ぶりを惜しみ、
助命嘆願運動がおきた。
アラミスと言うあだ名はフランスでも高く評価され、
日本でも後から勲章を受ける生え抜きの
フランス軍人ブリュネがつけた名前で、
あの三銃士の小柄なアラミスを彷彿とさせるため名付けた。
このあまりにも、ノンフィクションかと思わせる物語は、
実はこのような男装の女性フランス通詞は他に本当に存在する。
ブリュネによるスケッチにも描かれている。
『田島勝』と言うらしいが、何しろ女性通詞は認められていないため、詳しい記録が残っていない。
後から調べるまで、全部本当のことと、思い込みたくなる
実にリアルな物語に仕上がっている。
登場人物柳の家族以外は、かなり史実に則している。 -
Posted by ブクログ
日に日に夫の正一郎が苦手になる。
融通が利かなく短気である夫は物言いも冷たい。
隠密周りの同心で、颯爽と歩く姿に一目惚れして、
嫁いだはずなのに。
いまだに、独身時代に惚れた相手が忘れられないのだろうか。
それに比べて、食いしん坊の舅、忠右衛門はいつも優しく
「おのぶ、おのぶ」と可愛がってくれる。
愉快な話をしては笑わせてくれる。
姑は、気っ風がいい女性で、
裏も表もない気持ちのいいさっぱりとした性格。
忠右衛門はそんなおひでに頭が上がらない。
食べ物に好き嫌いが多く食べれる物が少ないおのぶは、
いつも夫に叱られる。全てがそうだ。
だが、口答えせずに嵐が過ぎるのを我慢してるうちに、辛くなり
家を出る決心をする。
夫婦といえども、いつの時代にも心のすれ違いはある。
上手に言葉を見つけられない二人であれば尚更だ。
苦労人の舅姑はただ見守るが、、、。
奉行所の同心の一家ということで、いくつかの事件が絡む。
絡みながら、人の心は離れたり、もう一度近づいたり。
それぞれの不器用な若夫婦は、いつしか本音を話し合い、
本物の夫婦になる。
二人だけでなく囲んだ家族や親戚、
同じ敷地に住む太鼓持ちなどに見守られながら成長するのだ。
心温まるいいお話であった。
題名のように当時江戸の評判の料理や、
日常に食べていた料理の名前がそれぞれ章の題名になっている。
「卵ふわふわ」は一度壊れた夫婦が再生するきっかけの料理。 -
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ネタバレ伊三次が、行き違いで文吉と仲違いをする。
そんな折、幼い女の子のいたずら目的のかどわかしが続いた。伊勢忠の娘の手を引き桜見物をして居た文吉の所の女中おみちの気がそれたところ、かどわかされた。
事件は直ぐに解決し犯人も捕らえられた。
長く修行した板前の仕事を、大工にならなきゃ娘はやれぬ、と言う一言で幼馴染が慣れない大工の修行も半ば、死んでしまう。
糸惣の隠居した旦那惣兵衛が殺された。
息をひきとる時に伊三次の名前を言ったと言う女中の証言で、殺人犯として捕らえられる。
最後まで信じ庇ってくれなかったことに腹を立てて、不破の小者をやめた。
ヤクザにならずに済んだ恩義がある不破の女房の、仇討ち未遂をとめることに。
だが、文吉の女中おみちのかどわかし事件にあい、捜査に加わる。。。。
次々と事件が起こるが、ホロリとくる人情の機微がなんとも素敵な読みごこち。 -
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ネタバレこの本が受賞作で、デビュー作でもある。
北海道に居ながら江戸の時代物を書く作家。宇江佐真理の文章は、湖のさざ波のように、穏やかだ。小さな波が繰り返すうちに、登場人物の像は深くくっきりと生き生きと動き出す。江戸の市井の人情と粋とやせ我慢。
みんなみんな一生懸命生きている。
ワクワクするようなドラマティックなストーリー展開ではないが、しみじみと読むうちに、ハマる宇江佐ワールド!
連作はまだまだ続くが、この作家さん、今はもう生きては居ない。新作ができないことが悲しくなる。
この本からシリーズ化されるのは、『髪結伊三次捕物余話シリーズ』文庫本サイズで読みたいシリーズ。 -
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「髪結い伊三次捕物余話」も終盤にさしかかっています。
お気に入りのシリーズ、ゆっくり読んでいます。
伊三次は義兄の髪結い床(床屋さんですね)も手伝いつつ、廻り髪結いの仕事も続けています。
伊三次と芸者のお文の息子・伊与太は、絵師に弟子入りしていましたが、師匠が急逝。
すぐには落ち着き先が決まらず、ひそかに恋する茜のことに思いを馳せます。
不破友之進の娘・茜は松前藩の奥女中となっていますが、剣の腕を生かすための警護役なので男装。表紙の若衆髷のきれいなお兄さん?が茜なのです。
藩では跡継ぎが病弱なため、お家騒動が持ち上がりかけていて、若君に好かれている茜は巻き込まれていきます。
そんなとき‥?
気丈な茜がふと見せた涙の理由が切ない。
伊与太は人気の若手絵師のところに手伝いに入ることとなり、葛飾北斎のところを尋ねるときに同行できたのも楽しい。
伊与太の妹は女髪結いになりたいと言い出すし、若い世代がいきいきしています。
大人世代もそれぞれに活躍どころを見せ、いくらかは不安もありつつ、長年の知り合いを見守るような気持ちになれて、心温まる読後感でした。 -
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ネタバレもし、あの時違う選択をしていたら別な人生があったのではないか…。誰もが一度は思ったことがあるのではないでしょうか。
お文も生活に追われる忙しない日々の中、辻占いの女に声をかけられ、もし大店の娘という選択をしていたらと思ってしまいます。そして頭を打った拍子にお文は大店の娘という生き方を選んでいたことになっていました。果たして幸せな人生が待っていたのでしょうか…。
そんな不思議な出来事の話『明烏』を始め、番方若同心となった不破龍之進の成長していく日々を描く『委細かまわず』『黒い振袖』等々、心に残る話が多かったです。
そして何より表題作『我、言挙げす』。
またまた火事に巻き込まれ、家を失った伊三次。気の毒すぎて声をかけられない父達を横目に、幼い時から自分を励ましてくれた伊三次にこれからも頑張って生きて欲しいと願い、声をかける龍之進。胸がつまります。表題作で終わったこの巻。次の巻ではどうなっているのか、すごく気になります。
作者のあとがきもとても共感できました。
宇江佐さんの作品、これからももっと読みたかったなぁ…。