宇江佐真理のレビュー一覧
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ネタバレ文庫まるごと書き下ろしという贅沢な1冊。
『無頼派』と『純情派』(中二病的で恥ずかしくなるけど、当時彼らそれくらいなんだよね)の決着やら、お文の父親のこと、不破さんちの長男のやさぐれに巻き込まれた感がある芸者さんのその後など、気になっていたいろいろなことをこれでもかというほど、書いている。
個人的には緑川さんちの御新造があのぎすぎすした家庭や男衆や奥さんをなごませてくれているエピソードがよかった。
不破さんちの奥さんも1巻の頃と比べると大人になって、自分の人生をいいものだと受け止められる度量も出てきてよかった。
伊三次の浮気未遂事件もいつもの宇江佐さんなら嫌な終わり方をしそうだけれど、ほろ苦いくらいで終わっているし、それなりにすっきりした終わり方。
家を乗っ取られた娘さん姉妹も性格がよい子で、容疑者になった奉公人を思いやってるし、その奉公人もご主人夫婦を本当に慕っているし、姉妹のおばさんも殺されたご夫婦もいい人ばかりで、悪い人は真犯人のみという、どうしたんだ、宇江佐さん! めっちゃいい話のうえにラストも放り投げたような書き方じゃない。
後味のよい番外編集でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレあとがきにもあるように、作者は現在闘病中である。
筆を折ることなく淡々と仕事をされているが、ほんの少しだけ作風が変わったように思える。
たとえば、『やぶこうじ』。
宇江佐さんの黄金パターンだと、理不尽にも浪人になってしまった主人公はさんざんひどい目にあったあげく、絶対奥方は姉のところに行くふりして浮気、もしくは身売りして、伊三次やお文の思いやりは裏切られ、最後は奥方を殺して町方にとらえられるんだろうなぁと思ったら、ものすごくハッピーエンドで目を疑った。
宇江佐さんは高田さんと対照的に、世の中そんないいことばかりじゃござんせんぜ、とばかりにまずいものを胃薬なしに読者に飲み込ませる作風だ。
それがこんなにハッピーエンドだなんて!
実はこれは昭和の初期の名作映画のあまりの悲劇的結末に胸を痛めた作者が救いのあるおわりを主人公夫妻に与えたかったのが動機なので、この終わりはなるべくしてなったものだった。
彼女はこの監督が自分の儚い人生を悟って(戦死)、こういうペシミストなものに美学を見出したのだろうと分析しているが、なら、彼女は儚く散ってなるもんですかい、という意気地がこの改変に現れたのだろうか。
他の作品も久しぶりの直次郎が本当にまっとうに生きて、お得意先の老女を慕い、恋女房に悪態をつきながら子供をたくさん作り、姑と軽口をたたく仲良し家族を作っている現在を紹介したり、修行中の伊与太やお嬢がお互いに心の中で泣き言を言いながらも頑張っていたりと、今までの女史の毒が抜けすがすがしいものになっている。
次の巻も髪結い伊三次シリーズはこの感じで書いてほしい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ【本の内容】
男髷を結い、女剣士として身を立てることを夢見る知佐。
行く末を心配した両親が強引に子持ちの町方役人と祝言を挙げさせようとするが―。
幼子とのぎこちない交流を通じ次第に大人の女へと成長する主人公を描いた表題作他、市井の人びとの姿を細やかに写し取る六篇。
中山義秀文学賞受賞の傑作時代小説集。
[ 目次 ]
[ POP ]
浅草や両国を舞台にした、江戸の人々のあたたかさを描いた人情話の短編集。
精一杯に生きて、恋をして、人に対する思いやりを忘れない、人生に真摯に取り組む主人公たちの姿を想像するだけで幸せな気持ちに満たされる。
主人公たちの職業も小間物屋、両替商、染物屋、遊女屋などすぐにイメージできる定番のもので、感情移入しやすい。
必ずハッピーエンドになるのも、読後感が良くて好感が持てます。
中でも私のお気に入りは「あさきゆめみし」。
女浄瑠璃、京駒の追っかけをしている染物屋の正太郎は仲間からも軽んじられている情けない男。
しかし、その友達に京駒を盗られ、持参金のためだけに正太郎の姉と祝言をあげるということを聞き、とうとう堪忍袋の緒が切れた!
正太郎が段々と成長してゆく姿が微笑ましい。
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
Posted by ブクログ
【本の内容】
芸者をやめたお文は、伊三次の長屋で念願の女房暮らしを始めるが、どこか気持ちが心許ない。
そんな時、顔見知りの子供が犠牲になるむごい事件が起きて―。
掏摸の直次郎は足を洗い、伊三次には弟子が出来る。
そしてお文の中にも新しい命が。
江戸の季節とともに人の生活も遷り変わる、人気捕物帖シリーズ第四弾。
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☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
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Posted by ブクログ
前回は不破家の不肖の長男の話でしたが、今回はその妹茜と伊三次一家の長男が中心。
子供のころから気の強い我儘お嬢の茜。
宇江佐さんの描く男勝りの御嬢さんって、結構リアルにやな女の子であることが多い。
負けず嫌いでプライドが高く、自分を守るために周りを傷つけることを正当化するいわゆる自称サバ系というか、嫌われるタイプの女政治家。
茜もそのタイプで、媚びるなんてまっぴら! 若い嫁にでれでれする兄上も下町育ちの自覚のない兄嫁もなんだか許せない! 批判するけど、いびりじゃないもん!
いやはや子供のころから変わってない! てか成長してない! 不破さんちの子育てどちらも微妙に失敗してます!
けれど、伊三次さんちの穏やかな長男といるときは、かわいい。
ぶったたいて泣かせていた幼少時代から彼のことだけは心から信用して懐いている。
そのギャップがかろうじて茜の好感度を保たせている感じの序盤。
伊与太もいい子過ぎたために、我慢しきれず切れた結果、父親の後を継ぐ道を蹴ってまで選んだ絵師の道を逃げ出してしまう。
ここらへんの苦悩の伊三次を見ると、おねーちゃんのあのころの気持ちがやっとわかったか、と思います。
ただ伊三次と違って伊予太は帰るところもあり、どーんと受け入れてくれる肝っ玉母さんもいたので、全然アマちゃん。
どっちがいいかというのは分からないけれど、黙って待ってくれる両親の気持ちもちゃんとわかってるし、意地悪だと思った兄弟子たちに親切にしてもらったことも思い出す素直な伊予太くんを見るにつけ、伊三次や文吉の子育ては成功の部類かも。
伊三次が泥棒されて、相手を訴えるときいなみさんに説得された言葉を思い出します。
勝手な解釈ですが。
伊三次を便利扱いして現在も仲の悪い義理の兄も、伊三次の娘は本当にかわいがっているし、人って変わっていくんだなぁとこの大河シリーズを読んで思います。
表紙の二人の行く末も気になりますが、今回も大活躍だったきいさん、かなりいいキャラでかわいく健気で次回も期待してますが、
宇江佐さんの悪い癖が出ないことを切に願います。
シリーズは大丈夫か、いまのところ… -
Posted by ブクログ
ネタバレ前作から10年、龍之介坊ちゃんは立派にぐれてました。
おかーさん譲りの剣の腕と容貌なのに、嫁の来手がないからです。
しかもその原因は大好きなおかーさんの過去にあったからです。
それに関してはお文姐さんがびしっとしめてくれますが、いなみさんの普段を見ていればわけがあるのだろうなというのは分かりそうなもんだけれど。
そういうことがわからないあたり、若いな坊ちゃん。
もともと女の趣味悪いしな!
1巻のころのかわいいあの子はどこにいったのかと思うほど、おとーさんの悪いところだけそっくりになってきています。
その彼が立ち直り、無事嫁取りをするまでのこの巻。
魅力的な御嬢さんが幾人か出てきます。
作者ごひいきの坊ちゃんの嫁候補なだけあって、いずれも個性的でかわいらしい。
そして坊ちゃんは無事お父さんと同じように『彼女』を『救い出し』にいくわけです。
ひさしぶりに宇江佐さんの小説でさわやかなラストを読みました。
まー、シリーズタイトルに偽りありという気分は抜けませんがね。