藤野千夜のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ショートパンツを穿いてサンダル履き、シャーツの前をはだけて、腹を丸出しにして、裾を風にはためかせている奴の姿を見ると、破滅の予感が沸いてくる。Tシャーツに印刷された絵や文字は、どうにも珍妙で道理に反している。自分の内在している思想や感情を表現しているように見えてしまうことが卑怯すぎる。見えてしまうことによって、人は破滅に向かう。Tシャーツ1枚で偉そうに思想を語った気になる。自分の弱いモチーフを服によって増幅させる。これは刺青をちらつかせて人を威圧するのと変わらない。相応の覚悟もないまま雰囲気だけまとって、さも中身があるかのように取り繕う人間には破滅の道があるだけ。破滅が恐ろしくてTシャーツが着
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Posted by ブクログ
この作者が織りなす悲しみの雰囲気は、少しだけ癖になりそう。
ハッキリと書くことなく、ジワリと滲ませる感じ。
表題作の「夏の約束」について。
MtFの美容師がひょんなことから入院することになる。
友人らがお見舞いに行くと、同じ病室の男性から心無い言葉を聞いてしまう。
"隣のベッドに新しく入った中年男性が、白髪まじりの坊主あたまをなでまわしながら、あんた、おかまちゃんの友だち?とぎすぎすした声で訊いた"
酷い。あまりの無理解さに頭痛がする。
それでも、友人らは抗議することなく、当の本人が苦しむ描写も為されない。
だけど、一人のゲイとして、あえて描かれなかった部分が容易に -
Posted by ブクログ
恋愛小説は苦手な私なので、長編は無理だと思い
短編ばかり集まったものならどうだろうと思い購入。
好きな作家さんのお話が収録されているからというのも
ありました。
読みながら、やはり私は恋愛小説は無理だと再認識しつつ、
それでも印象深いお話や気に入ったお話に出会えました。
それだけでも大収穫かもしれません。
情景が思い浮かべにくい作品から、
読んでいて自分の目の前にスクリーンがあって
そこで話の映像がしっかり流れているくらい
鮮明に思い浮かべるものもあり
さまざまでした。
恋愛小説が苦手な人にも、このくらいの量ならば、
よみやすくていいと思います。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ短編
つるとくまで、少女怪談に出てきた美々加の少し成長したのが出てきてわろたw
亡くなったおばあちゃんが生前に、3つ願い事を聞くと言っていたのを思い出した失業中の奈緒
妹にあこがれ、親が再婚し念願の妹に兄としての情熱を注いだタツ
会社の女子社員と寝たいとつい思い、妻にその気持ちをほんの少し気づかれてしまう二郎
幽霊が見える同級生と、母の恋人のくまさんと、美々加
いい年した息子3人はいつまでも独身で、妹の葬式で自分のときは散骨してもらいたいと思う新平
別れた彼女に草野球の助っ人に来てほしいと言われ、ひそかに復縁を願った信夫
誰からも電話が来なかったら、死のう、と思