藤野千夜のレビュー一覧
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ネタバレドラマ『団地のふたり』を見て、面白かったから、小説にも興味を持って読んで、作者の藤野千夜さんのプロフィールを見たら、この表題作で芥川賞を受賞されてると知ったので、読んでみたくなったから読んでみた。
「夏の約束」
ゲイのカップルの会社員マルオと編集者のヒカル。ヒカルと幼馴染の売れない小説家菊江とその友達の会社員のぞみ。男から女になったトランスセクシャルの美容師たま代。少し外れた人たちの日常を描いた作品。
終盤にたま代が大怪我をする以外は物語が穏やかに、悪くいうと平凡に進行していく。
マルオはしゃれた人だなって思った。どっちかっていうとヒカルのほうが馴染みやすいけど。生き方に信念があって、羨ましい。登場人物が多いんだけど、みんなそのときの状況に合わせて、時に言葉を飲み込みながら生きてるんだなって思った。みんな、強いなって思った。
「主婦と交番」
どうして交番には女の人はいないの?
という小2の娘の一言をきっかけに交番ウォッチングにはまる主婦なつ美とその周囲の話。
変な小説だった。
なつ美が交番ウォッチングにハマったのは娘の一言ではあったけど、ご近所とよし子さんに「なんで交番なんか見てんの」と聞かれた時の「わかんないけど、見てると面白いよ」っていうやり取りが好き。そういう感覚で動いてるの好き。
なつ美が乗り物全般が苦手って、『団地のふたり』のなっちゃんもそうだったから、藤野千夜さんがそうなのかもしれないなと思った。車も電車もエレベーターも苦手、ってなると結構不便だろうなって思った。小説の中だけど、こんな人もいるんだな、私はまだマシかもって、意味もなく比べて元気づけられた。 -
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主人公と、二股をしている彼氏との半同棲生活を描いた話。彼氏の隆文は、主人公に料理・家事の全てを頼り、お金にもルーズで、なにより二股をしているという最悪の男。第三者視点で読むと本当にイライラするし、それを全て許してしまう主人公にも怒りもどうしようもないなぁと思ってしまう。
でもそれを許してしまうのは、主人公にとって隆文の顔がタイプだから。
この理由って本当に大きい。たぶん自分も顔が好きだったらなんでもよく見えてしまう。中身が重要とは聞き飽きるほど聞いた言葉だけど、やはり顔は本能的に惹かれてしまうものの一つで、他のたくさんの欠点をカバーしてしまう最強の武器なのだと実感した -
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奈津子とノエチに再会。
ドラマの小林聡美さんと小泉今日子さんの顔が思い浮かびました。
保育園からの友達関係は、相変わらずのんびりしていていいなあと羨ましい限りでした。
本日の売り上げは、絶妙な品もあって思わずクスッとしたり、本日のお買い物もあまりにもお安い値段のものもあり、羨ましくなったり······。
団地で収穫したいちご、びわ、トマトはもちろん、奈津子が作る料理、〈まつ〉じゃないホットケーキなどなど、食べ物がとてもおいしそうでした。
団地の住人とのさりげない交流、そして生活自体を無理せずにという感じが、とてもいいなと思い読み進めました。2人の幼馴染みならではの会話が楽しい本です。
次回はソラちゃんの絵本ができてるかな。団地の行方も気になるし、またまた団地のふたりにいつか会いたいです。
〈目次〉
第一話 バターをやめた(い)日
第二話 収穫びより
第三話 ちょっと出ようよ
第四話 思いでの食器たち
第五話 いる?いらない?わからない
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不登校の高校生の孫娘とその祖母が、都内と神奈川県内の団地の中のレストランやカフェをめぐる物語。なじみのある小田急線沿線が主な舞台となっているのが、おもしろかった。両親ほど距離が近くないために祖父母とはより気軽な関係を築けるというのは私もよくわかるし、祖母と孫たち・いとこ同士の関係性が微笑ましかった。
アラフィフの私にしてみると、高校を中退するなんて人生の一大事だと思うけれど、「人生詰んだ」というふうに暗く重く考えてしまうこともなく、軽やかに生きる孫娘の姿に、日本社会も変わってきているのかなと思った。
「団地のふたり」も本作も、学校を卒業し就職し結婚し子育てをするというような、「王道」な人生を歩んでいない登場人物たちが楽しそうで幸せそうなのが良いなと思う。
続きそうなので、次作を楽しみに待ちたい。 -
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三十歳、小説家、元実家だったマンションに一人暮らし。最近できた年下の恋人は、前の恋人と切れておらず、そっちの家に帰ることもある。ちゃんとして!と言ってるけれど、するするといって、一向にしない。で、うちに来て、お菓子を食べ、ご飯を食べ、クリーニング代も食費も払わず、子供みたいなことを言う。でも、にははは、にははは、と笑うので、許してしまう。そんな恋人が、ちゃんとした恋人に育ってくれるのかを見守る、一年半。
下宿生の部屋に意味もなく集まって、夜から朝までだらだらしている大学生の感じ、を、三十代になっても続けている人たちの話。大人にならない子供の土地、ネバーランド。特に生産的なことをするでもなく、夜通し鍋を囲んだり、秋鮭を食する会を開いたり、バーベキューをしたり。大勢集まった大晦日、だんだん帰っていく人もいる中、最終的に女三人が残り、元旦もだらだらして、二日になって初詣に行くとか。そういう仲間がいるのがうらやましい。姉びいきの母とか、借金まみれの義兄とか、子供時代に「本人が思うほどには可愛くなかったけれど、勝手な美少女オーラを作り出して、無理矢理女王のように振舞っていた」同級生との邂逅とか、脇も面白い。大人になれないダメ人間のぐずぐずした恋愛模様なのだけど、ああ、こんなダメな人がいてもいいんだと、藤野千夜さんの小説は、いつも安心させてくれる。だから、この恋の終わりが悲しいものでありませんようにと、途中から祈っていた。もうぜったいそっちだと思ってたら、まさかのハッピーエンド。でもそれは、大人になってしまった寂しさの残るものだった。