藤野千夜のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
50歳独身の幼なじみ(桜井奈津子=なっちゃん、太田野枝=ノエチ)が子ども時代から家族で住んでいた古い団地にそれぞれ親と住み(なっちゃん母は親族の介護でしばらく留守)、交流が続いている。
2人とも収入が不安定だけれど、身の丈に合った生活をして、収入があったらちょっとだけ贅沢をする、そんな気の置けない親友とのゆるい生活。
読み手としては、2人とも50歳というところで、この先の暮らしに不安を覚えずにいられないけれど、こんな親友が近くにいて、すぐに会えるって羨ましい。背伸びしない生活、小さな幸せを感じられるのもいいな。
団地がいつか壊されるのでは⋯とちょっと心配。 -
Posted by ブクログ
人生いろいろ、幸せのカタチもいろいろ。
すべてが順風満帆であるに越したことはないけれど、現実はそう上手くはいかないものです。
『じい散歩』に登場する一家は、50代の息子3人が全員未婚。「結婚して子供を持つのが幸せ」というステレオタイプから見れば、彼らはそこから遠い場所にいるのかもしれません。けれど、食卓を囲み、誰を責めるでもなく淡々と、それでいて穏やかに流れる彼らの「フツー」の時間は、私にはとても幸せなものに映りました。
物語の核心に触れる、90代の夫婦・新平とエイコの関係性も印象的です。
かつての不倫を疑い続ける妻と、それを軽やかに受け流す夫。新平が倒れたエイコを前に一瞬見せた「空白の時間」には、長年連れ添ったからこそ蓄積された、言葉にできない葛藤が隠されていたように思います。
家族として長く過ごせば、気に入らないところも当然出てくる。
それでも、誰かを決定的な悪者にすることなく、どこかでガス抜きをしながら続いていく。そんな彼らの生き方は、なんだかとても素敵で、救いがあると感じました。
ラスト、一人旅の宿で新平が考えたのは、明日の計画と、エイコが好きな甘いもののこと。
人生、息が詰まってしまわないように。新平のように散歩や旅でリフレッシュしながら、ほどよく「いい加減」に、軽やかに歩んでいきたいと思わせてくれる一冊でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレドラマ『団地のふたり』を見て、面白かったから、小説にも興味を持って読んで、作者の藤野千夜さんのプロフィールを見たら、この表題作で芥川賞を受賞されてると知ったので、読んでみたくなったから読んでみた。
「夏の約束」
ゲイのカップルの会社員マルオと編集者のヒカル。ヒカルと幼馴染の売れない小説家菊江とその友達の会社員のぞみ。男から女になったトランスセクシャルの美容師たま代。少し外れた人たちの日常を描いた作品。
終盤にたま代が大怪我をする以外は物語が穏やかに、悪くいうと平凡に進行していく。
マルオはしゃれた人だなって思った。どっちかっていうとヒカルのほうが馴染みやすいけど。生き方に信念があって、羨ましい。登場人物が多いんだけど、みんなそのときの状況に合わせて、時に言葉を飲み込みながら生きてるんだなって思った。みんな、強いなって思った。
「主婦と交番」
どうして交番には女の人はいないの?
という小2の娘の一言をきっかけに交番ウォッチングにはまる主婦なつ美とその周囲の話。
変な小説だった。
なつ美が交番ウォッチングにハマったのは娘の一言ではあったけど、ご近所とよし子さんに「なんで交番なんか見てんの」と聞かれた時の「わかんないけど、見てると面白いよ」っていうやり取りが好き。そういう感覚で動いてるの好き。
なつ美が乗り物全般が苦手って、『団地のふたり』のなっちゃんもそうだったから、藤野千夜さんがそうなのかもしれないなと思った。車も電車もエレベーターも苦手、ってなると結構不便だろうなって思った。小説の中だけど、こんな人もいるんだな、私はまだマシかもって、意味もなく比べて元気づけられた。