藤野千夜のレビュー一覧
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サブタイトルや章題に「妻」がつけられた今回は、英子との暮らしや思い出が多めに語られる。そのせいか、家族について考えるきっかけになった。
つくづく家族とは不思議なものである。血が繋がっていようがいまいが、別々の人間であることは違いない。それなのに、当たり前のように同じ家で暮らし、寝食を共にするのである。疎んじたり、憎んだり、情が湧いたり、愛おしく思ったり、相手の事をよく知っているつもりがやっぱりわからなかったり。
そんな家族のやり取りとくれば、じっとりしたお話になりそうだが、そこは良くも悪くも子どもたちにも自由にさせていた新平なので、からりとしている。駄目っぷりも愛情もぎゅっと詰まりながらもおも -
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朝起きて運動をし軽い朝食を口にして、ルーティンをこなして喫茶店で美味しいものを食べ、気になる建築を見て回る、それがじい散歩。しかもかつては自分の事務所だった秘密基地まで持っている。
ただ老後の道楽というには少し変わった家庭環境で、息子3人は90近い両親に対する将来を考えていない、妻はいよいよ認知症の気が現れた。それでもあんまり悲壮感を感じないのは、このじいさんが自分のことは自分でやる、誰にも期待しない、楽しみは自分で見つける、健康のこともそれなりに考えているから。あとは次男(長女ともいう)が両親の愚痴やら何やらに程度に付き合ってくれていてさっぱりとした性格だから、読み手はそこまで気負わずにいら -
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夫婦合わせて180歳目前!
そんな明石家の家族模様が、じわじわと胸にしみる物語。
散歩好きで女性と話すのが大好きな父・新平と、彼の浮気を疑う母。
高校中退後ずっと引きこもりの長男、男性の恋人がいる自称“長女”の次男、グラビア撮影会を赤字で続ける三男
——クセが強すぎるこの家族、どうしてこうなった!?
でも、そんな“いろいろ”を抱えながらも、なんとなく回っていく家族の日常が、愛おしく、ちょっぴり切ない。
藤野千夜さんの筆が生み出す、ユーモラスで温かい視点に、気づけばクスリと笑い、ホロリとさせられる。
家族って面倒で、不器用で、だけど捨てがたい。
そんな“家族のかたち”に触れたい人におすすめ -
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ネタバレ88歳の新平と87歳の英子夫婦。故郷を飛び出し、東京に住む英子の姉のところに居候し、結婚。オリンピックなどの景気のいい時流に乗り建設業で成功したものの、可愛がっていた職人に独立され右肩下がり。子ども3人は、長男は引籠り、次男は娘に、三男は能天気で借金まみれ。
日々のちょっとした散歩、外食、おやつ、気になる建築物巡りを楽しんでいたところ、妻が認知症疑い。
安泰な老夫婦の生活からは程遠いが、こんな家族今は、たくさんいるのかも、と感じる。
池袋周辺の建築物を検索しながら読んだ。そしてあまりにタカセのパンが出てくるため、とても食べたくなった。懐かしいパンが多く私も好き。
気軽に読める本で楽しかった。 -
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あわせて180歳というご高齢のご夫婦。夫婦には3人の息子がいるが、それぞれにいろいろ問題を抱えて頼りにならない。そんな家族の日常と難題を父である新平の目線から語られるお話。
深刻な問題を扱っているのに、なんだか笑ってしまう。ほのぼのしている。がむしゃらに生きてきた昭和のご夫婦。何とかなる。何とかする。気概を感じる。
そして私も頑張らなきゃ、と元気を貰った。
散歩や食事の風景にホッとさせられる。行ってみたい。
ユーモラスに家族を書きながら、社会問題を提議していく手法は斬新で、より身近にとらえる事ができた。凄い。この作家さんに興味を持ちました。
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ネタバレ【収録作品】第一話 秘密の部屋/第二話 秘密の女/第三話 秘密の訪問/第四話 秘密の調査/第五話 秘密の話/第六話 秘密の思い出 1/第七話 秘密の思い出 2/第八話 秘密の思い出 3/第九話 秘密の交際/第十話 秘密の旅路/エピローグ 秘密の通信
明石家は夫婦あわせてもうすぐ180歳。
中年となった3人の息子は全員独身。長男は高校中退後引きこもり。次男は恋人が男性の自称・長女。三男は事業を興しては失敗し、親に無心ばかりしたあげく実家に戻って同居中。
お金があるからいいけれど、それもいつまで続くか怪しい綱渡り。端から見ればなんともはやだが、当人たちの気の持ちようか、妙な明るさがある。 -
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ネタバレ89歳間近の新平さんは、好奇心旺盛でお散歩好き。
興味をそそられたことは、忘れないように手帳に記している。
お散歩ついでに美味しいものをいただく。
そして、多分、ルーティン好き。
日課の健康体操と、毎日の朝ごはんは、ヨーグルト+きなこ、すりごま、干しぶどうに、さらにあれやこれや、食べる物も順番も決まっている…などなど。
89歳ってもっと老い老いしてる(勝手な造語)感じなんかなと思ってしまうけど、新平さんみたいなおじいちゃんもいるんだーと思うと、ちょっと気が楽になって、新平さんに憧れたりする。
若い頃は色々あったみたいだけどね……。
でも、自分で決めたことを続けてやっているのは、なんか背筋が伸