藤野千夜のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
すごく不思議な小説だった。
春生と久里子という、50代目前の一組の夫婦の物語なのだけど、夫婦が揃ったところは一切出てこない。
なぜなら春生は久里子を病気で失い、久里子もまた春生を突然死という形で失っているから。
妻をなくした男と、夫をなくした女。そして高校生になる息子の亜土夢。それぞれの生活が交互に綴られた短編集で、どちらの世界が本物なのか、どちらも本物なのか、それともどちらも偽物なのか、不思議な感覚に包まれたままラストへ向かう。
ミステリではないので謎解きがあるわけではなく、両方の世界が同じ時間に並行して存在している、そういう小説。
幸せだったから悲しい。
春生も久里子も、パートナーをなくした後でそれぞれそのことを実感する。
時間とともに忘れていくのは悪いことではない。でもまだもう少し、引きずっていたい。忘れたくない。悲しんでいたい。
日々の生活のあらゆるところに亡くした人の影を見いだしてしまうのは、誰か大切な人を亡くした経験がある人ならば、よく理解できると思う。
この人と人生をともに行くんだ。そう思えるパートナーとすでに巡り会えている人ならば、尚更この物語は胸に響くと思うし、自分に起こったことだと想像して悲しくなるかもしれない。
でも不幸な感じはしない。むしろ幸福。
幸せだったから悲しい。なくした後そんな風に思える誰かと出逢えるって、切ないけれどこの上ない幸福だ。
温かい読後感の小説でした。 -
Posted by ブクログ
いつだったか、深夜映画で実写版のを見てやけに頭の中に残っていたので、古本屋で偶然見つけて購入。
ちなみに原作である小説のほうは読んでおりません。
ストーリーのほうは予め映画のほうでわかっていたから、結末はわかっていたものの、結構面白かったです。
絵もカワイイし、個人的には好きな絵です。
弟を迎えにいった帰りに異世界に迷い込んでしまう、なんていうストーリー。
異世界っていっても、元の世界とよく似た世界。平行世界、というのでしょうか?
なかったものがあって、あったものがなくなったり、自分がこんな世界に突然いってしまったら、なんだか耐え切れないんだろうな、と思いました。
最後の方まで読んで、ある件で涙してしまいました。
でも、「これでいいのか?」と思ってしまったり・・・・そこは原作を読んでからでないととやかく感想もいえませんが、この一冊しかないので興味あるかたは読んでみてはいかがでしょうか?
なんだか少し、ぽかーんとした雰囲気になるかもしれませんが。
後、関係ない余談なのですが、次からレビューの方式を少し変えようかと。
どのような作品だったのか、っていうのをできる限り伝えたいと思っているので。読む本数は少ないですがねw -
Posted by ブクログ
トランスジェンダー、ゲイのカップル、障害者を兄弟に持つ女の子、パニック障害持ちの主婦…この小説に収められている二篇に登場するのは、マイノリティな人間だらけ。
こういうマイノリティである人々を扱った作品が芥川賞を受賞する、まずそのことが私は個人的に嬉しかった。
ただ、それだけあって受け入れられない人はまったく駄目だと思う。まずそういった人間を理解できなければ、不快感しかないかもしれない。
そういう“マイノリティ”を理解した上で読めば(もしも共感できたなら尚更)、登場人物の見方もきっと変わってくる。
表題作に出てくるマルオ、私は好きだな。あの鷹揚さ。「人の目を気にしたって仕方ない。僕は僕でしかない」といった、堂々とした感じ。
マイノリティであることを負い目に感じて堂々とできない人たちっていっぱいいると思う。それは、『差別や偏見をなくそう』とか言いつつやっぱり根底には差別や偏見があるような世の中だから、堂々としきれないのだと思う。
マルオのような人間が、マイノリティ・マジョリティ含めもっと増えたら世の中変わるんじゃないかな。
二篇目に出てくる主婦の気持ちはよく理解できました。
私がこの小説にいろいろ感じてしまうのは、きっと自分が(元?)マイノリティ側の人間だからなのでしょう。 -
Posted by ブクログ
いつか読もうと思っていた本。
芥川賞受賞作だったんですね。
主人公がゲイなのは知っていたけど、デブとは思いがけなかった…
会社員のマルオは95キロ。編集者で小柄な恋人のヒカルとは手をつなぎっぱなしでデートをする仲。つなぎっぱなしにする必要性をこっちは感じないけれど、二人で宣言するような意味があるのかな〜。
今は女性になった美容師のたま代や、ヒカルの幼なじみの小説家・菊江など、彼らを囲む女たちも、ちょっとヘンだったりする〜ゆるい友達つきあいが描かれていて、なかなか良い感じです。
もっともの悲しいのかと思ったけど、嫌なこともありつつ、滑稽な日常。
2000年発行。作者は1962生まれ。