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夫婦あわせて、もうすぐ180歳。中年となった3人の息子たちは、全員独身――。明石家の主である新平は散歩が趣味の健啖家で、女性とのコミュニケーションが大好き。妻は、そんな夫の浮気をしつこく疑っている。長男は高校中退後、ずっと引きこもり。次男は恋人が男性の自称・長女。三男はグラビアアイドル撮影会を主催しては赤字で、親に無心ばかり。皆いろいろあるけれど、「家族」の日々は続いてゆく。そんな一家の日常をユーモラスに、温かな眼差しで綴った物語。解説・木内昇
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Posted by ブクログ
読み始めたとき、まず「ああ、この設定は大変そうだな」と思った。80代のお父さんと、50代の息子が三人。そのうち二人は親に頼って暮らしている。ちょっと重そうな家族だな、と最初は身構えてしまった。
でも、気づけばどんどん読み進めていた。
まず、新平さんの毎日の過ごし方が、私の理想の老後そのものだった。元気に散歩へ出かけ、自分の好きな建築を見て回り、カフェで飲みたいものを飲む。それから、お菓子屋さんでお土産を買って帰る。こんなふうに、自分の好きなことを楽しみながら過ごせたらいいなと思った。
物語の途中で、新平さんの若い頃の暮らしや恋愛、戦争の記憶が語られる。その挿入のされ方も自然で、散歩をしながら、主人公が思い出をゆっくり話してくれているように感じた。
息子たちはそれぞれ個性的だ。家にこもりがちな長男、「長女」を自称する二男、何かと親にお金を借りる三男。普通なら少し困った家族に見えるかもしれないけれど、彼らのことを嫌いにはならなかった。むしろ、それぞれの事情が描かれるうちに、少しずつ理解できるようになったし、こんなふうに受け入れてくれる家族がいることを、うらやましくも思った。
お母さんが毎日ご飯を作り、ときには三男を助けてあげるところにも、この家族のあたたかさを感じた。いろいろな人が一つの家に集まって暮らしているような、にぎやかで多様な家族の姿が面白く、ところどころに笑ってしまう場面もあった。
最後もあたたかく、読み終わったあとにほっとした。『団地のふたり』に続いて、好きな「老後の日常」を描いた作品に出会えた。
Posted by ブクログ
望んでいても、「仕事を持つ」「交際」「結婚」「子供を持つ」ということが難しくなった現代。それらができなくて自分を責めてしまっている人にも、逆にその難しさがわからない人にも、居心地の良い物語だと思う。
藤野千夜さんの書評の記事か何かで、本を読んで惹かれるのは「何が起こるか」「犯人は誰か」ということよりも"物語の間の襞"なんだ、というようなことを言っていて、どんな物語を書くんだろう?と思い手に取った。
90歳の新平は、人は独り立ちして強く生きていくものだ、みたいなスタンスで多分生きている。自分自身はちょっとそういう人を苦手に感じていた。
でも、どうもこの話を読んでいると、新平とちょっと生きづらそうな家族たちの間には、いい感じの融和があるような気がした。優しさもあった。
今ほど怖がらなくていいのかも、と思い直した。
Posted by ブクログ
夫婦合わせて180歳、中年3人(長男は引きこもり、次男はスカートをはくき、三男は借金まみれ)の息子達は皆独身。妻には認知症が入り、毎日浮気を疑われ、、そんな彼の楽しみは椎名町から池袋までの毎日の散歩、建築を観、喫茶店で食事し、甘味をお土産に買って、、事務所で趣味の女性ビデオ鑑賞などして1人味わう…
色々心配はあるけれど家族は続く…
明石建設の社長だった新平は立教大学、江戸川乱歩邸、自由学園や不思議な雑居ビルなどに立ち寄って、建物に感心することを忘れない。
中でも息子のギターの先生がリサイタルされて聴きに行った自由学園朝日館のホールは粋だった。F・L・ライト設計の重要文化財で、89歳の新平は「俺もこういう建築がしたかったな…無理か…」と首を振るのだった。彼は女学校生徒たちの食堂だった喫茶で上品なクッキーをいただく…
人生って思い通りにならないのが当たり前。三原堂の薯蕷饅頭やタカセのあんみつドーナツを片手に彼の散歩道を歩きたくなった…
Posted by ブクログ
老夫婦と、すでに中年となった三人の息子たちの日常を描いた家族小説です。
散歩を楽しむ新平を中心に、それぞれが老いや家族の問題、思うようにならない人生を抱えながらも、淡々と毎日を過ごしている姿が妙にリアルでした。
家族だからこそ遠慮がなく腹も立ちますが、完全には離れられない距離感には、どこか自分の家族を重ねてしまいました。
新平の考え方には時代を感じる部分も多く、共感しにくい場面もありましたが、それも含めて一人の人間として描かれているところに好感が持てました。
派手な展開はありませんが、年齢を重ねた今だからこそ、こうした何気ない日常の積み重ねこそが、一番ぜいたくなのかもしれないと感じました。
読み終えた後は、家族の顔が思い浮かぶ、そんな温かい一冊でした。
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