奥田英朗のレビュー一覧
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刑事と被疑者、ほかの登場人物の視点で描かれ、飽きなく、また実話をモチーフに誘拐というテーマなので
さらに緊迫感もあり、先が気になりどんどん読めました。「砂の器」を思い出します。
でも本作は事件についてより、当時の描写にすごく興味を持ちました。(事件については尻すぼみ感が、)
これまでは感情移入しやすかったり親近感持てる、その時その時の時代設定の本を好んで読んでいて
あまり時代設定の違う作品は、これというもの以外読んでこなく、なんで書くのかなって思っていたくらい。
電話やテレビの登場で事件が混乱って、実は今のSNSに置き換えると同じなんだと。
歴史は繰り返すってほんとだなと思いました。
ちょっ -
Posted by ブクログ
『オリンピックの身代金 下』。
要求額は8,000万円。
東大生・島崎国男はオリンピックを人質に、身代金を要求する。
東京だけが繁栄し、取り残されつつある故郷・秋田の田舎の農村のために…
一方、警察は死力を尽くして、国男の行方を追う…
国男は…
警察は国男を捕まえることができるのか…
ほんとになぜ⁇
東大生の国男なら、もっとやり方があったんじゃないかと、何度も思った…
こんなことをしなくても…
最後にはうまくいってほしいと…
どこかで生き続ける国男と村田を思い描いていた…
何もなかったかのように…
国男は生きているのか…
生きていてほしい。
ここから日本は高度経済成長に入り、物心 -
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奥田英朗『オリンピックの身代金 上』
東京オリンピック開催前の昭和39年8月。
秋田から出稼ぎに来ていた兄の死。
そんな兄の死により、日雇い労働者の過酷な労働環境を知った、東大生・島崎国男。
故郷・秋田、社会の底辺ともいうべき日雇い労働者たちと、オリンピック開催に沸く東京。その対象的な違いに、違和感を抱き始める国男…
すべての悪は東京だと…
そこまでしなくても…
東大生であるのに。
そのままで自分の未来は明るかったはずなのに。
なぜ⁇
なぜ⁇としか思えない。
もっと他にやり方があったのではないか、東大生なんだから。
やるせない。
国男はどんどん堕ちていくのか…
昭和39年、ちょうど6 -
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「リバー」が面白かったので、同じ著者の短編を読んでみた。幽霊とか予知能力といったファンタジー要素もある5編。
「ファイトクラブ」が印象に残った。会社で肩たたきにあい、それでも退職に応じない中高年男性たちが、異動先での屈辱的な待遇に耐えながら、社内でボクシングを始めたことで、次第にいきいきした感情を取り戻していく。他人が見たらカッコ悪い生き方かも知れないが、個々に様々な事情や人生観があるのだ。でも格闘技っていいな。ラストも良かった。
表題作「コロナと潜水服」も良かった。コロナが流行し始めたあの頃の不安な空気を思い出した。自身の感染を確信した男性が、妊娠中の妻と幼いわが子には移すまいと家の中で -
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日本の組織そのものだと思う。
上から指示が順番に落ちてきて、実行するのは末端。
鉄砲玉とはヤクザでの話だろうが、弊社では一般兵と呼ばれる俺らは敵前逃亡は銃殺刑と呼んでいます。
良いか悪いかの私情を挟まず、ただ指示受けたことを実行するのはヤクザも会社員も同じこと。
それが日本の組織なのだと思う。
だから、考え直したところでどうしようもないという諦めが漂っている。
歌舞伎町のヤクザの末端、坂本純平は兄貴分の北島を慕ってこの世界に足を踏み入れた。
しかし、毎日が雑用の日々。
そんな純平にだったが、組長から直々に鉄砲玉に指名される。
それすなわち、10年近く刑務所での勤めをする -
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著者は『空中ブランコ』などの伊良部シリーズを書かれており、この作品も面白い物語が展開されるのかと思い、手に取りました。
作品は短編集で、日々の暮らしの中のちょっとした瞬間に少しだけ心を揺るがす事があった人達の物語となっていました。作中の人物の心の動きや描かれている家庭環境が、現実のどこにでもありそうな場景であり、物語にすっと入り込みやすい内容となっていました。描かれ方も嫌な感じは覚えず、人物が抱く心境を理解できる表現でした。
作中でも『ここが青山』が特に気に入った作品でした。内容としては会社が倒産し、主夫となったサラリーマンの物語です。職を失った場合、不安を抱き次の仕事を探すため四苦八苦する