奥田英朗さんは初読みの作家さん。
『家日和』
いろんな家族の肖像が心にじんわりと温かく響いてくる短編集
どの話も全く異なるシチュエーションなのに、身近に感じられる家族の情景がしっかりと描かれていて、穏やかな余韻を感じさせる終わり方が秀悦だった。
巻末の益田ミリさんによる「解説」ならぬ「鑑賞」も意表を突いていて味わい深かった。
収録は以下の6編
簡単な内容と感想
「サニーデイ」
専業主婦紀子がネットオークションに嵌っていく様子が微笑ましい一方、危なっかしい。
でも素敵なご主人と子供達が傍にいる事に気付けてホッとした。皆さん、くれぐれも所有者の許可なく物品を売り捌くことのないように気をつけましょう!笑
「ここが青山」
作中何度もでてくる台詞
「パパの会社トウサンしたんだよ」
「人間(ジンカン)至る処青山(セイザン)在り」
根強いジェンダー意識の世間体に屈することなく専業主夫になる夫と復職する妻のお話。まさにここが青山!息子とのブロッコリーに纏わる奮闘劇もホッコリした。価値観なんて夫婦で分かり合えれば万事うまく行くのかもしれない。
「家においでよ」
金のない独身時代には実現しなかった「男の王国」を妻と別居してから着々と築いていく主人公の正春
多くの既婚男性の本音が垣間見れて微笑ましい。
マイホームは「女の城」とばかりに拘りを見せる妻たちも、たまには亭主の居心地の良さも考えた方がいいという作者のメッセージを感じた。
「グレープフルーツ・モンスター」
専業主婦で家に籠った主婦が、筋肉質で柑橘系の香水つけた若い男性相手にこんな妄想を抱いているなんて・・・
自由自在に夢を操れる力も凄い。
むしろ彼女が妄想モンスターだと思った。
訪問先にこんな主婦がいたらちょっと怖いな。
「夫とカーテン」
根っからの営業マンの栄一の猪突猛進が止まらない。
型破りで奔放で人懐っこい栄一に魅せられながらも、自分の夫にはご遠慮願いたい笑
妻の春代は四の五の言っても、栄一のことを心底大切にしてるんだろう。お互い相手に尊敬出来る部分があるってやっぱり素敵だ。
「妻と玄米御飯」
ロハスに嵌る妻と、その様子をユーモア小説で描きたい小説家の夫のお話
おもろいなぁ〜。描いて世に出せば妻との関係悪化は免れない。果たして夫が選んだ答えとは・・・
そういえば、ロハスってどこ行った?笑
特に印象的だったのは、
「ここが青山」「家においでよ」
「妻と玄米御飯」の3話
でもどれもいいお話だった♪