内田樹のレビュー一覧
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【日本人とは何ぞや?】
・日本は歴史的に、常に「中心(中国・西洋)」を意識しながら自らを位置づけてきた“辺境”の文化である。
・そのため日本人は、外来の思想・制度を受け入れつつ独自に再編し、適応することを得意としてきた。
・この“辺境性”こそが日本文化の特徴であり、現代の日本社会を理解する鍵になる。
※辺境=中心から離れた端っこ、を意味する。
ここでは文明の中心地から「地理的」に離れた周縁地域という意味。
●日本の「師弟関係」や「道」は優れた学習装置だと述べている。「〇〇道」(武道、茶道、華道…)という教育プログラムの中で、弟子は師から何もかもをオープンマインドに学びとろうとする伝統的学習 -
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構造主義とは何か?ということを考えるにあたり、我々の中に常識としてインストールされているが故にもはや何かわからないんだなと。ある物事について、多様な視点から物事を考えるというのは、そもそも常識ではなかったんだなと。
構造主義の代表的な思想家として、フーコーが紹介されており、個人的に印象深かったのでメモする。
> 狂人は「別世界」からの「客人」であるときには共同体に歓待され、「この世界の市民」に数え入れられると同時に、共同体から排除されたのです。つまり、狂人の排除はそれが「なんだかよく分からないもの」であるからなされたのではなく、「なんであるかが分かった」からなされたのです。
なるほ -
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ー このゲームのルールは「先に文句を言ったもの勝ち」ですから、このゲームで幼児期から鍛えられてきた子どもは、どんな場合でも、誰よりもはやく「被害者」のポジションを先取する能力に長けてゆきます。人間、生きている限り、さまざまな不快なできごとに遭遇しますが、そのすべてにおいて、「私は不快に耐えている人間」であり、あなたは「私を不快にさせている人間である」という被害加害のスキームを瞬間的に作り上げようとする。
いきなりだが、本書が取り上げる「下流」とは、こうした象徴的な性質のことであり、自己防衛的とも言えるが、高潔さがなく卑怯な戦略志向。さらに、群れて集団で誰かを加害者ポジションに追い込み“共通の -
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民主主義、憲法、教育などの様々なジャンルに関して、意見を述べている内容を集めた本。
一番印象的だったのは、憲法の箇所。改憲派と護憲派の対立構造が私にはよくわかっていなかったのであるが、著者の解釈は割と納得感があった。
改憲派のロジックは、基本的に日本国憲法はアメリカに押し付けて作られたものであるため、日本人だけで作るべきといった一貫性のあるものである。
一方、護憲派には改憲派のような明快なロジックは存在しない。なぜなら、著者のように1950年に生まれた人間からすると、日本国憲法は空気のようにそこに存在していたからである。
また戦争を経験した世代は、大戦の悲劇を次世代に受け継がないように -
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マルクス思想の超入門書。
往復書簡形式でマルクスの著書が噛み砕いて解説されており、知識の無い私もマルクス思想のエッセンスを理解出来た。
マルクス思想は共産主義の一言で理解され、破綻した過去の理論と受け取られている事が多いと感じる。しかし、マルクスのテキストは政治的・経済的正しさの範疇のみで読み解かれるものではなく、読者の知性を鍛えるものとして今尚有効であるという内田先生の話に深く共感した。
印象に残ったマルクス思想に「類的存在」が挙げられる。人間は、利己主義者としての市民と、法に従って公民として分裂した個人を統合し、自身と他者の幸福を共に気遣う存在であるべきとする人間観は大変魅力的である。 -
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非常に面白かった。
著者は大学教授でありながら、武道家。この武道家の要素が身体知をともにした文章にしていると思う。
・無理して頑張るということはそれだけエネルギーを前借りしているということ。
・職場等の不快な人間関係に耐え続けると必ず「オヤジ化」し、自分がイヤな奴になる。
・パパ活等(たいした価値も提供していないのにその気になっていること)で自らの価値観が狂ったら、一生ものの傷になる。
・礼儀とは仮面を被ることで自分の利益を最大化すること。権力者の前で素顔など出してはいけない。
など、すっと頭に入ってくるような内容だった。
タイトル通り、頑張りすぎて疲れた時に読むといい本。
社会の変な価値観 -
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内田樹篇の平成を振り返るエッセイ集。最初に内田氏が言っているように、自由に書いてもらったので統一感はないが、それぞれの書き手の専門分野に応じて、いろいろな平成の断面が見える。中には内田氏ファンである読み手の存在を忘れているのではないかと思われるものもあったが、総じて興味深く読めた。面白かったのはブレイディ氏の英国的「ガールパワー」と日本的「女子力」が全く真逆の意味になるという指摘だった。前者は、女が、女たちの支持を得て女たちをインスパイアすることだったが、後者は、女が、男たちの支持を得て男たちに愛されてほかの女たちより上に立つことだという、なるほど、双方の国民性の一端を垣間見せてくれている。
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250文字ぎちぎちのフレーズ記録を10本近く残してしまった。相変わらず胸に響く「訓え」の数々。内田樹を信頼する気持ちは、出逢って20年ほど経つけど変わらない。寄稿の寄せ集めなので1冊の本としてはという意味で⭐︎4つですが、本当にいつも「知」をありがとうございます。p327「間違えてほしくないが、『冷静さを保つ』と『鈍感である』ことは違う。」p328「なにか異変を感知したら、『ほう、いつのまにこんなことが』と目を丸くしてみることである。驚くことを楽しむのである。それくらいの構えでいないと2019年を冷静にやり過ごすことはできないだろう」
この後、コロナだったんだな……。
あとがき、中央年齢高いt -
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・戦前日本の指導者層が退出せず、戦後も引き続き指導者層にとどまったことから、アメリカに対してモノが言えなくなった。以降、「永続敗戦」の歴史が始まっているとする。
・戦後日本がとった戦略は、「対米従属を通した対米自立」であるとする。これを「のれん分け」と表現するのが非常にうまいと思った。
・敗戦をうまく総括できないことから、東アジア諸国との関係もいまだにこじれる要因となっている。東西冷戦や日本の突出した工業力等を背景に、東アジアは日本に文句も言えなかったが、1990年くらいから潮目が変わってきた。
・終戦時に15歳前後で、間もなく徴兵という世代は、祖国のため米国に必ず勝つという思いを胸に終戦後は