山岡荘八のレビュー一覧
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大権現様が盟友の死と人生の危機を堪え忍ぶ8巻。
自分の中の家康像では、
伊賀越では信長の死を知り、
狼狽えまくり、前途に絶望して死のうとし、
本多忠勝あたりに殴られて思いとどまり、
ひいひい言いながら岡崎に帰って、
兵を出したところで光秀が討たれた知らせを聞き、
秀吉の行動の速さに唖然とするのだが、
この小説では常に堂々としており、三手先を読みつつ、
どんな状況でも民衆を救うことばかりを考えている。
聖人君子というレベルを超えており、
思わず本に手を合わせたくなってしまう。
この小説の家康公は作者に平和への祈りを
託された存在なので、天から遣わされた
神仏の化身として描かれているのだろうか -
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ネタバレいよいよ最終巻だ。
陛下の玉音放送に先立ち,日本が条件付で受諾することが日本軍の青年将校達に漏れ,彼らの動きは慌しくなった。ある者はテロによって,平沼,近衛,岡田,鈴木,米内,東郷を暗殺すべきだとし,またある者は陸軍大臣の治安維持のための兵力使用権を利用し,実質的にクーデターを断行すべきだとして,その構想を進めだしていた。
外務省では『天皇の主権が一時軍司令官の”制限下におかれる”』と訳され,これは『”隷属”ではないか』と将校達が騒ぎだした。天皇の大権が軍司令官に隷属して何の国体護持であろうか。もはや逡巡すべき時ではない。国体護持のために敢然決起して天皇を我らの手に奪い返さなければならない -
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ネタバレそして,戦艦大和の登場だ。当時,世界第一を誇った超弩級戦艦大和が遮二無二沖縄目指して海上特攻を決行し,満身創痍,途中の海上で沈没してしまった。戦死者の数は大和だけで2,740名。行動を共にした第2水雷船隊の981名を加えると,3,721名がこの世から消えてしまった。わずかに戦場を離脱しえた人々もまた大半が戦傷者で,その数も459名だった。
沖縄へのアメリカ軍上陸の責任をとって,小磯内閣は退陣し,鈴木貫太郎海軍大将を首班とする新内閣が成立した。当時,天皇の意志を最も良く体し得る者は,長い間侍従武官長として側近にあった鈴木大将をおいてほかにはない。大将ならば誤りなく陛下のご意志をこの超非常時の政 -
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ネタバレそして舞台は硫黄島へと移る。この硫黄島には耕された田畑もなく,何よりも水がなかった。そんな島になぜ2万人以上もの兵を進め,司令部まで移したのか。また,アメリカ側も7万の大軍をひっさげてやってきて,一歩も退かずに戦っているのか。アメリカ側がさきに占領したサイパンから東京を爆撃するためには2千7百マイルの長距離を飛行しなければならない。それだけの航続力をB29はもっているが,これを実行するためには,護衛の戦闘機を同伴する必要があるし,燃料を多く積む必要があるので,爆弾の積載量に大きな制限を加える必要がある。それを克服するために,東京とサイパンの中間地点である小笠原諸島がターゲットになったのだ。小笠
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ネタバレ6巻の初めは,神風・新雷特別攻撃隊だ。神風は”かみかぜ”ではなく,”しんぷう”と読む。神風特攻隊は,豪胆で聞こえた大西司令長官が最初の声をあげたわけだが,果たしてこうした必死必中の非常手段を神々が許すものであろうかと,大西は自責の念にたえずさいなまれていた。この特攻隊の編成は,事実は命令ではなく,司令長官である大西中将とその指揮下にあった人々の凄まじいまでの愛国心が期せずして一つの火柱になって吹きあがったものであろう。大西中将は,ただそのおりの悲しい長官であったに過ぎない。その隊員24名が決まった。指揮官は関行男海軍大尉だ。これに,10月25日までにフィリピン島沖の敵機動部隊を殲滅すべしという
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ネタバレ話はビルマ戦線に突入する。ビルマでも,初戦を除き,イギリス軍の物量攻撃に苦戦させられることは,先のガダルカナル島やニューギニア島と何ら変わりなかった。ここでは,ひとつ事件があった。それは,戦場の二・二六事件と言われる佐藤中将の抗命事件だ。これは日本陸軍の歴史の中で一大汚点とされているが,真相はどうだったのか。著者はその張本人である佐藤中将と相手方の牟田口中将に戦後実際にお会いして,話を聞いている。
佐藤中将の抗命事件とは,大まかに言うと,牟田口軍司令官の進攻命令を公然と拒否し,兵団を率いて勝手に退却した事件である。これだけ書くと,何たる事かと思ってしまうが,退却までのいきさつを聞くと,どちら -
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ネタバレガダルカナルの敗北は太平洋戦争における峠であったと言ってもよい。ここで失った人と物と時はその後の日本軍に与えた影響は無限大の大きさであった。艦艇や航空機の喪失は日本側だけでなく,アメリカ側も同様もしくはそれ以上に出ていたが,費やされた”時”の与える影響は両国で全く違ったものとなっていた。アメリカ側の工業生産高は日本のおよそ13倍であった。これを航空機にとれば,日本が1機生産する間にアメリカは13機生産するという事だ。したがって日本はアメリカの12機を無損害で撃破しなければ均衡が崩れていくという事になる。鐵鋼の生産量でもアメリカ側の1億トンの供給量に対し,日本側は400万t。これは,日本の艦艇1
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ネタバレジャワ攻略を予想以上の成功に導いたのは,ジャングルへの備えと今村均中将およびその命令下の将士の冷静かつ果敢な行動,それに陸海軍の緊密な協力にあった。今村中将の逸話を聞くに従い,これが太平洋戦争全体を包んでいたらという思いを強く持つ。
今村中将は,インドネシアに侵攻しつつも,常に現地人への被害に対する反省がつきまとっていたに違いない。このため,オランダの降伏後は,民政に力を入れ,インドネシアの現地人の独立を助けるように支援した。そんな占領初期の日本人に対しては,現地人は非常に好感を持ってこれを向かえ,惜しまない協力をくれた。インドネシアは,どこの占領地域よりも明るく,活気があり,みな伸び伸びと -
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ネタバレ山本は『戦争にせよ,賭博にせよ神様が喜ぶことでは決して無い。したがって正義がこちらにある時は,止むにやまれぬものとして天佑があるだろう。その天佑も信じられないような戦ならば全作戦を放棄するのが良い』と考えていた。逆にこのように考えた上で,大艦巨砲主義の思想が中心だった日本の作戦から抜け出し,航空機が海戦の勝敗を決定するような戦のやり方に日本の戦争のやり方を変えていくべきだと主張し,そうした技術を短日月の間にマスターすることを本部に求めた。
山本は決して無謀を強いるような人ではなかった。青年士官が特殊潜航艇での真珠湾強襲を申し出た時,その内容を一目見て却下した。それは航行時間は五時間だったから -
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ネタバレまず,本書を読み始めるのは非常に腰が重たかった。9冊というボリュームだし,歴史小説と言うには余りにも近代は近すぎたためだ。しかし,前書きを読み始めたとたんにそんな考えは吹き飛んだ。現在の太平洋戦争についての常識は,アメリカ人がこしらえたものだ。日本でそのときに何が起こっていたのか,日本人が何を考えて戦争へと突入したのか。現在の日本人として当然知っておくべきことであり,間違った見解を他人・他国の人が言った場合,それはきちんと正して行くことが,日本のことを思い散って行った人たちに対する,残された我々の義務なのだと。それがないと,やりきれない。私の祖父の兄弟2人も太平洋戦争で亡くなった。海軍と陸軍で