小説 太平洋戦争(3)

小説 太平洋戦争(3)

小説・文芸
880円 (税込)

4pt

3.8

開戦当初のはなばなしい戦果に酔った日本軍も、しだいに苦境に追いこまれる。山本五十六の「緒戦は勝つが長びけば……」の言葉は、現実となりつつあったのだ。ミッドウェー、ガダルカナル――日ごとに疲弊の度を増す戦力をかかえて、軍隊という巨大組織の統率者は、また兵士は、いかなる戦争を闘ったか。

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小説 太平洋戦争 の一覧

1~9巻配信中 1巻へ 最新刊へ
1~9件目 / 9件
  • 小説 太平洋戦争(1)
    1,265円 (税込)
    昭和16年、日米両国は最悪の関係に陥っていた。前年の日独伊三国同盟に徹底対抗を宣するアメリカ。大統領ルーズベルトは、すでに対日戦争の肚を固めていたのだ。日本は打開策を模索し、再三交渉の特使を派遣するが……。太平洋戦争全史を描いた唯一の大河小説、今よみがえる! 全9巻。
  • 小説 太平洋戦争(2)
    1,210円 (税込)
    暗号電はついに打たれた。「ニイタカヤマノボレ」――昭和16年12月8日、日本帝国海軍航空戦隊は、アメリカの太平洋艦隊基地ハワイ真珠湾急襲に成功。南太平洋方面にも、陸海軍がいっせいに進撃を開始した。マレー、フィリピン、ジャワ――連日大勝利を報ずる大本営発表に、国民は狂喜した。
  • 小説 太平洋戦争(3)
    880円 (税込)
    開戦当初のはなばなしい戦果に酔った日本軍も、しだいに苦境に追いこまれる。山本五十六の「緒戦は勝つが長びけば……」の言葉は、現実となりつつあったのだ。ミッドウェー、ガダルカナル――日ごとに疲弊の度を増す戦力をかかえて、軍隊という巨大組織の統率者は、また兵士は、いかなる戦争を闘ったか。
  • 小説 太平洋戦争(4)
    880円 (税込)
    米軍の南太平洋諸島への反撃は、圧倒的物量とともに予想以上の速さだった。ガダルカナル、ニューギニア――退路のない南の島で、弾薬、食糧の補給が尽きた日本軍は、たちまち泥地獄に追いこまれる。ガ島ではかろうじて掉尾の撤退作戦だけが成功を見たが、苦闘の中にこそ指揮官の真の姿が現われていた。
  • 小説 太平洋戦争(5)
    1,210円 (税込)
    全戦線で日本軍の疲弊が目だちはじめたころ、ビルマでは牟田口第15軍指令官の怒号一喝、インパール作戦の火ぶたが切られた。しかし、思わぬ作戦齟齬の罠が待ちかまえていようとは! 柳田第33師団長の作戦変更の要求、そして佐藤第31師団長の“抗命事件”。炎熱と飢餓のなかで戦う将兵の胸中は……。
  • 小説 太平洋戦争(6)
    880円 (税込)
    玉砕の悲報があいついで大本営に飛びこみ、東条内閣は崩壊した。次なる小磯国昭内閣も戦争終結への策は取り得ず、サイパンを陥した米軍主力はフィリピンに迫って、苦境はさらに続く。もはや海と空の戦いに残されたのは、戦争史上例を見ない特攻作戦のみであった。神風・神雷特別攻撃隊、ついに出撃!
  • 小説 太平洋戦争(7)
    880円 (税込)
    戦局は日ごとに厳しさを増し、制海権、制空権ともに失った日本軍は、増援の手段もなく南海諸島に孤立した。ここ硫黄島でも酷烈な地熱と悪臭に耐えて、栗林中将以下2万3千人の将兵が息を殺して敵襲を待つ。もはや千に一つの生還も期しがたく、あるは絶対死のみ。中将はついに玉砕の決意を大本営に打電した。
  • 小説 太平洋戦争(8)
    880円 (税込)
    世界最大を誇る超弩級戦艦大和が、いま大海原に乗り出していく。同行は8隻の駆逐艦と巡洋艦1隻のみ。護衛艦載機ゼロのまる裸の出撃なのだ。海上特攻! まさに「われらかく戦えり」という帝国海軍の意地をかけた戦争終了をめざす突撃だった。前途には沖縄に孤立する人々の熱い期待があったのだが……。
  • 小説 太平洋戦争(9)
    880円 (税込)
    昭和20年8月15日、ついにポツダム宣言を受諾、日本の敗戦はきまった。武人たちは簡潔な遺書を残して自決し、天皇は「責任は私が負う」とマッカーサー元帥に告げた。そして「何世紀もの文明を抹殺する思想」で東京裁判が始まる……。滅私奉公に徹し祖国の不滅を信じて逝った人への鎮魂の巨編、完結!

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小説 太平洋戦争(3) のユーザーレビュー

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    Posted by ブクログ

    ミッドウェー海戦の敗北。ガダルカナル島での敗北。共に闘った兵士の戦意は立派であるが、決して忘れてはならない悲惨している様子で。キツいです。著者も描いてる中で、高熱を持ってペンを走らせてる仕事のプライドも忘れられない。とにかく、簡単に言葉に出来ないくらいの地獄の戦争だった。

    0
    2015年08月25日

    Posted by ブクログ

    ミッドウェー海戦とガダルカナルの悲劇。海軍と陸軍の思惑の違いと、緒戦での優勢に油断した日本軍の凋落の始まり。リーダーたちの戦略的統一性のなさ、現場の情報が上へ伝わらない組織。そして兵士たちの悲劇。

    今でもじっくりと捉えなおさなければならない事項が多くなってくる第3巻。

    0
    2013年05月29日

    Posted by ブクログ

    ジャワ島での勝利の後、ミッドウェー、ガダルカナルで海軍、陸軍が大敗を食らい、戦況が大きく傾く。2018.6.17

    0
    2018年06月17日

    Posted by ブクログ

    「小説 太平洋戦争〔3〕 南太平洋の死闘」山岡荘八
    歴史小説。油色。
    全九巻の三。

    よくよく取り上げられる日本軍敗退への序章。読んでいて感じるのは、事実どうだったかは置いておいても、「司令部は現地のことが分かっておらんのだ!」という前線の不満と、そのうえ国のため理想のために軍規に準じて作戦行動の駒になるのが当たりまえだということ。
    死、というものに直結する恐怖もさることながら、言論思想の統制・矯正という面でも、戦争のおぞましさをみられると思う。

    3巻は、ミッドウェー海戦とガダルカナル島の戦い。
    (3)

    -----
    やっぱり、国に殉じて人がどんどん死んでゆくんじゃないか…。
    自発的か否か。そうだった兵もいればそうでなかった兵もいるだろう、でなければ「非国民ー」「脱走兵ー」はあり得ない。
    どちらが幸せかと言えば自発的であることの方が当然幸せで、つまり自発的になり得なかった「非国民ー」の葛藤、懊悩、死の意味を考えるとなんて哀しいのだろう…。
    …だから今の日本に生かされている私達は、遺してくれた国で精一杯よりよく生きていくしかない、というなにかもやっとした義務感。。

    p68.
    歴史の上に全く無意味な「犬死ー」などは存在しない。それは後世の人々が、その意味するものを探りだそうとする努力を怠り、その過去の事実から反省の資を摂取する才能を持たない場合の、まことに不遜な片付け方ではあるまいか。

    p167.
    徹底的に戦った民族は、曖昧に革命を行う民族よりは、はるかに高い再興率を持っている。歴史ははっきりとそれを証明しているのだ。

    p293.
    これは兵隊たちの忠誠心や正義のための忍耐などとは厳重に区別されなければならない。これこそ逆に、正義への裏切りにほかならないからである。

    p319.
    ここはどうしても都合よく解釈してるとしか思えないな。

    0
    2013年03月05日

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    ジャワ攻略を予想以上の成功に導いたのは,ジャングルへの備えと今村均中将およびその命令下の将士の冷静かつ果敢な行動,それに陸海軍の緊密な協力にあった。今村中将の逸話を聞くに従い,これが太平洋戦争全体を包んでいたらという思いを強く持つ。

    今村中将は,インドネシアに侵攻しつつも,常に現地人への被害に対する反省がつきまとっていたに違いない。このため,オランダの降伏後は,民政に力を入れ,インドネシアの現地人の独立を助けるように支援した。そんな占領初期の日本人に対しては,現地人は非常に好感を持ってこれを向かえ,惜しまない協力をくれた。インドネシアは,どこの占領地域よりも明るく,活気があり,みな伸び伸びと生活していた。しかし,一方で,日本国内の窮乏は日に日に深刻の度合いを深め,このような明るい姿に嫉妬しだし,臥薪嘗胆主義者達の感情に触れた。中央から派遣された武藤章軍務局長が東条の意を携え飛来して来た。威令に満ち・厳しい統治を進めよということだ。今村は決して日本の方針を踏み外すことはなかった。ただ,今村の言う日本の方針とは,唯一,天皇陛下の決定された統治要綱であり,『戦略物資の確保,国際法の厳守,現地の人心安定』の3つであった。その3つを厳守するためには,威令でも鞭でもなく,現地人に常に希望の光を灯しておく,つまりは,独立の夢を支援してあげる事こそが,インドネシアを統治し,うまく運営して行く要となると武藤に懇々と説いた。今村から言わせると,この度の中央からの命令は,天皇の意に沿ったものではなく,陸軍省の感覚や,一部の秀才が勝手に天皇の統治要綱を変更したものだと。ただ,残念ながら今村中将の統治から,軍政当局者による統治に変わるにつれ,現地人には威風で臨めといった空威張りが横行するようになり現地人も暗澹としていく。

    ミッドウェー海戦は,日本側からいえば大敗北であり,これまでの必勝の自信と誇りを失う痛恨事であった。当時の海軍は,名実ともに世界のトップクラスであった。ゼロ戦の戦闘力や魚雷の射程距離などは世界随一であった事は明白である。そんな帝国海軍がミッドウェーでは信じられない敗北を喫する。その原因として,今日あげられる最大のものは,連戦連勝の成果に酔った指導部の慢心であったとされる。確かに,それは外れていないが,その背景にあったものを全て理解した後に語るべきものであり,軽々しく,無謀で狂気の沙汰の海戦であったと済ませてはならない。それでは,失われた日本兵の死が全く無意味な犬死に成り下がって行くではないか。歴史上,全く無意味な犬死などは存在しない。それは後世の人々が,その意味するものを探り出そうとする努力を怠り,その過去の事実から反省の資を摂取する才能を持たない人々の,まことに不遜な片付け方ではないかと思うのである。著者としては,この部分を,少なくとも読者には知ってもらいたい,理解してもらいたい,教訓にしてもらいたいと思って,おそらく大げさではなく,命を削ってでも後世に文字として残したのだろう。

    本来,海軍は戦争を長引かせることは不可能だと言ってきた。山本は1年ぐらいは十分暴れられるが,その後は自信がないと言っているし,海軍軍令部総長の永野も対米戦争は1年か2年は持ちこたえられるが,それから先は分からないといっている。石油の貯蔵量を使い果たすと,世界一の艦隊も軍港に抑留しなければならなくなるためである。このため,太平洋での防衛的な戦略戦術は取りえない。速戦・即決で如何に早く戦争を有利なうちに終結させるかということに尽きるのであった。まずはハワイを襲撃し,太平洋の制海権を確保し,続いて東南アジアの海域からインド洋を制圧し,陸軍の行動を助けて戦略物資の調達路を確保し,そして,ハワイ奇襲により打撃を与えたアメリカの超大海軍の再建完成を最も効果的に妨害して行くことであった。ただ,アメリカ本土を攻撃して,生産設備を破壊する力まではない。このため,再建艦隊の大きくならないうちにこれをいずれかの海域に誘い出し,艦隊決戦に挑んで行くほかなかった。再建できたアメリカ艦隊がこちらを圧倒するほどの大勢力にならないうちに,どこかの海域へ引っ張り出して叩くこと,これがギリギリで考え出された山本戦法の根幹を成すものであったろう。南は豪州から北はアリューシャン列島まで,広大な作戦規模は,わざと巨大なくもの巣の網を張り,そこへ誘き出し,ひっ包んで撃沈してゆく,そしてその間に好機を捉えてこの戦を終息に導かせるという構想だ。こちらがその意気込みでアメリカ軍を射ち沈めていこうにも,向こうはそれに優る生産力を持っている。それに反して味方は小艦艇一隻を失っても,それはもはや今次の戦争中に補充される見通しはないという,絶対のマイナスに繋がってゆくギリギリの戦だったのだ。アメリカは『日本海軍は石油という動力源のパイプを閉ざしておきさえすれば,両3年の間には乾上る海軍だ』といった蔑視の上に立って,石油の禁輸を断行し,日本はあらゆる面から挑発した。それに対し,日本は従来の戦略戦術をもってしては全然勝ち味のない戦ながら,止むなくこれに突入して来ているのであった。利害を計算したら開戦すべきではなく,はじめから米英のなすがままに任せておく方がよかったのだ。そういった思考のもとから,ミッドウェー作戦を決定していったのは,やむを得ない成り行きだったと思うのである。

    真珠湾,シンガポール占領,フィリピン攻略などは,米英は出鼻を挫かれただけで,全然立ち上がってはいないのだ。それなのに,これ以上戦局を拡大し,進むのは不当である等,陸軍出身の東条の考え方もあり,これ以上学生は召集しないという声明が発せられた。連戦連勝の経験がひどくタガを緩ませ,山本の『今度の敵は我が国始まって以来,最大最強の敵である』と言う主張を理解する人間は少なかった。また,情報戦・索敵戦については,アメリカに大きくひけをとっていた。索敵による敵機発見が1時間差があるだけで,運命を決してゆく,言いようもなく大切な差になってしまったのが,ミッドウェー海戦である。この海戦で,日本軍は最新鋭艦4隻を失ったが,それはこの戦争中の日本の実力では取り返しのつかない損失である事を海戦に臨んだ艦長や司令官は認識しており,そのために,自艦沈没の折には,責任をとって,艦とともに沈んだ者が多かった。

    山本五十六が三国同盟には徹底して反対していながら,太平洋戦争には徹底的に反対しなかった理由として,『日本の革命』があった。もし太平洋戦争に海軍をあげて反対したら,陸軍の少壮将校は必ずクーデターをやるに違いない。そうなると,国家社会主義やら共産主義やら,判然しない革命政権が出現するだろう。そして,彼らは現在よりも数倍混乱した能力で,昂然とアメリカに挑戦していくにちがいない。その結果,日本は現在の力で戦うよりはるかに惨憺たる亡国になってゆくに違いない。そこで歯を食いしばって開戦に賛成する。賛成するが,早期決戦で講和に持ち込まなければ勝ち味はないことを常に中央に忠告しなければならない。その忠告が届かぬと見た時に,海軍は平素の教育信条のとおり,最後の一兵に至るまで厳しく戦って滅んでゆこうと考えていた。ミッドウェーでは敗北したが,これはミッドウェーと言う局地戦での敗北ではなく,太平洋戦争という大きな視点でも日本海軍は敗北したと言ってもいいだろう。

    海軍敗北の一ページはミッドウェーであったが,それと相対する陸軍敗北の第一歩は,ガダルカナル島争奪戦であった。当初は,日本陸軍はガダルカナル島を重視していなかった。というより,このような島はしらなかった。アメリカは逆に,アメリカと豪州の生命線を守る城砦として,日本軍をこれ以上南に進出させないために,絶対欠くことの出来ない拠点であった。その意識においても,守るアメリカ方と攻める日本方では,緊迫度合いも違い,それに輪をかけるように,日本軍の驕りがあった。

    ガダルカナルの戦況が悪化して行くにつれ,日本軍の驕り,無謀は輪をかけて増していった。『こうなったら日本軍の面目に賭けてもアメリカ軍を殲滅してやる』と,満々とした考えが中央にも現地軍にもあった。ただ,次第に要塞化され,軍備も充実していくアメリカ軍を冷静な目で捉え,深入りせず,こちらも戦略をもう一度練り直すべきだといったような後ろ向きな意見もあったが,これは一蹴された。そこへ,カノン砲や砲弾とともに,11名の参謀陣と派遣参謀も3名を加え,大兵団を送り込み,一大決戦をしようという動きを陸軍中央部がとるのである。1万5千人の軍隊を送り届けるには,空海上から,それなりの援護が必要になる。しかし,このような隙間は現時点ではほとんどなく,無理に上陸しようとして敵機に見つかり,人員・軍資の大半が海の藻屑に消えてしまったのである。辛うじて上陸した部隊には,10日を養うほどの食料もなく,弾薬は半日で尽きるぐらいしか残っていなかった。これに,マラリヤや赤痢などに多くの兵士が感染し,兵士達は骨と皮ばかりになっていた。引き返すにも船もなく,まさに,行くも死,留まるも死であった。大挙やってきた若い参謀達は大きく狂っていたが,反面,その他の将士や兵士達は責任感があり,再起の可能性がほとんどないと悟った時,この際残っている精力をふりしぼって一寸たりとも前進し,もって後続部隊のために道を拓いておくことが最後の奉公となると考えて,散華していった。2回もの総攻撃に失敗した日本軍は,アメリカ軍に負けたと言うより,これら若き参謀達の稚拙で無謀で全く理解に苦しむ戦略による犠牲となったとも言えよう。

    既にガダルカナル島が敵の反抗の第一拠点となったことは明瞭である。ここに,陸軍がこだわればこだわるほど,犠牲は陸軍だけでは済まず,その護衛・輸送に協力する太平洋上の主戦力である海軍勢力の大消耗を来たして,戦争全体の敗色を深める結果となった。2回もの総攻撃に失敗した日本軍だが,子供の喧嘩のような面子にこだわり,意地にもなって,第3次の総攻撃に突撃していったのは,後世の私達から見れば,何故という疑問を超えて,腹ただしくもあり,またそこで亡くなった士卒のことを思うと,やるせない気持ちになるのである。

    これらの太平洋戦争では,帝国陸軍の異常なまでの意地や,開戦初期は幸運にみまわれただけのことなのにそれを当たり前のように感じ驕りに変わっていったことが不運な結果を引き起こす大きな要因になったのである。この教訓から,我々は,勝っておごらず,敗れても狼狽しない冷静さをつねに堅持していかねばならないと肝に命じなければ,散っていった将士達に申し訳が立たなくなる気持ちに襲われる。

    ガダルカナル島では,第2次総攻撃で生き残った兵達が,飢餓に近い状態で取り残されている。彼らが今戦っているのは,アメリカ軍ではなく,病や飢えに対してであった。川という川には魚一匹いなくなり,森からはトカゲも一匹もいなくなったという。見つけ次第にとる人間の数が多すぎるので,さしものトカゲの群れも食い尽くされてしまったのだ。そんな異常な状態を引き起こすのも,戦争の一情景であることを心しておかなければならない。ある時には,立派な美点として通る日本人の『頑張り』が,ある時には欠点となって,悲劇の波紋を拡大して行ったのだ。第3次総攻撃のため,輸送船団は編成され,魔の海域に乗り出したが,結局これも敵の猛襲に会い,食料の不足している飢餓の島へ,十分な食料の補充も行い得ないまま,人員の補充のみが行われ,悲劇の上塗りをしてしまった。輸送船団の被災により,アメリカ軍との軍備の差が更に増すとともに,原料調達力と生産力の差がいよいよ激しく日本側を圧迫していった。

    退きたくても意地でも退けない,そんな陸軍の状況をみかねた山本五十六は,『撤退断行のほかに結論なし』と大本営に具申した。正直なところ,その山本の具申には陸軍首脳部も,ほっとしたのではないか。でも,そこに至るには余りにも多くの犠牲が出すぎた。そして,このような状況において,現地の兵員達は撤退を良しとするのかも問題であった。ここまできたら,飢え死にか,玉砕覚悟の特攻か,そんな選択を迫られているギリギリの状態で,撤退という言葉に飛びつき得ないというのがこれまでの犠牲者と,陸軍参謀達に対する無言の抗議であったのではないか。

    投入総員3万3千人のうち,戦死1万4千600人,戦病死4千300人,行方不明2千400人という同胞の犠牲がガダルカナルという一小島で起こった事実である。ここは,日本陸軍の哀しい墓地の一つであった。

    0
    2012年04月28日

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