【感想・ネタバレ】小説 太平洋戦争(1)のレビュー

あらすじ

昭和16年、日米両国は最悪の関係に陥っていた。前年の日独伊三国同盟に徹底対抗を宣するアメリカ。大統領ルーズベルトは、すでに対日戦争の肚を固めていたのだ。日本は打開策を模索し、再三交渉の特使を派遣するが……。太平洋戦争全史を描いた唯一の大河小説、今よみがえる! 全9巻。

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Posted by ブクログ

日本が、アメリカへ戦争を仕掛けた原因が、良く分かった。ただ、作者が称える、アメリカ人の有色人種への偏見が今も続いているのかと思うと、また戦争が起こる可能性があると思う。日本人は今の時代にどの様に判断して、世界に対処していくべきかを考えさせられる、大変有意義な本でした。

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2025年01月10日

Posted by ブクログ

小さい頃は
アメリカに挑むとか無謀すぎ...
神風って何だ?イカレてんのか?
東洋のヒトラーって何を言った?
と思っていた。
現代の日本の世情と比べては、どうしてそうなったのか全く想像がつかなかった。
悲しい、苦しい、数多くの人の決意と決断の連続じゃないかぁ。
昔、知覧特攻平和会館でも沖縄ひめゆりの塔でも感じるものが少なかったが、今頃思い通じて胸痛くなった。

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2022年12月08日

Posted by ブクログ

如何にして、日本が太平洋戦争に足を踏み入れていったか(アメリカによって戦争する以外の退路を断たれた)か分かる一冊。
あの戦争が良かったとは思わないが、戦争しなければ、軍部の内乱や内紛等で日本は内部崩壊していたと思われる(少なくとも当時、山本五十六はそう見ていた)。
今の日本は、あの戦争があったからここまで繁栄したとも言える。

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2015年01月02日

Posted by ブクログ

太平洋戦争を戦争の始まりから終わりまで、史実を忠実に追って書かれた歴史書。小説と表題にありますが創作ではまったくありません。過去の戦争で何があったのか知らなかったので知りたくなって読んでみました。

読み終えて日本人ってすごいなぁと思いました。当時のものの考え方や行いを見ていると、とても同じ人間とは思えません。もっとも、そのすごみは戦後数十年を西洋文化と共にある中でほとんど失われていると思うけれど。自分の中にもその片鱗すら無いような気がする。

とにかく史実を知らない人、学校で習った教科書でしか歴史を知らない人はこれを一度読んでみると、大変勉強になると思います。なにはともあれ、一読あれ。

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2012年08月23日

Posted by ブクログ

全9巻。

坂の上の雲で、司馬遼がやたら陸軍バッシングしてたので。
ついにずっと読むの拒否してた昭和へ。
しばらく司馬遼が続いたので、
久しぶりの山岡先生ってワクワクして読んでみる。
が。
少しびっくり。
自分の知ってる山岡作品ではなく、
司馬遼タイプの先生が語る感じ。



ご本人が報道班員として従軍されていて、
まだ戦後から25年。
硫黄島が返還されて、まだ沖縄が返還されていない。
いつもの時代小説として書くには、
あまりにも身近な出来事だったんだと思う。

正直、いつもの山岡作品のような楽しみ方はできなかった。
が。
すごく考えさせられる。
だって歴史と呼ぶには近すぎる、
身近に体験者がいる世代だもの。
まだ。



自分が祖父母や学校から聞かされて来た戦争は、
「戦争はダメな事」という教訓のための、
道徳教材な昔話でしかなかった。
「欲しがりません勝つまでは」
「神風特攻隊」
「強制労働」
「原爆」
自分の持ってたイメージなんてそんなもん。
なんで戦争始まって、なんで日本は負けたかなんて知らない。
昔の日本がヒステリックで非合理的だったからでしょ?みたいな。



すごく驚いたのが、サムライだったんだってこと。
日本人が。
昭和でも。

明治までのサムライな空気の残る日本と、
自分が生まれた昭和の日本は別の国だと思ってた。
だって自分が育った昭和にはサムライなんていなくて、
カメラで眼鏡で出っ歯のいじられキャらだもの。

サムライがいなくなったのは、
時代の流れで国が変わったんじゃなくて、
戦争に負けてサムライが淘汰されたからって印象を受けた。
インディアンみたいに直接的じゃなく、
少しずつ時間をかけて洗脳するみたいに。

大戦まで、日本は確かに認められ、恐れられる部分が
世界に対してあったように思えた。



自分が育って来た日本は
アメリカに教育し直された日本で、
だから過去の戦争で日本は悪く、愚かで、悲惨で、
一流になるには外国と同じようにしなければいけないって
教育して来たんじゃないかと思った。

アメリカはじめ、白人国があの戦争でどんなことをして、
何をしようとしたか。
そこで行われた事が、
本当に彼らが胸を張れる正義だったのか。
彼らの文化で日本の文化をキチンと計ることはできてたのか。

白人達は有色人種を認めないっていう時代の中で、
有色人種代表として、ただ1国で有色人種の解放を訴えた、
日本人の、日本人らしいロマンチックな誠意ってのがあったことを、
自分は全く知らなかったし、教わっていない。




もちろん小説だし、氏が戦争に近すぎるし、
かたよった感想かもしれないけど、
今まで持っていたイメージをガラリと変えられる事が多かった。
戦争はくり返してはいけないけど、
右な人間を無条件で認めようとは思わないけれど、
今の日本が過去の日本に胸張れるのか分からんくなった。

戦争を知らない、自分たちの世代は、
ちゃんと勉強してみた方が良い気がした。





ちなみに...............。

後書きが個人的にかなり好きだった。
山岡先生の年譜が、エッセイみたいになってる。

吉川英治、村上元三、海音寺潮五郎、富田常雄....
自分の大好きな作家達との交流がチラホラと。

小説しか読んでこなかったので、
経歴とか知らなかった。
凄くびっくり。
この時代すげえ。

吉川先生と、若い頃の氏とのエピソードが特に好き。
にやっとした後、鳥肌立った。

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2011年09月14日

Posted by ブクログ

 我が国の歴史で最も最近で、かつ、最も悲惨な戦争となった大東亜戦争。第1巻では、外交努力により戦争回避を試みようとするが、米国からは全く相手にされず、やむなく真珠湾攻撃により開戦に至るまでを描写している。
 日本の外交努力が結局は戦争回避には結びつかなかったのだが、日本の外交力不足、外交の統一感の不足、米国の対日戦争への考えなど、様々な要因により戦争回避には至らなかった。
 山岡氏の見方では、アメリカの少しの努力=蒋介石と日本とを握手させるということ、を怠ったために、多くの犠牲を払い、また、戦後の朝鮮戦争やベトナム戦争、冷戦の原因となっている、とのことだが、確かにその一面もあるだろう。
 とにかく、戦前日本が国を賭けて戦った大東亜戦争。結果はご存知のとおりであるが、それに至る経緯、その戦争でどうやって我が軍が戦ったかということは、認識しておくべき事項である。

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2010年03月15日

Posted by ブクログ

最初に『執筆を終えて』から始まりますが、これが印象的。この小説がどこまでノンフィクションかフィクションなのか分からず、でも一方で、戦争が行われたのは事実なので、なんとも言えない気持ちで読みました。太平洋戦争の始まりっていつなのか、やはり昭和2年の満州事変からなのかな。20年近い戦争の最終盤が、この最悪の太平洋戦争。しかし、欧米に戦争をするよう仕向けられた。相手は原爆を落としたのに、日本はホノルル市街に被害は与えていないといった内容をはじめ、日本贔屓の論調が、かなり偏った見方かもと、気になりました。残り8巻!

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2023年01月28日

Posted by ブクログ

これまで抱いていた松岡洋右や東條英機のイメージが覆った。特に東條が戦争を回避するために首相に推されたというのには驚いた。海軍は開戦反対派、陸軍は好戦派といった単純なものでもなく、無謀に戦火に進んだのでなく、米国の白人至上主義が有色人種を締め上げ、窮地に追い込んだのだと。70年前の遠い過去のことと言えない。トランプとルーズベルトがダブって映る。2018.3.19

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2018年03月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

これは小説なのか……。
あえて、小説と銘打っているのであれば、真実に近くともそうではないことを肝に銘じて読まねばならない。

それを踏まえてでも、開戦前の外交の緊張感、東条の苦悩……
近衛のひどさに、震える(笑)
なんか近衛は現在の政治家たちに通じるものがあるので、いろいろな意味での震え。うーむ。

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2012年12月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

まず,本書を読み始めるのは非常に腰が重たかった。9冊というボリュームだし,歴史小説と言うには余りにも近代は近すぎたためだ。しかし,前書きを読み始めたとたんにそんな考えは吹き飛んだ。現在の太平洋戦争についての常識は,アメリカ人がこしらえたものだ。日本でそのときに何が起こっていたのか,日本人が何を考えて戦争へと突入したのか。現在の日本人として当然知っておくべきことであり,間違った見解を他人・他国の人が言った場合,それはきちんと正して行くことが,日本のことを思い散って行った人たちに対する,残された我々の義務なのだと。それがないと,やりきれない。私の祖父の兄弟2人も太平洋戦争で亡くなった。海軍と陸軍でだ。そんなに近くに戦争の犠牲者はいるのだ。戦争で亡くなったおじいちゃんの兄弟に対し,戦争の真実を知ることが私にとっては義務である,そんな思いに駆り立てられた。通常,私の歴史小説備忘録は,数巻の長編でも一つの備忘録に集約するが,今回は,1巻ずつ丁寧にまとめていこうと思う。

殺人は平時において最大の悪行である。が,戦争では,それが堂々と行われる。それも,殺しあう人々の間では直接何の怨怨もないと言うのに国家の名で堂々とだ。その殺人の量が功績となり,忠誠心を計るバロメーターとなって勝利者が決まってゆく。そのような不思議なルールの現実について,従軍経験のある著者の山岡氏は納得が出来なかった。日支事変を泥沼へ追い込んでいるものは,近衛首相や東条首相でもなければ蒋介石でもない。日支の代表者である両者が握手しそうになると,列強の間の見えざる手が動いたり,原因不明の不思議な事件が突発したりして戦線は思わぬ方向へ拡大する。前者の主役はアメリカとイギリスであり,後者は世界の赤化を目指すコミンテルンの手が動いている。それを解決して行くということは,そのまま,アメリカ,イギリス,ソ連を敵に回して戦わなければならないということと同義であった。

山岡氏は三十四歳の時,徴用令書を受け取っている。家を出るときは,自分の位牌を仏壇の隅に隠して行ったらしい。自分で自分を殺してゆけば気が楽だとでも思ったのだろう。そんな山岡氏が復員した中で一番辛かったのが,占領軍が日々ラジオで語りかけてくる「太平洋戦争の真相はこうだ!」という独善放送だった。日本国民がいかにして巧妙に大本営や軍部に欺かれ,踊らされていた愚民であったかという放送が,これでもかというほど続けられた。連合軍側は全て正しく,日本の散華者はみな犬死という,ありえないような戦争が日本民族の手で強行されたと言っても誰も信じるものはないが,しかし,それに関する反論の仕方さえわからないのではこの独善放送や戦後の誤った史観に対し,批判の仕様がない。山岡氏が十年間に渡りこの小説を連載していったのは,何のためにこの戦争は起こり,どのような結果を辿って敗れたのか,その粗筋だけでも読みやすく書き残しておくことが従軍した責任でもあったと綴っている。

日本と蒋介石が提携し,緊密化して行けば一番困るのは自由主義世界の諸国ではなく,アジア赤化を目指す勢力のはずであった。両者の間に紛争を起こさせるのは赤色革命の常道であった。盧溝橋の最初の撃ち合いは日本側の発砲でも蒋介石側の発砲でもなく,赤化勢力の仕業だった。にもかかわらず,日本側は蒋介石に挑戦されたと勘違いし,蒋介石側は日本軍に挑まれたと誤解した。近衛内閣の外相松岡洋右は,日支事変の解決には3つの大きな障碍があると近衛に語った。一つはコミンテルンの日支赤化方策,一つは日本にも蒋介石にも適当に干渉し適当に威圧を加えながら双方へ軍需物資を売っている米英両国の商人たち,そしてもう一つは,日本の内部における少壮軍人の下克上であると。

ただ,松岡外相も,今となってはアメリカの仲裁によるほか支那事変の解決の手段はないと考えた。アメリカがその気になれば,援助物資を断たれるのを恐れて,蒋介石もいやとはいえないだろうということだ。そして,日本もアメリカに首根っこを押さえつけられている。日本が今まで支那で戦い得たのは,アメリカの供給するくず鉄と石油のおかげだったからだ。松岡の目的の全ては,アメリカの仲裁による日支の和平であり,日米戦争の回避であった。

そんな日本の周りには,ソ連のスターリン,ドイツのヒットラー,アメリカのルーズベルト,イギリスのチャーチル,支那大陸の蒋介石がおり,世界の勝負は5人の男に握られていると言っても良かった。この5人の動向をいち早く・確実に掴むことが,国を存続させていく最低で最大の条件であった。米英は既に,支那事変からはっきりと日本の敵に回っている。米英が蒋介石を援助しなければ,とうに事変は解決していることを誰よりもわかっているのも彼らだ。その意味では,当時の支那軍は,米英とソ連の傭兵のようなものだ。支那軍は,ソ連と白欧主義の武器を持たされて,彼らの戦略のために同種の日本人と殺しあいを演じている。ソ連は日本と支那を戦わせ,双方を疲労のどん底に突き落とし,そこに共産政権を樹立して支那も満州も日本も一挙に赤化併呑しようというのが狙いだった。米英もそうしたソ連の方針は悉知しているし,やがてソ連が米英の前に立ち塞がる敵ということも分かっている。だが,彼らは白欧文明の支配者意識におごりきり,日本がやがて彼らの大切な協力者に育つのだと言う一点に目を塞ぎ,思い上がっている軍部を懲らしめるために正義感を燃やしていたのだ。もし,日本が滅び去ったら,ソ連の赤化は成功し,米英の自由は最大限に脅かされるということを見落としていた。

ルーズベルトの懸念と言えば国内の戦争反対の圧倒的な世論であった。彼は3選という異例の大統領選挙中に,皆さんの子供は戦争に引き出さないと公約もしているのだ。だが,当選後は彼は蒋介石に武器援助を開始した。こんな彼が日本に好条件で握手しようと言う提案を持ってきた。これを松岡外相は,アメリカにそんな意志はなく,単なる時間稼ぎで,出来れば会戦の口実を日本に作らせようとする罠であろうと,提案受け入れに前向きな近衛首相につっかかった。結局彼は更迭され,日本はまんまとアメリカの策略にはまって行く。戦時の指導者と国民ほど皮肉なものはない。誰が巧に国民を欺いて駆使し得るかにかかってゆく。ただ,この場合の国民欺瞞はそれを”勝利”に繋ぎ得れば救国の英雄とされ,”敗北”の側に回ると,哀れな最期を遂げざるを得なくなるのだ。

日本はアメリカに欺かれた。日本はアメリカに屈服すること無しに何事もなしえない属国のようなものだとアメリカはたかをくくっている。彼らはただ日本を激昂させ,日本から開戦の口火を切らせ,アメリカ国内世論を戦争に向かわせれば良いと考えているのだった。

そんな中,ドイツがソ連へ侵攻する。ドイツ軍の快進撃に,陸軍の少壮分子は世界中をドイツに取られてしまうと声を上げる。そんな声に押されて,南部仏印(第二次世界大戦下におけるフランス領インドシナ)に侵攻する。それをきっかけに,アメリカは日本の在米資産を凍結し,石油輸出もストップした。これで,戦争になれば1年から1年半で石油貯蔵がなくなるという事態に陥ったのだ。アメリカと戦って勝算があるのか,天皇が軍令部総長の永野にご下問した。永野は,座して屈服するわけに行かず,ほかに活きる道はないと言ったようだ。天皇も,それではこれは捨て鉢の戦ではないかとおっしゃられたという。天皇は日米開戦に絶対反対なのは明白な事実だった。日本人にとって,天皇と皇室は絶対であり,道徳そのものだった。御前会議でも天皇の意志は戦争に反対なのは明白であったが,専横を恐れ,小心で律儀な政務家の近衛の決断力のなさが,戦争を止めることが出来なかった一因でもあるのだろう。
そんな公卿首相に東条は『人間はたまに清水の舞台から目をつぶって飛び降りることも必要ですよ』と言った。この言葉が,後々まで開戦の決意を促したとして,東京裁判でも問題になったが,東条は,必ずしも開戦の決意を迫ったのではなかったのではないか。天皇の意を汲み取り,戦争してはならないときっぱり言うべきだと言いたかったのではないか。

東条は,総理の煮え切れなさに腹を立てて言う。日本軍が満州から退き,防共駐兵を譲ると,支那全土は瞬く間に共産軍に占領される。これはアジアを赤化するかもしれない重大な問題だ。防共駐兵を譲れば交渉が妥結する確証があるなら別だが,確証はないと。東条はここで,開戦も止むを得ずと思うとも発言した。東条は確信していた。開戦を回避することは困難であると。アメリカ側に有色人種も含めて真に平等にものを考えていく習慣はまだ全くない。地球は白人のためにあると。日本がどれだけ良心的であろうと,戦を避けようとしても無駄であると。

その東条は,元首相7人で構成される重臣会議で首相に推薦される。陛下の意志には身を挺して主旨に沿うし,軍部の信用もあり,外交交渉の折に陸軍の少壮分子の主戦論を抑えることが出来ると。東条が首相に推薦された理由は他にもある。それは,責任回避の空気だ。みなが戦争は回避したいと思っている。でも戦争は回避できそうもない。その責任者にはなりたくないのだ。そんな感じだから,政府はあっても無政府状態となり,結局は責任ある行動がとれず,戦争に流れていったのかもしれない。これも開戦となった大きな理由の一つだろう。

しかし東条は天皇の意志が戦争回避にあるなら,それを貫こうとする。首相指名を受け,閣僚の人選に移るが,陸軍内の戦争へ向かって付き進むような閣僚推薦名簿には目もくれず,自分で人事を決めた。そして,陸軍の発言を抑えるために陸軍大臣と,警察権を手中にしておくため内務大臣を兼任した。

アメリカの思いは,日本もまたアジアのヒットラーであるということだ。その中心勢力は軍部であり,最後にはこれを叩きのめして懲らしめてやることが彼ら白人の言う正義のために絶対必要だと言うことだった。従って,日本が絶対服従の答えを出すのでなければ無意味と言うことは明らかだった。日本は様々な外交を駆使し,また,譲歩案も持参し,平和に努力した。中国における日本の地位さえも犠牲に共しかねまじき態度を示した。しかしアメリカは日本を許さず,またただ許さないだけ出なく,まず日本に最初の一発を発砲させることのみに苦心した。こんな状況下におかれて,日本人はどうすればよかったのだろうか。現に,インド,ビルマ,マレー,ジャワ,カンボジアなどは米英の支配の下で見るも無残な奴隷生活を強いられている。日本人はそんな現実を知っており,座してそうなるか,一縷の望みを胸に戦うのか,ぎりぎりの選択を迫られた。そんな極度の緊張を強いられることで,明治人の性根が再び頭を出してきた。日本国内では,直ちに開戦せよという声が国民大衆の声にまで膨らんできていた。

日本が開戦することを決意したのは,ルーズベルトの世界政策であったが,日本側で天皇はじめ,東条,などの平和の希望を一挙に吹き飛ばしてしまったのは,実は白人支配の地上の不合理に気付いて,外交交渉を行う前線と一つになって激怒した民衆の声であった。

ここで,山本五十六という,現連合艦隊司令長官の登場である。山本は日本海軍の使い方としては,独伊への奉仕に使うのでは,米英への奉仕に使うのとなんら変わりはない,白人利己主義から人類解放という全有色人種のために日本海軍は使うべきなのだというのが持論があった。ただそんな思いももはやこんな段階になって言っても仕方がない。挑みかかられれば,職責を果たすのみであった。

黒船来航以来,明治維新の根本には和魂洋才の思想が根を下ろしていた。独立を保持せんがために彼らの文明を吸収するのだと言う強い意志があった。それに対し,はじめはアメリカも同情の念があった。しかし,ロシアの抑え手である日本は好もしいが,アジアの強国になる日本は好もしくなかったに違いない。日露戦争の折にはアメリカは日本を応援したが,日本海海戦における日本軍の大勝利を見たとたん,急にこれを恐れて大西洋艦隊を回航してまで日本海軍を威嚇したりしたことでもそれはわかる。これを見た山本は日米対立は遠からずくるものと想定し,大艦巨砲時代から航空兵力の充実を提唱した。それに伴って飛行機の国産に乗り出し,上昇力・戦闘力ともに世界の目をみはらせた零式戦闘機が開発したのである。ただ,これらが悪循環し,アメリカは日本を,日本はアメリカを仮想敵国とし,太平洋での熱戦を展開しなければならなくなった。ここはしっかりと歴史の教訓として覚えておかなければならない。

一旦開戦となれば,日本陸軍はまず東南アジアに進出して,アメリカの売らなくなった石油の入手を計らなければならない。そのためには,陸軍の策戦海域にアメリカ海軍の出動を許してはならず,それを許さぬためには真珠湾に出てきているアメリカの太平洋艦隊主力に壊滅的な打撃を与えておかなければならない。これは小学生でもわかるようなことである。それをアメリカは予想できず,真珠湾を奇襲されたと言う。おかしなはなしではないか。

1941年12月8日の決戦前夜はどのようであったか。11月27日のアメリカのマーシャル参謀総長は,ハル・ノートに示した白人第一主義とも言うべき要求を日本が受諾する可能性はほとんどないこと,そして,その結果日本から先に敵対行動に出る事を期待していること,その際のアメリカ側の策戦計画も出来上がっていることをカリブ海の基地司令官宛に発していた。また奇襲の2時間余り前にも,ハワイ・フィリピン・パナマその他の前哨基地に特に警戒するよう打電している。これは,もはや奇襲とはいわない。アメリカ側から挑発した戦であり,彼らが日本にまず第一発を打たせる事によって自国の民衆を第2次大戦に参加させようとして,営々と苦心を重ねてきた結果なのである。日本が平和に解決せんがために様々な妥協案を提示したにもかかわらず。

そしてその時はやってきた。まだ世は明け放れず,月も落ちきってはいない時間に戦闘ラッパは鳴り響いた。有色人種の最初の反撃だ。ここ数百年,思うままに地球支配を続けてきて,次第に良心を麻痺させていった白人たちへの最初にして最大の警告だった。ただし,どんな場合にも非戦闘員に銃撃を加えたり,一般市民の頭上に爆弾を落としたりして日本人の名誉を損ずることのないようにという訓示は徹底されていた。結果として,真珠湾攻撃では,真珠湾の隣のホノルル市街地には何の被害も無い。後のアメリカの日本都市の無差別爆撃や原爆投下のような一般市民を巻き込みはしなかった。日本人の誇りとして。

なお,備忘中の言葉は小説の記載によりました。

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2012年04月17日

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購入済み

戦勝国のその後

負けたからこその繁栄です。
軍部に取られて浪費していたリソースを、民間用途に展開してるのですから。
おかげで人口が増えても食い扶持を賄えた。
朝鮮で共産圏と戦争してドローの後、ベトナムでタコ負け、その少し前に執筆が終わったみたいですね。
アフガニスタンでは自国民を晒す訳にはいかん。
との理屈で現地人に武器弾薬を与えたはいいけど、頭の悪い人たちが与えたおかげで約20年後に911が起きます。
地雷を除いて、道路や橋を整備して、と真面目に面倒見てればこんなこと起きなかったはずなのに。
瓶付油みたいな名前のキ印まで跋扈するし。駆除するのに苦労したみたいですが、種を蒔いた責任の一端は
自分たちにあることをどれだけ理解してるのでしょうか。
追加で、頭の悪い人たちはイスラエルにも伝播して、頭のおかしいことしてます。
そのご先祖様が敵役の某ルの字大統領です。
親があれなら、子供もあれだみたいな活躍をします。
竹島の話はマの字の置き土産でしょう、あの親父も碌でもない。
お好みで。

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2025年12月06日

Posted by ブクログ

「小説 太平洋戦争〔1〕 十二月八日前後」山岡荘八
歴史小説。茶色。
全九巻の一巻。

中学生のとき以来、本格的な長編歴史小説を読み始めました。
(あのとき読んだのは確か義経本だったと思うのだけど、散々ネットで探しても該当のものが出てきません。。15巻〜くらいある文庫でした。)
案外読みやすくて、題材もメジャーなところなのですいすい読んでいます。

1巻は、日ソ不可侵条約から真珠湾攻撃まで。
(3)

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以下メモ

大義名分
通州事件

確かにおそらく欧米の人にとって、東洋の何を考えているかわからないような、不気味さ、不快感、みたいなものはあるのかもしれないな。

p122.l8
天皇は、国民にとって真・善・美の象徴であり、慈父慈母の愛の具現であった。

p183.ll3
したがって、戦おうと考えた者は一人もいなくとも、充分戦にはなり得るものだというこの大きな事実を、われわれは肝に刻んでおかなければならない。

p245.l3.
大衆はいつの時代にもインテリではない。インテリはその知識の仕入れ先次第で根こそぎ判断力を狂わせられる弱点を持っている。が、大衆はそうした知識の呪縛の外にあって、本能的に正邪を嗅ぎわけるふしぎな嗅覚を持っている。

p271.
男は天下を動かし、女はその男を動かす (山本五十六)

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2013年02月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

従軍記者であった山岡先生の作品。なぜタイトルに小説とかかれているのかは知りませんが、何か理由があったのでしょう。前書きだけでも本屋で立読することをおすすめしたい。ここには教科書には決して載らない歴史の事実が書かれています。国公立大学まで勉強した私ですが、卒業後この本に出会ってから「本当のことが知りたい」と思い、それがきっかけで気が狂ったようにいろんな本を調べ倒しました。戦後から現在までに教育を受けた皆さんにぜひ読んでほしい本です。

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2011年05月04日

「歴史・時代」ランキング