宮沢賢治のレビュー一覧
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いろんな出版社から発行されているなか、集英社文庫を選んだのはブックカバーに惹かれたから。
それはさておき、ここに集められている作品は残酷なものが多い。または人の悪意を感じる。
残酷なのは自然であり、悪意は発展登場の日本が生み出しつつあった階級闘争からくるものかもしれない。
ほんの100年前まで、自然はこんなにも怖ろしく、人間の行手に立ち塞がる存在だったのかと思う。自然の克服こそが近代化の証だが、感違いしてはいけないことは東日本大震災を持ち出すまでもない。
大地の営みに対して謙虚になることと、自然の脅威に立ち向かうこと。賢治は共に実践していたのでしょうね。 -
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宮沢賢治による寓話集。
表題作『銀河鉄道の夜』の他、『注文の多い料理店』『オッペルと象』『山猫とどんぐり』などが収録されています。
約5年ぶりの再読ですが、いろいろな発見がありました。今回は特に表題作の『銀河鉄道の夜』以外の作品を中心に収録された寓話を読みすすめると、宮沢賢治の作品に共通する世界観や頻繁に登場するテーマがすこしずつ見えてきました。
本書に収録された物語にはしばしば倫理的な主題が現れます。『オッペルと象』『ツェねずみ』など他者を欺供養な人物、性根が曲がったような生活を送っている人物に対して辛辣な結末が訪れる作品が多く見受けられます。随所に賢治らしい独特な言葉のリズムやみずみずし -
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10年以上ぶりに今回読んだところ、以前と印象が変わったところと変わらなかったところがあり面白かったです。含まれた全短中編に共通して再確認したことはやはり詩人の文章だということです。物事を形容する漢語や擬音語の選び方が独特で美しく、そしてユーモラスでした。漢語については、たとえば鉱物に関わるような漢語など、与える印象に透明感や輝きがある語が選ばれていて、これは漢字が読めないと子供にはわからないのかもしれないなと思いながら読み聞かせしました。擬音語は「ぐらあがあ」とか「ぎっばっふぅ」など子供の印象にも強く残ったようで読み終わったあとも口ずさんでいました。一方で今回新たに発見したことは、決して荒削
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小さい頃父によく読んでもらった本です。特によだかの星が大好きなお話で、寝る前に読んでもらっていました。
今は猫の事務所が好き。
*収録作品*
革トランク
毒もみのすきな署長さん
風の又三郎
気のいい火山弾
茨海小学校
セロ弾きのゴーシュ
どんぐりと山猫
鹿踊りのはじまり
注文の多い料理店
蜘蛛となめくじ
猫の事務所
オツベルと象
飢餓陣営
よだかの星
二十六夜
やまなし
グスコーブドリの伝記
*詩*
「春と修羅」(序)
春と修羅
報告
風景観察官
岩手山
原体剣舞連
永訣の朝
無声慟哭
あすこの田はねえ
青森挽歌
*歌曲*
星めぐりの歌
大菩薩峠の歌 -
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ネタバレ宮沢賢治の有名どころを集めた物語集。
-やまなし-
「クラムボンはかぷかぷわらったよ。」
国語の教科書でも出てくるお話。キラキラする水の光が浮かびます。
-いちょうの実-
いちょうの子どもたちがお母さん木から旅立つお話。
-よだかの星-
「いったい僕は、なぜこうみんなにいやがられるのだろう。」
鷹からは名前が似ているのが不愉快だから市蔵にしないと殺してしまうぞと言われたよだかは、遠くの向こうの向こうの空を目指して高く高く飛び立ちました。
-ひかりの素足-
「お父さんおりゃさ新しきもの着せるっていったか。」
「それからお母さん、おりゃのごと湯さ入れで洗うていったか。」
仲の良い -
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ネタバレ本書はおそらく一番風の又三郎を推している。
だが、私はグスコーブドリ伝記が一番印象に残った。
父親母親妹ブドリの家族四人が、毎日森の中で幸せな日常を送っている場面から話は始まる。そして、気象師のブドリは自分を犠牲にすることで不作となったであろう未来を変えて農家を救い、話は終わる。話の始まりと終わりを取りあげることでわかるように、この作品はわらしべ長者のように刻一刻と状況が変化する。その変化は予測不能、けれども斬新で不快感を感じない。もはや清々しさを感じ、次の展開を早く知りたくなる。そして、ふと我に返って今に至るまでに過ぎた出来事を思い返すことで、普通では想像もできない道筋を辿ってきたことには