宮沢賢治作品を漫画化している ますむらひろし による宮沢賢治エッセイ。
ますむらひろしの漫画の舞台である「ヨネザアド大陸」の「アタゴオル物語」という名前は、宮沢賢治が故郷の「岩手」を実在するドリームランドとして「イーハトーブ」と呼んだことから、では自分の自分のドリームランドはなんだろう?として故郷の
...続きを読む「米沢」と、暮らしていた「愛宕」をそのようにつけたのだそうだ、ふーーん。
ますむらひろしが漫画化した宮沢賢治童話では、人間をネコとして描いている。
漫画化にあたっては、宮沢賢治研究者や、弟の宮沢清六さんにも会って、貴重なお話をいただいたり、自分の解釈に同意してくれたり、ますます困ってしまったり、という真摯な向き合い方が書かれていた。文章を漫画などの視覚に置き換える場合、どうしてもできないことがある。また宮沢賢治の言葉や場面、思想も表現しなければいけない。これをどのように表現するかの経緯や研究を読むことができるのはなかなか面白かった。
また、宮沢賢治研究者や、弟の静六さんはネコ化はわりとあっさりと承諾してくださったという。ネコであっても人間であっても、ジョバンニの精神を持っていればそれで良いというわけ。
しかしネコによる「銀河鉄道の夜」アニメ化にあたっては、宗教色は省かなければいけなくなった。公開された映画に対して一般視聴者やファンからは苦情もあったようだが、ますむらひろしとしては「登場人物がネコか人間かなんてどうでもいいだろう。それより『たったひとりの本当の神様です』というセリフをなくすことや、あの銀河をどう表現するかが問題だろう!!」と言っているのがなんか納得してしまった。そう、原作物を映像化した場合「原作とは見かけは違うが、その人物を表している」ということで評価される俳優さんがいるが、見かけよりも精神を受け継いでいれば良いんだ!
しかし漫画化するには疑問がどんどん出てくる。
「三角標」ってなに?夜空を「桔梗色」と繰り返しているがどんな色でなぜこの色なんだろう?銀河鉄道の窓からは全く星が見えないのはなぜ?
これには私もびっくり。星ないっけ??銀河鉄道の夜というと、星空を走るSLが思い浮かぶんだが、ただの思い込みだったのか?
私そもそも、銀河鉄道でのお祈りの声が「ハルレヤ」(「ハレルヤ」ではなく)だったことに気がついていなかった。はるれや、という文字を読みながらも勝手にはれるや、だと思い込んでいたのでしょう。
文章にしかできない表現を視覚で見せるために、どのような向き合い方をするか、という意味でもとても興味深いお話だった。