山本弘のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
以前BSフジでやっていた『原宿ブックカフェ』にビブリオバトルのコーナーがあって、全然興味がなかったジャンルの本が紹介されるのが面白かったんだけど、まさか“本格的ビブリオバトル青春小説”なんてものが登場するとは!
そしてSFオタクで不思議ちゃん扱いされているヒロイン・伏木空ちゃんの読書傾向が、何故か私のドストライクという(笑)
E・E・スミス、E・R・バローズ、エドモンド・ハミルトンが列挙された最初の数ページでどっぷりハマッちゃいましたよ。
私が読んだのも『レンズの子ら』だったよ、とか、『火星シリーズ』の表紙のデジャー・ソリスにドキドキしたなぁ、とか、ちょくちょく投げ込まれる小ネタにいちいち反応しながら、あっという間に読み終わりました。 -
Posted by ブクログ
下巻に入り、バトルの様子が少し端折られるようになり、その分、物語が動き出す。
とは言え、空と武人の関係の描き方などベタでどうなることかと思っていたが、他校から申し込まれたバトルを巡って不穏な動きに。
しかしそれとて、敵役がはっきりしており、結末は見えたようなものと思って読み進むと、いやぁ、きちんと捻りが効かせてあった。
平和を語るのにH.G.ウェルズを持ちだしたり(憲法9条のルーツがウェルズの思想だとする説があるなんて!)、「アンネの日記」の赤裸々な部分について論議させたり、締めは『世の中で最も危険な思想は、悪じゃなく、正義だ』なんて、一筋縄じゃない。
なんていうことないお話だけど、作者の博覧強記ぶりに加え、思想に芯が通っており、何より、読んで本好きを楽しくしてくれることに、星は☆☆☆☆で。 -
Posted by ブクログ
1962年の東宝映画『妖星ゴラス』の名前は知っていても、子どもの頃に見たかどうか記憶にない。こんな話である。巨大な質量を持った星ゴラスが発見され、地球と衝突することが判明する。この災厄を避けるために南極に巨大ロケットを設置して地球の軌道をずらす「地球移動計画」が敢行される。
この映画にオマージュを捧げる『地球移動作戦』はまさにそういう話を現代の科学的知見でもってリファインしたものである。
地球に迫ってくる天体シーヴェルは、理論的に仮定されるが現状では発見されていない物質、ミラー物質でできた巨大天体である。ミラー物質は通常の素粒子とスピンが対称な素粒子により構成された物質だが、通常物質とほとんど相互作用を持たず、ただ重力だけが通常物質に影響する。つまり見えないけど巨大な質量を持った暗黒星なのである。太陽系の辺縁で発見されたシーヴェルは24年後に地球のごく近くを通過することがわかる。衝突ではないのであるが、巨大な質量が地球をかすめていくだけでも、その引力で地球上には天変地異が起こるばかりか、地球の軌道がかわって生物の住めない惑星になってしまうのだ。
さてそれでは南極にロケットを、って、そんな巨大なロケットはないし、ロケットで推進したらそれだけで地殻は揺り動かされ大災害が起こる。そこで、舞台となる21世紀から22世紀というこの時代、ピアノ・ドライブという推進システムが開発されているという設定を持ち込む。これは数学的には計算可能だが、現代の物理学では存在しないと考えられている超光速素粒子タキオンを噴射して推進するシステムである。
タキオンの存在を認めてしまえば、あとは負の運動エネルギーを持ったタキオンを噴射することで正の運動エネルギーを得る、といった具合に、物理学的に理路整然と構想された設定である。このピアノ・ドライブは、しかし、南極に設営されるわけではなく、もっとスマートな方法がとられる。
もうひとつ重要な設定は山本弘の近作によく出てくる人工知能である。本作ではACOMと呼ばれ、基本的には肉体を持たず、拡張現実の中で身体を持った存在として人間に知覚されているという設定であり、人間を守るという「本能」を組み込まれているが、人間の知能とは異質な知能を持った存在である。シーヴェルに対処するのに地球を移動するのではなく、人間の精神をACOMに移植して、小惑星に設えた巨大サーヴァーのなかでヴァーチャルな存在として生き延びようという運動が対抗軸として生ずるというのが重要なプロットのひとつ。さらに山本弘の重要テーマ、大衆は論理的に思考しないというテーゼがここで出てきて、大衆はこの運動に惹かれてしまう。
これといって一人の主人公はおらず、視点は切り替わって、全体的な状況が語られていくのは映画的。この話にワクワクできるかどうかといえば、上巻ではいまだ燃焼不足という印象。 -
Posted by ブクログ
ホラーがかったSFの思考実験が中心の話5つ。もしも世界が8日前に始まったものだったら、AIが殺人のために、別の人格を持った人物を想像したとしたら…等。
思考実験的なAIの話は、わかるんだけど他の作品よりも怖くもないし意外性も少なく、何でこれだけSFマガジンに収録で、あとのは単行本のための書き下ろしなのかなあ?という印象。
小松左京「こちらニッポン」みたいな「審判の日」と「屋上にいるもの」は非常にシンプルなホラーでありSFなので、万人向けに読みやすいのだが、他の作品はちょっとメタな世界観を理解できない人には辛いかもしれない。
買う場合は、電子書籍もおすすめします。ちょうどいいボリュームなので。