山本弘のレビュー一覧
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購入済み
特に第6話がいい
おそらく作者山本弘の代表作と思う。この作者の小説は時々説教臭が鼻につくことがあるがこの本はその点が薄めで読みやすい。
特に最近進歩が顕著で身の周りにあふれ出し始めているAIの未来像 その光と影を描き出し問題提起している。もちろん単なる啓発書ではなくSF小説としても素晴らしく面白い。特に第6話の最終行など、出来のいい映画の一画面を見るような思いがした。 -
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私立探偵リジーとその助手のクリスタル。彼女たちが出くわすさまざまな事件は、常識では考えられないようなものばかり。しかしそもそも、彼女たち自身がその常識からもかけ外れた存在であり、第一話から度肝を抜かれること必至のホラーミステリ連作集です。
ミステリ好きにはもちろん、ホラー好きにも楽しい。そしてSF好きならさらに楽しめるのではないでしょうか。特に「軽はずみな旅行者」が凄い。SFに関しての知識はあまりないのですが(むしろ食わず嫌いの苦手意識だけがある)、きちんと理解できた気がするし、充分に楽しく読めました。まさかあんな人が登場するだなんてー。
リジーの過去が明かされる「ペンドラゴンの瓶」にほろりと -
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他校とのビブリオバトル
偏った思想を持つ相手に対してどうするか?
三益先生がいなくなった後の部長の変わり身がウケる
途中まではザマァ!と思って読んでいたけれども、朝日奈先生の言葉で読んでいた自分もぶん殴られる
正義の究極は悪なんだよなぁ……
自分が正義だと思っている奴ほど歯止めが効かない
だって、正義なんだもの
悪を自称するのであれば罪悪感という言葉があるけど、正義にはないものなぁ
その正義の根拠は何だっていう話ですよ
朝日奈先生の指摘の通り、楽しそうに発表してた伏木さんの発表が一番読みたくなった
いや、一番は「小学4年生の世界平和」なので、2番目かな
概要を聞くだけでゲームが複雑な -
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人類が衰退しマシンに支配された世界で
語り部である「彼」はアイビスというマシンに物語を聞かせられる
その目的とはなんなのか
物語はフィクションであり真実ではない、が真実以上の力がある。
人間はフィクションの中で生きている
外界を内面に映し出し、それを主観的現実と認識して行動や思考を決めている。
その認識に齟齬が生じた場合、マシンであれば修正し正しい考えに書き換えることに抵抗を持つ事はない
しかし人間はしばし自らの考えに固執し、正しい情報を拒否してしまう(ゲドシールド)
そしてそれを自覚することが難しい
詩音の言う「すべてのヒトは認知症なのです」はヒトの確信をついていると思う
しかし、人と違い -
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人類が衰退したあとの世界で、主人公とアンドロイドのアイビスが出会うところから物語が始まる。アンドロイドを憎む主人公にアイビスが話したのは、いくつかの物語だった。
この作品は、作者の過去作をアイビスが語るスタイルで読むことができる短編集であり、話が繋がることで長編になるように構成されています。
ひとつひとつのお話も面白く、すぐに読み終わってしまいました。本当にアンドロイドがいたら、こうなるだろうな、こんな問題が起こるのだろうなとリアルに想像ができた。本当、きっとこうなる。
「紫音が来た日」では、人の心を救うということについての答えを見た気がする。「ミラーガール」では、子供の頃に人形を友達に -
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豊崎由美のあとがきに共感する。
山本弘は物語で世界を変えようとしている。
『アイの物語』は強いメッセージのこもった本だ。
あらすじの通り、アイビスが読み聞かせるのは6つの物語。
「宇宙をぼくの手の上に」
「ときめきの仮想空間」
「ミラーガール」
「ブラックホール・ダイバー」
「正義が正義である世界」
「詩音が来た日」
「アイの物語」
こうして並ぶからこそ多少の差は出るが、すべて☆5でいい作品たちだ。
書き下ろしは最後の2作品だけだが、その他は初出の時期がバラバラで、それを一冊にまとめてひとつの物語を紡ぐという構成力がすごい。
一つ一つの物語を見ても、構成の上手さが光る。
SFなので都合 -
Posted by ブクログ
#日本SF読者クラブ 自殺騒動も記憶に新しい山本弘氏の作品。人類が衰退し、マシンたちが繁栄する、まるで「ターミネーター」のような未来の地球(ここ重要です)。美しい女性型アンドロイドに囚われた「僕」。彼にいくつかの物語を聞かせるアンドロイド「アイビス」。そう未来の千夜一夜物語だ。
そもそも本作は、作者が別々に発表した短編に書下ろしの2編を加え、インターミッションで繋いで一つの長編にしている。それぞれの短編も面白いし、長編としてもうまく構成されている。特に書下ろしの第6話が効いている。そして最終話で、前述した重要ポイントの真相が明らかにされる。7回日本SF大賞候補、吉川英治文学新人賞候補になるの -
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フィクションだからできること、そしてSFだからできることの限界に挑んだ小説と、ある意味言えるかもしれません。
自分の中での小説10選を選ぶとしたら、その内の一作は山本弘さんの『アイの物語』です。
作品で描かれた人間への絶望と、人間の想像力と技術への希望は、自分の中の人間観や読書傾向を方向付けたものの一つだと思います。
その『アイの物語』と、上巻のレビューで少し触れた同著者の『詩羽のいる街』。この二つの作品の到達点が『プロジェクトぴあの』なのかもしれないと思います。
上巻の終盤で、ついに宇宙へ行くための足がかりとなる理論にたどり着いたぴあの。しかし、その理論の実証やロケットの開発には、様々 -
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悪意や閉塞感に満ちた現実を吹き飛ばし、そして世界を変革するヒロイン。
山本弘さんの『詩羽のいる街』という作品のメッセージとそのヒロイン像に、初めて読んだとき大いに惹かれました。そしてこの『プロジェクトぴあの』の上巻を読み終えた時の感情も、それに近いものを感じます。
AR技術などが進歩した近未来の日本。ある日貴尾根すばるは、秋葉原の電気街でマニアックな部品を買い漁る地味な女性と出会う。彼女の名前は結城ぴあの。常人とはかけ離れた思考と頭脳を持つ彼女は「宇宙へ行く」という夢を語る。そして夢のためぴあのは自宅で実験を続け、一方で資金と賛同者を得るためアイドル活動しているらしく……
ぴあののキャラ -
Posted by ブクログ
ネタバレいやー,久しぶりに続きを読みたくなる小説を読んだ。作者の山本弘氏があのトンデモ学会の初代会長だとは知らなかった。あのトンデモ系統の本なら,ずいぶん読んだけど…。
本書は,近未来,AIが人間にとって変わっている地球の社会を描いたものなのだが,それに至るまでの話(それは,小説内小説となっているのだ)が面白かった。〈以前人間が書いたという設定の6つの話〉と〈主人公のAIアイビスの生い立ちの話〉の計7話でできている。
現実なのか小説なのか,フィクションなのかノンフィクションなのかが,そんなに大切なのか…という呼びかけが随所にあって,それがまた説得力を持って迫ってくる。
「分かってる。ヒトは『真