山本弘のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
表紙を見て、「あれ? 『アイの物語』が文庫になったの?」と思った。
しかし、よく見るとタイトルが違う。
内容は、『アイの物語』につながるし、『神は沈黙せず』にもつながる短編集である。
今の自分は、本当にいるのだろうか。この世界は誰かに作られたものなのではないのか。そんな考えを持つとき、創造神を信仰に持たない自分にとって、「創造主」は、ひどく不気味だ。
小説を読むのは良い。
しかし、自分が登場人物で、楽しみも、痛みも、喜びも、悲しみも、愛しさも、切なさも、怖さも、怒りも、何もかもが作られたものだとしたら、それは、恐怖だ。
はじめから決まっている、アカシックレコードの上にいるのも許せるものではない。
しかし、そうした怖さを、小説の中に入れ込んで、それを覗き見る、ということが、わたしたちにはできる。
作った箱庭に人を住まわせ、上から見下ろす、悪趣味な観察。
自分は、その、覗かれている人なのではないか、という、ホラーよりもホラーな恐怖がテーマになった(と勝手に思っている)物語の集まりになっている。
『闇が落ちる前に、もう一度』宇宙が終わるまでに、したいことは何?
『屋上にいるもの』意思は、誰のもの?
『時分割の地獄』わたしは、生きているの?
『夜の顔』在るべきもの、あるはずのないもの、その差は
『審判の日』審判は、誰?
これを読んでみて、気に入ったら、ぜひ、『神は沈黙せず』を。 -
Posted by ブクログ
ここ数年で最も衝撃を受けた本です。この物語で言われるような神の定義自体は、以前からあったと思いますが、ミーム(文化を形成する様々な情報、人々の間で伝達や複製をされる情報の基本単位を表す概念!?)や、サールの悪魔などの思考実験を、上手くストーリーに織り込んで、神の説明をするあたりは、相当な筆力だと思います。
登場人物の中で、最もキャラ立ちしている加古沢の言葉として文中に述べられている社会・教育・政治の話などは、書かれた時期を考えると、かなり予言的なところもあり興味を惹かれます。私達のシンポジウム(漫画家、デザイナー、会社社長、ライターなどやさぐれたオヤジの飲み会)ではよくネタになっています。 -
Posted by ブクログ
ふんぎゃあ。
なるべく読み終わった直後に感想を書くことにしている。その興奮なんかを冷まさずに書く為に。
ふんぎゃあ。
ああもう。
本当は五つ星なんて連発したくない。
これも読んでる途中まで、「よくできている。物凄く良くできている。でも、これじゃ四つだな」と思っていた。
いやもう。
ラストの章。
間違いなく五つな訳で。もっと星ないの。
神様ありがとう。
全然いると思ってないけど、ありがとう。
『アイの物語』を手に取らせてくれたことと、新刊のこの本に気づかせてくれたこと。
作中、『アイ〜』にて、人と云う存在に絶望している的な気持ちが込められているって云う下りがある訳ですが、でもね、やっぱり作者は人が、人を、信じたいんですよ。
人は、そりゃもうビックリしちゃうくらい愚かで、非論理的で、間抜けで、残酷なんだけど、でもさ、人が人を愛してやらなければ、誰がこの孤独な存在を認めてあげられるの?と。
云っているようにしか思えない。
あなたとわたし。
決して同一にはなれない。
でも、なれないからこそ意味が、意義があるんだよね、って云う。
生涯ベストに間違いなくランクインしました。 -
Posted by ブクログ
03年の作品「神は沈黙せず」を読んだ記憶が
蘇ってきた。相当面白く読んだ記憶が。
それ以降作者の他の作品を一切読んでなかったですが
自分の好きな作家さんなのかもしれません。
一般的に分かりにくくて敬遠されがちなSFですが
凄く丁寧に、伝えるんだという熱と意思がヒシヒシと
感じられる凄く人間味のある文章と、このSFド直球な
内容のギャップが堪らなく面白いです。
もう今年も4月になっていてビックリですが、個人的な
2010年のベスト3当確でしょうねー。
作家さんの人柄、そしてアィデア、ストーリー展開、
台詞まわし...とても自分の好みです。
丁寧に書かれてるのでSF苦手〜って方でも充分
楽しめます。何よりストーリーが秀逸でSF的な部分も
分からなかったら、勝手に頭が分かろうと働く筈...?
相変わらず仕事に殺されるような糞のような日々ですが
こういった作品に少しでも浸れる時間が、まだあるのは
壊れずに済む...救いです。
いやー。面白かったぁ。 -
Posted by ブクログ
「神は沈黙せず(上)(下)」
著者 山本弘
出版 角川文庫
p447より引用
“自分が間違っている可能性を探すこと。
それが道を誤らない為の唯一の方法です。」”
SF作家で、
と学会会長である著者による長編大作。
子供の頃の災害により、
神に疑問を抱いた兄妹を主人公とした物語。
世界の不条理な出来事を元に、
神の存在について精密な論理が展開されます。
この作品をよむまでは、
著者の事をと学会会長としてしか知りませんでした。
小説家としてまったく触れた事が無かったのですが、
しかしこの作品は読んで本当に良かったと思います。
上記の引用は、
登場人物の一人が安易に確信を抱く事に対しての、
警告の一言。
トンデモ本シリーズで見聞きしたネタが満載なので、
ファンのかたはより一層楽しめると思います。
この作品は読んで良かったと、
心のそこから思います。 -
Posted by ブクログ
新しい年が明けたけど、年賀状もおせちも無いお正月はさしずめ『門松は冥土の旅の一里塚めで度くもありめで度くも無し』といった具合。
その年頭に読む、衰退した人類に代わりマシンが支配する未来のお話。これが深い。
食料を盗んで逃げる途中に女性型アンドロイドに捕獲された“僕”。
アイビスと名乗るそのアンドロイドは、僕に対しロボットや人工知能に纏わる7つの物語を読み聞かせる…。
題材以外に関連性もない物語は、しかし、マシンと人の歴史の真実を少しずつ露わにする。
6つ目の「詩音が来た日」で介護用アンドロイドが辿り着いた結論に唖然とし、最後の「アイの物語」で語らえるマシンの価値観と行動に慄然とする。
ヒトが如何に非論理的で非倫理的であるかが浮き彫りにされ、これからどれだけ経ってもヒトが達することはない高みがあることを思い知らされながら、それでもヒトがヒトとして生きる美しさと未来への可能性を示唆する。