あらすじ
アキバから、宇宙へ。「科学の歌姫」で「最後のアイドル」、そして「人類の恩人」であり「世界の変革者」――これまでの常識を覆した新エンジン「ピアノ・ドライブ」を発明した、結城ぴあのの物語。人気アイドル・グループ「ジャンキッシュ」のメンバーである結城ぴあのには、もう一つの顔があった。秋葉原電気街の“お姫様”。電子部品を買い漁る彼女は、自宅のガレージで一人実験を繰り返していたが、その目的は「宇宙へ行くこと」であった。バラエティ番組のレギュラー・コーナーをきっかけに注目を集め、抜群の歌唱力を兼ね備えていたぴあのは、ジャンキッシュから卒業。“メカぴあの”との対決などを経て、トップ・アイドルへの階段を駆け上がっていく一方で、宇宙への夢を実現すべく、ぴあのは実験を繰り返すのだが……。超科学、人工知能、拡張現実、スーパーフレア……山本弘ワールド全開の感動SF長編。
...続きを読む感情タグBEST3
久しぶりにワクワク
久しぶりにワクワクしながら読み進めることができる作品に出会った。作者山本浩司の作品は「アイの物語」や「詩羽のいる街」など何冊か読んだが、いわゆる「説教癖」が鼻について純粋に作品を楽しむことができなかった。しかしこの作品は、最終部分を除いて「説教」は登場せず、素直に読み進めることができた。とりわけヒロインの人物造形が見事で、このような才能 性格の持ち主の典型としてもっと言及されていいような気がする。
なお、作者山本弘氏は今年3月に亡くなったとのこと。御冥福をお祈りいたします。
Posted by ブクログ
イャ~楽しかった。
アイドルにしてマッドサイエンティスト。人に対して愛を感じる事が出来ないが、宇宙に対する愛に溢れ、ただ一人がむしゃらに宇宙に飛び出す事を目指す少女・結城ぴあの。
周辺を固める人物造形も良いですね。語り手でぴあのに恋する「男の娘」下里昴、プロダクションの社長・真下・・・・。特に同じアイドルグループのライバル・青梅秋穂とぴあのの会話は秀逸です。
充分な教育も受けず、独学で難解な数式を操り、実験を繰り返し、最後には熱力学の法則を超えて新エネルギーを考え出しちゃう。良き頃のホーガン的大ぼら話。そこに風変わりな美少女というジュブナイルの要素を加えて・・・。
一人乗りのテスト機を使った宇宙ステーションから二人の男性を救出するシーン。宇宙服を着て宇宙船の外に付けられた椅子に座って地球に帰還するシーンなんて爆笑しましたよ。
500ページ越え。ややいろんな要素を取り込み過ぎた面もあります。エンディングにも少し違和感を感じましたが、非常に楽しく読めました。
大暴走ハードSF
山本弘流の絶好調な科学SF、頭脳SFが楽しかった!嘘みたいな壮大さが気持ちいい。
ちょうど読了後に太陽フレアのニュースがあって、知ってる!となりました。
Posted by ブクログ
「プラスチックの恋人」で言及されていたので読んでみた。
時系列的には、
「プロジェクトぴあの」
「プラスチックの恋人」
「地球移動作戦」
という感じ。
読んでてわくわくする大傑作。SFはこうでなくては。内容的にしょうがないかもしれないが「プラスチックの恋人」にはこの部分が足りない。
「みらじぇね」は要するにブラウン・ラチェットを魔改造した第二種永久機関らしい。
ところで、光起電力効果ってなんであるんでしょう。エネルギーから仕事を取り出すには差が必要。高温と低温、高い位置と低い位置みたいな。光起電力効果はどの差を利用しているのかよくわからん。と本筋と関係のない疑問が読んでてふつふつとわく。
宇宙はとても広く新しい物理を発見しないと恒星には行けそうもない。物理を女の子に語らせないと絵にならないとか。そんな感じの話。恒星はともかく62マイル離れるだけならアイドルになる必要はなさそうですし。
Posted by ブクログ
近未来、リアルとバーチャルが入り乱れる世界で
天才少女がアイドルを経由して宇宙を目指す物語。
物理の用語や解説が難しすぎてわかりにくいが、
それを差し引いても楽しく読めました。
SFは壮大なホラ話と言う通り、いろいろと「そんなわけないやろ」みたいな所もありますが、この話は好きです。
初音ミクの「サイハテ」初めて聞きました。
Posted by ブクログ
頁が進むにつれ増してゆく高揚感、頭の中を駆け巡るアドレナリンが理解力を遥かに超えてフル回転。超メガトン級の破壊力。
そして叶える夢。
心が空く。
脱力感。
途轍もない。
Posted by ブクログ
マイミク氏の大絶賛を受けて読んでみた。絶賛するはずだやわ。こりゃすげえ大傑作だ。
天才マッドサイエンティストがアイドル?んで、そいつが宇宙に飛び立つ?
いかにもヲタが好みそうなベタ設定。
語り手は女装(しかも気合十分)趣味の男子。女装が好きなだけで同性愛者ではない。恋愛嗜好は女好きという、これまたヲタ好きしそうな設定。
と学会の人ってこういうことやりそうやなぁ。今度は何に対してどうケンカ売るんだろう、みたいな醒めた気持で読みだしたところが、エエ方向に期待裏切ってハマるわハマる。
主人公と語り手やライバルアイドル達、プロダクションの社長ら個性的な登場人物たちの生き生きとした絡み、身近に感じる近未来光景の描写、ちょっとイカした小道具のチョイスなんかを中心に、決して読みやすい部類には入らないはずの物理用語やら数式の解釈やら、そんなもんまでが文章のリズムを作り、宇宙への憧憬や科学技術の未来性や人類の希望やアイドルの終焉や、そして甘酸っぱくも実らないラブストーリーまで贅沢にちりばめた満願色のセンスオブワンダー!
「宇宙には夢と希望がある」って、こんな前世紀的真正面なSFのお題目を、剛速球でぶつけてこられたら、受けなしゃーない、当たらなしゃーない。
大森望あたりのSFヲタどもが、50ヅラさげて必死にアイドルのおっかけしてるのを、冷やかに見ていた俺だけど、この本読んで「なるほどアイドルと宇宙の組み合わせは合うわ」とよーやく意味が分かった次第。ヲタ好き設定もこういう調理法なら美味しく読める。ほんでこういうマニアックな相性の良さを、広く万人が味わえるように引き出してくるのは調理人(作家)の腕やねんなぁ。
ラストは憎いよ、こんな寂しいハートブレイクを久々味わったよ。読み終わったのは昼休みの会社やったけどちょっと泣いたよ。
小説家としての山本弘にはあまり接してこなかったが、この本読んで開眼!よーし今からおっかけるぞ。とりあえず「地球移動作戦」だ。
Posted by ブクログ
今年最高の本決定です。ぴあのはアイドルグループの一員で変り種担当。しかし、彼女は物理学の天才少女。アイドルでいるのは宇宙それもカイパーベルトを超えて太陽系外に行く為の技術を開発し自らが飛び立つことを目的としていた。まず手始めにブラウン運動を利用した第2種永久機関を作り世間を驚かせ、遂にはタキオン粒子の理論を構築し、これが宇宙空間におけるダークエネルギーであることを突き止めるとともに、それを利用した飛行機関「ぴあのドライブ」を開発してしまう。本には難解な物理用語が頻出し、理論を説明している文は私には全く理解できない。しかし、それはこの本の面白さをコケオドシ的に増すだけなのだ。様々なスポンサーから大金を調達した彼女たちグループは、6人が火星に2ヶ月半滞在出来る宇宙船を完成させた。しかしここでぴあのは反乱を企てる。6人が2ヵ月半なら、1人なら450日生きられる。これに単身乗り組み100日加速100日減速し船内時間450日でオリオン座大星雲までの往復宇宙旅行に出かけるのだ。しかしほぼ光速であるため、帰り着いたときには地球では3千年が経ってしまう計算だ。地球からオリオン座を見るとき、その方向には今もぴあのが1人で旅を続けているのである。
Posted by ブクログ
アイドルなのに超理系頭脳を持った結城ぴあのが主人公の近未来SF。古き良きSFを体現しているかのような良作で、物語に登場する数々のガジェットには思わずニヤリとさせられます。
Posted by ブクログ
難しい用語や難解な公式が乱立したのにも関わらずここまで熱中出来るお話はすごい。斬新な視点であるのに、置いてきぼり感が全くなく続きが気になる。それなりに読み応えのある分厚い内容だったのにすごいひきこまれようだった。
ラストまでぴあのちゃんらしさがでていて、昴くんの一途な気持ちにも激しく共感。がっかりすることなく納得の終わり方だった。
Posted by ブクログ
本当にありそうな話。ハードSFに当たるのかな?
でも、ノリは軽いです。
アイドルっておバカなイメージがやはり強いのだろうか。
知的で、実はマッドサイエンティストという設定は面白いと思う。
宇宙への憧れは募るばかりですね。
Posted by ブクログ
この世界の延長線上にありそうな未来を書かせたら、やはり筆者は随一ではなかろうか。10数年後の日本が舞台のSFだが、圧倒的なスケール感…それは銀河系や宇宙と言う広さのスケールではなく、ぴあのが見つめ、彼女が持つ熱意と狂気のスケール感。
UGCとネットの功罪も、筆者の従来作同様によく描かれているが、今作は特に、筆者が言うように「自分なりのボカロ小説」なのかもしれない。「サイハテ」がとても効果的に使われ、本作の着想は20年前らしいが、今だから書けたであろう作品になっている。ハードSFだが平易に書かれ読みやすい秀作。
Posted by ブクログ
主人公に美少女アイドルを据えてハードSFをやるのは良いアイディアだなぁとなんとなく読み進めていくうちに「ピアノ・ドライブ」って何か聞いたことあるなぁと思い返してみて、『地球移動作戦』の前日譚ということにようやく気付きました。熱力学の第二法則を破る発電機やピアノ・ドライブの原理の説明などは、流石はと学会会長と感心する出来です。近未来を想定して描かれた発明品がいくつも登場しますが、資本主義の行き詰まりを打開するためには、科学や技術の大きな進展が不可欠ではないかとあらためて考えてしまいました。
Posted by ブクログ
相変わらずのオタクよりの話ではあるが、作者お得意のトンでも本のマッドな話とありそうな実際の物理天文のオタク的な知識を組み合わせて、いかにもありそうな話として成立させて、読ませる作品として成立している。これはなかなかよかった。
Posted by ブクログ
タイトルをみて、地球移動作戦に出てきた、ピアノドライブの話しだろうと、発明者は女の子だったはずなので、この天才少女が主人公だろうと思って読んだら。やっぱりその通りでした。さすが山本弘先生。
相変わらず、細かい過去の事件などが詳しく紹介されるのだが、未来の事件ももっと作ってもいいんじゃないかと思う。2013年以降の数十年に事件などが異様に少ないように見える。
こういう開発秘話的なお話は非常に読んでて楽しい。
AIやARなどが日常生活に溶け込もうとしている過渡期の様子が興味深い。ただ、視点が少しおたく文化方面よりすぎるのが気になる。
主人公自体は、名被害者・一条(仮名)の事件簿の一条に近い感じ。最近の山本弘先生の作品でよく見る気がする。